尾道市向島町の里海を眺めて

瀬戸内海(尾道・向島)で見られる海の生物等をご紹介

ヨツアナカシパンの発生

2012-09-07 20:53:57 | 生物
先日採集したヨツアナカシパンを海洋生物学実習Bに提供し、発生の観察を行ってもらいました。

まずは採卵・採精。
カシパンに水道水をかけて、表面に付着している精子を破裂させます。
(未受精卵を取るために、既存の精子は殺してしまいます)
そして肛門に注射針を差し込み、0.5MのKClを0.5mlほど注入します。



そのまま生殖口を下にして(つまり上下逆さま)、しばらく待ちます。
するとKClによって収縮した筋によって卵あるいは精子が放出されます。
卵は何度か濾過海水でよく洗います。


左がメス(卵)、右が雄(精子)


放精。生殖管が4本見える。


放卵。直径約400μm程のピンク色の卵。直接発生(幼生を経ずに変態すること)をするため、卵は大型。
緑色の色素については後述。

動画「ヨツアナカシパン産卵と放精」



この卵と精子を使って媒精し、25℃の濾過海水中で保持すると卵割が進み、やがて稚ウニになります。


8細胞期


孵化(胞胚)
ちょうど卵殻から胞胚が出ようとしているところです。


プルテウス型幼生
ヨツアナカシパンは直接発生と呼ばれる発生様式を示し、他のウニ類(ムラサキウニやバフンウニなど)
のようなプルテウス幼生になって長期間の浮遊生活をしないため、消化管などはありません。
そのため、プルテウス「型」幼生と記述しておきます。


変態して着底。受精から3日ほどで稚ウニになります。
こうなると管足も伸ばして歩きます。

ヨツアナカシパンは傷がついたり、衝撃を与えるとそこから緑色の色素を出します。
KClを注射した際にこの緑色の分泌液が出てきますが、これは空気に触れると酸化して黄色になります。
昭和28年ごろにこの色素についての研究がされたそうですが、近年の解析技術で調べると
何かおもしろい物質などが見つかるかもしれません。
ちなみに、この汁は大変ひどい臭いがします。ウニが少し腐ったような臭いです。
捕食者に食べられないように忌避物質が含まれるのかもしれません。


黄色くなった分泌色素


海水中に放出されたばかりの色素。緑色を呈する。

変態した稚ウニは、実習の最後に採集地の近くの砂地へ放流しました。
親は死んでしまいますが、漂白して何かのイベントのお土産に加工します。


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