この小説の一回目の投稿はこちら
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それから約二十分後、
「景品なくなりましたぁ~!景品終了でぇ~す!」
菊浮川さんの声が廊下に響くと、見る間に客が減っていった。
…そして、誰もいなくなった。
「みーんなゲンキンだなー。ん?菓子目当てだから現金とは言わないか。」
早瀬がぼやいた。その手には、景品のはずのお菓子が握られている。
「早瀬…」
「てへ、実は昨日ちょっと失敬しといた。どうせ余るだろうと思ってて…食べる?」
お前が犯人かぁーっ!
結局、俺たちのクラス出し物は文化祭終了の二時間も前に終了することになってしまった。
クラスメートの半分は「やったー!自由だー!」と叫びながら他のクラスの出し物を冷やかしに行った。
一方、全てを全力でやり遂げた残り半分は、明かりの絶えた教室内で床に倒れている。笑い声でざわめく廊下とは、切り離された別世界状態だ。
「春一ぃ~?」
暗がりの教室のすみっこでぼーっとしていた俺に、さっきまでどこかに行っていた早瀬が小声で話し掛けてきた。同時に、食べ物のいいにおいがする。
「…ピザ?」
「スゲェ。よく分かったね」
「食べたいな~、と思ってたから。」
「そりゃよかった」
俺には、早瀬が紙皿にピザをのせた天使に見えた。
ああ、愛しのマルゲリータッ!
「ん~、うまい。」
「それ食べ終わったら、ホール行こう」
「うっ、そうだった。今何時?」
「一時半…ちょい過ぎだね。って、もう食べたの!?」
着替える速さは深雪先輩に遠く及ばないが、食べる速さと量にかけてはそんじょそこらのトーシロに負けない自信がある俺。
ま、自分に関して自信があることと言ったらそのくらいだけどな。
「ごちそーさま。で、このピザいくらだった?」
俺が財布を捜しながら訊くと、早瀬はニヤリと妙な笑い方をした。
「お金はいいから、ちゅーして」
一瞬、確実に俺の心臓が止まった。
「早瀬、今日はほんっとにどうかしてるよっ!いつもはそんなこと言わないのに…」
「今日は特別。なんかさ、みょ~に…なんだろうなぁ。いつもできないことしたくなる気分っていうの?こう、むらむらっと。なんかここ暗いし。」
「その言い方やめろスケベ」
「ほら、ここなら誰も見てないし。ね?」
俺は慌てて周りを見た。確かに誰もいない。いや、いないけど待て!
「…ここは学校だっ」
「そうだねぇ」
「俺、今ピザ食べたとこだぞ」
「うーん、初ちゅーがピザ味、悪くない」
「やだよっ!」
「さっき間接ちゅーしたじゃん」
「古いっ!あんなの…あの、さっきから…ちゅーって言うのやめてよっ」
「うわぁ~、今急にしゃべり方が女の子になったね。狙った?」
「…っ、もうホール行こう。食べ終わったし。」
「え~、お預けですか」
「預からないっ!捨てた!」
俺は自分が何を言ってるのか分からなくなりながら、超大急ぎでホールに向かった。
なんか、頬がめちゃくちゃ熱い。
俺は早瀬とどうにかなりたくない。なったら何かが変わっちゃう気がする。俺はそのことが恐いんだ。早瀬はそれを分かってない。
次回→
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「景品なくなりましたぁ~!景品終了でぇ~す!」
菊浮川さんの声が廊下に響くと、見る間に客が減っていった。
…そして、誰もいなくなった。
「みーんなゲンキンだなー。ん?菓子目当てだから現金とは言わないか。」
早瀬がぼやいた。その手には、景品のはずのお菓子が握られている。
「早瀬…」
「てへ、実は昨日ちょっと失敬しといた。どうせ余るだろうと思ってて…食べる?」
お前が犯人かぁーっ!
結局、俺たちのクラス出し物は文化祭終了の二時間も前に終了することになってしまった。
クラスメートの半分は「やったー!自由だー!」と叫びながら他のクラスの出し物を冷やかしに行った。
一方、全てを全力でやり遂げた残り半分は、明かりの絶えた教室内で床に倒れている。笑い声でざわめく廊下とは、切り離された別世界状態だ。
「春一ぃ~?」
暗がりの教室のすみっこでぼーっとしていた俺に、さっきまでどこかに行っていた早瀬が小声で話し掛けてきた。同時に、食べ物のいいにおいがする。
「…ピザ?」
「スゲェ。よく分かったね」
「食べたいな~、と思ってたから。」
「そりゃよかった」
俺には、早瀬が紙皿にピザをのせた天使に見えた。
ああ、愛しのマルゲリータッ!
「ん~、うまい。」
「それ食べ終わったら、ホール行こう」
「うっ、そうだった。今何時?」
「一時半…ちょい過ぎだね。って、もう食べたの!?」
着替える速さは深雪先輩に遠く及ばないが、食べる速さと量にかけてはそんじょそこらのトーシロに負けない自信がある俺。
ま、自分に関して自信があることと言ったらそのくらいだけどな。
「ごちそーさま。で、このピザいくらだった?」
俺が財布を捜しながら訊くと、早瀬はニヤリと妙な笑い方をした。
「お金はいいから、ちゅーして」
一瞬、確実に俺の心臓が止まった。
「早瀬、今日はほんっとにどうかしてるよっ!いつもはそんなこと言わないのに…」
「今日は特別。なんかさ、みょ~に…なんだろうなぁ。いつもできないことしたくなる気分っていうの?こう、むらむらっと。なんかここ暗いし。」
「その言い方やめろスケベ」
「ほら、ここなら誰も見てないし。ね?」
俺は慌てて周りを見た。確かに誰もいない。いや、いないけど待て!
「…ここは学校だっ」
「そうだねぇ」
「俺、今ピザ食べたとこだぞ」
「うーん、初ちゅーがピザ味、悪くない」
「やだよっ!」
「さっき間接ちゅーしたじゃん」
「古いっ!あんなの…あの、さっきから…ちゅーって言うのやめてよっ」
「うわぁ~、今急にしゃべり方が女の子になったね。狙った?」
「…っ、もうホール行こう。食べ終わったし。」
「え~、お預けですか」
「預からないっ!捨てた!」
俺は自分が何を言ってるのか分からなくなりながら、超大急ぎでホールに向かった。
なんか、頬がめちゃくちゃ熱い。
俺は早瀬とどうにかなりたくない。なったら何かが変わっちゃう気がする。俺はそのことが恐いんだ。早瀬はそれを分かってない。
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