延岡というまちをアーカイブ化していくには。

延岡というまちについての記憶を考えていく。

写真を救い出すために。(ver.1)

2011-04-08 10:29:53 | 保存

写真保存の必要性が、これほどまで重要視された事があっただろうか、今はそう思います。

前にベータ版として出したものの改定版です。

pdf版もつくっておきました。

「photoresc.pdf」をダウンロード

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写真を救い出すために。

特に水害にあった写真の緊急の処置について、過去我々宮崎県歴史資料ネットワークが行ってきた経験から簡単にまとめてみました。

1: 写真を救い出すことの意味。
・災害から助かった方々は、亡くなった方々の分まで強く生きていかないとなりません。これから悲しみや不安を乗り越えていかなねればならない場面が出てくるかと思います。今後心やすらいで生活をおくる上で、写真のような思い出、自分や家族の人生の軌跡をたどれる品々がのこされていると、以後の心の持ち様にも影響を与え、これから強く生きていく事にもつながります。

・難しい中で災害現場からなんとか写真を持ち帰る事ができたとしても、水に濡れてしまっていたり、泥で汚れてしまったりしていると結局写真がだめになる事もあります。完全とはいきませんが、これをなんとか綺麗にしていきたいと思います。

2: 早い時間ならば、洗って乾燥。
・部分的にしか水に浸かっておらず早めに救出出来た場合、もしくは一度浸かっても乾燥している場合には一度さっと綺麗な水で洗い、クリップや洗濯ばさみで乾燥させるという手があり
ます。

・写真の表面同士、あるいは表面と裏面が重なって貼り付いてしまっている場合があります。写真をアルバムに貼り付けていない場合、あるいは三角コーナーなどで固定されているけれどもアルバムから剥がしやすい写真の場合、写真同士が貼り付いてしまっている事があります。人肌よりややぬるい程度の水につけてゆっくり剥がしていくと、少し画像表面が曇ったり、場合によっては一部壊れる事もありますが、そこそこ上手くいきます。

・問題なのはそれ以上の時間水に浸かりっぱなしで、画像がふやけたり溶け出しているケースです。長時間水に浸かっていながらも、部分的に画像が残っていた写真を救出出来た場合、写真をとにかく乾燥させる事が先決です。写真を1 枚1 枚広げて触らないように自然乾燥させれば、ある程度もとの状態に回復します。


3: カビが生えます。

Dsc_0003b2 ・写真は濡れてしまうとカビが生えやすいです。冷蔵庫・冷凍庫などに入れて低い温度にしておくと繁殖が遅くなりますが、それでもカビは生えてきます。特に写真は画像にカビが生えてしまうと、取り除くのが難しいです。可能ならば水分を除去できる状況にする事が必要です。

・余裕があるならばキッチンペーパーや、なければとりあえず新聞紙などを押し付けて水分を吸収します。

・表面にシートを貼るタイプのアルバムは、中に水がたまっています。この場合、アルバムを剥がさないと水分を吸収する事が難しいです。枚数が多い場合にはとにかくどうしても必要な写真を優先的に剥がしてしまう事をお勧めします。

・さらに専用のフィルムクリーナー( 通常のエタノールでは強すぎる場合があります) があればこれで可能な限りふき取って下さい。写真屋さんで売っています。ただし、紙の繊維の中に入り込んだカビはなかなか完全にはとれません。

Dsc_0073b2 4: 画像が壊れます。
・カラー写真の場合、写真に使われている色素が水を含むと溶けてしまい、画像が流れてしまいます。また、アルバムの表面シートに画像が貼り付いてしまう場合があります。古いモノクロ写真では、画像がひび割れてしまいます。この場合、画像があまり壊れていなければ写真を剥がす事が先ですが、難しい場合は、台紙ごと切り抜いてしまった方が手っ取り早く、カビから救う事が出来ます。シートに貼りついていたら、シートごと切り取って下さい。

#ひび割れたモノクロ写真の画像を定着させるには、バインダー( 樹脂) を使います。富士フィルムのアートエマルジョンバインダー( 黒白写真乳剤用下塗り剤) を水で溶きます( バインダー:水= 1:2)。ただしいささか専門的になってくるのと、写真関連の薬品が入手しにくくなっていますので、専門家に任せた方がいいかもしれません。

5: ニオイがします。
・水害などであふれてきた水は色々な菌を含んでおり、ニオイの発生源となります。アルバムのように紙が重なったようなものは特にストレスの原因になります。ニオイを取り除くには相当の時間がかかります。これが処理のストレスにつながるので、必要な写真を台紙から剥がしてアルコールで拭く等の処置を行った方が早いです。

Dsc_0041b2 6: 複写する事。
・写真の枚数が多い場合、一枚一枚保存のための処置を行っていたら間に合わなかったりします。こういう時はデジタルカメラで複写したり、スキャナーで取り込んだりして写っている画像をのこす方が早いです。

7: 余裕があれば現状記録。
・写真が現状でどういう状況にあるか
を記録しておく事は、後々同じような状況があった場合に非常に参考になります。ただしこれは余裕がある場合です。写真の劣化はとても早く進行しますから。

8: その他
・写真にはプリント以外にも、ネガフィルムがあります。ネガはプラスチック樹脂なので丈夫ですが、表面は劣化します。フィルムクリーナーで拭き取ればきれいになります。

・フィルム以前のネガは、ガラス製の乾板でした。割れやすく、修復が難しいので、これが見つかった場合は専門家に相談しましょう。


平成23 年4 月8 日 文責:宮崎歴史資料ネットワーク 山内利秋


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