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「春一、お菓子、あとちょっとしか無いよ」
早瀬に言われて、俺はハッとした。
「あ~…ちょっと誰かに訊いてくる。あ、これ飲んでて」
「りょーかい。きゃっ、間接キッス!」
「お黙り」
菊浮川さんを見つけて駆け寄ると、どうやら俺の来た意味が分かったようだった。
「やっぱり無くなった?」
「うん。」
「ちっ…あぁんのばぁかたれがっ!」
いかにも典型的模範的女子高校生な菊浮川さんの口から、予想外のセリフが飛び出してきた。
「へっ?」
「実はね、昨日男子の数人が景品だって言ってあったお菓子、つまみ食いしたらしいんだ。どうせ余るだろうから、とか言ってさ。案の定だよっ!あのクソガキども、磔にしてやるっ!」
こ、恐い…。人って見かけによらないんだな。
だけどなぜだろう、むしろ好感が持てる。
「で、あと何分持ちそう?」
「この調子でお客さんが来るとなると…二十分。かな」
「そっか。いやぁほんとごめんね。売り切っちゃったらさ、『景品は無くなりました』って看板だそうかな。それで十分くらい様子見て、客足途絶えたら閉めるっきゃ無いね。ったく…」
そう言って舌打ちした後、菊浮川さんは急に思い出したように言った。
「八坂さん、ダンスかっこよかったよ」
「んー…ありがと」
俺はなんとか笑顔で言った。すごく照れる。
「あのさ、違ったらゴメンだけど…」
何かを言いかけて、菊浮川さんは眉をひそめて考え込んだ。
「あのさ~…八坂さんともう一人、男装してた女の人、先輩?」
「ん、そうだけど…?」
「もしかしてさ、その人『六花』って名前じゃない?」
菊浮川さんは勢い込んで言ったが、俺は首をかしげるしかなかった。珍しい名字だ。
「ムツノハナ…?」
「あ…違うか。…なんでもない!気にしないで!」
なんでもない、と言うわりに、何かがありまくりそうな落胆の表情。俺は思わず、その人は誰かと訊いた。
「六花先輩はね、うちの中学の先輩なの。その人がこの高校入ったって聞いたんだけど、まだ見つかんなくてさ~。追ってきたのに。…あの人、似てたと思ったんだけどなぁ」
「そっか…。あの人は青柳って名字だよ。もう一人の女装してた男の先輩とは、双子の姉弟だって。」
俺はなんとなく言ったのだが、急に菊浮川さんの肩がビクッと震えた。
「…双子。」
「うん。」
「…そっか」
今度は妙に考え込んだ表情で、菊浮川さんは去っていった。
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「春一、お菓子、あとちょっとしか無いよ」
早瀬に言われて、俺はハッとした。
「あ~…ちょっと誰かに訊いてくる。あ、これ飲んでて」
「りょーかい。きゃっ、間接キッス!」
「お黙り」
菊浮川さんを見つけて駆け寄ると、どうやら俺の来た意味が分かったようだった。
「やっぱり無くなった?」
「うん。」
「ちっ…あぁんのばぁかたれがっ!」
いかにも典型的模範的女子高校生な菊浮川さんの口から、予想外のセリフが飛び出してきた。
「へっ?」
「実はね、昨日男子の数人が景品だって言ってあったお菓子、つまみ食いしたらしいんだ。どうせ余るだろうから、とか言ってさ。案の定だよっ!あのクソガキども、磔にしてやるっ!」
こ、恐い…。人って見かけによらないんだな。
だけどなぜだろう、むしろ好感が持てる。
「で、あと何分持ちそう?」
「この調子でお客さんが来るとなると…二十分。かな」
「そっか。いやぁほんとごめんね。売り切っちゃったらさ、『景品は無くなりました』って看板だそうかな。それで十分くらい様子見て、客足途絶えたら閉めるっきゃ無いね。ったく…」
そう言って舌打ちした後、菊浮川さんは急に思い出したように言った。
「八坂さん、ダンスかっこよかったよ」
「んー…ありがと」
俺はなんとか笑顔で言った。すごく照れる。
「あのさ、違ったらゴメンだけど…」
何かを言いかけて、菊浮川さんは眉をひそめて考え込んだ。
「あのさ~…八坂さんともう一人、男装してた女の人、先輩?」
「ん、そうだけど…?」
「もしかしてさ、その人『六花』って名前じゃない?」
菊浮川さんは勢い込んで言ったが、俺は首をかしげるしかなかった。珍しい名字だ。
「ムツノハナ…?」
「あ…違うか。…なんでもない!気にしないで!」
なんでもない、と言うわりに、何かがありまくりそうな落胆の表情。俺は思わず、その人は誰かと訊いた。
「六花先輩はね、うちの中学の先輩なの。その人がこの高校入ったって聞いたんだけど、まだ見つかんなくてさ~。追ってきたのに。…あの人、似てたと思ったんだけどなぁ」
「そっか…。あの人は青柳って名字だよ。もう一人の女装してた男の先輩とは、双子の姉弟だって。」
俺はなんとなく言ったのだが、急に菊浮川さんの肩がビクッと震えた。
「…双子。」
「うん。」
「…そっか」
今度は妙に考え込んだ表情で、菊浮川さんは去っていった。
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