尾道市向島町の里海を眺めて

瀬戸内海(尾道・向島)で見られる海の生物等をご紹介

アオリイカの卵

2011-08-26 19:27:05 | 日記
今回はアオリイカ(Sepioteuthis lessoniana)の卵と子供です。

こちらは、昨年春に採集したアオリイカの卵です。


カミナリイカなどと同じように、アマモ場に卵を産み付けます。
カミナリイカが一粒ずつ巻きつけるのに対して、5~10個程度の卵を
連結したものを巻き付けます。

そのうち一つを取って、表面の卵膜を一枚だけ残したものがこちら。





これから、少し黄色みがかった白い幼体が生まれてきます。







生まれてすぐに、彼らは体表の色を変えることができます。
上の写真でわかるとおり、基本的に黒か白(透明)です。

なぜ白黒なのか?
彼らを少し脅かすと、その理由の一部がわかります。

彼らは黒色になって警戒し、逃げる時に墨を吐きます。
墨を吐いた瞬間、本体は白く透明になって、すぐにその場を離れます。
そうなると本体は海中では見えにくく、消えたようにみえます。

おそらく、捕食者から見ると本体はそれほど動かず、止まったままに見えるでしょう。
捕まえてもそれはイカ墨で、本体はすでにそこにはいません。
海の忍者の名に恥じない行動様式です。

アオリイカの卵を見つけることができたら、少しだけもぎ取って、
家で観察するのも楽しいかもしれません。
ただし、イカの子供を育てることは非常に困難で、すぐに弱ってしまいます。
生まれたら、その日のうちにアマモ場に帰すことをお勧めします。
私も、生まれた子供たちは卵を取ってきた場所に放流しました。
(撮影した場所はアマモ場近くの砂地で、残りはアマモ場に直接放流しています)







カミナリイカの卵

2011-08-18 19:00:25 | 生物
今回はカミナリイカ(Sepia lycidas )です。

上の写真は背景が白いので、イカも白くなっていてわかりにくいですが、
下の写真で見ると雷、もしくは目のように模様が見えます。




春先から初夏にかけて、カミナリイカはアマモ場に卵を産み付けます。
上の2枚の写真はその時に網ですくったものです。

アマモ場はこのような感じです。
ちなみにそれぞれの写真に先日紹介したヨウジウオが一匹ずつ隠れています。




そのアマモ場の根元を探すと、下のような卵塊を見つけることができます。


カミナリイカは卵を一粒ずつ丁寧にアマモに巻きつけ、表面に砂をかぶせてカモフラージュします。
イカは完全に大人に近い形になるまで、この中で育ちます。
そのままでは中が良く見えませんので、少し卵膜を剥きます。
卵は幾層にも卵膜を重ねた構造の中に入っています。
左が卵膜を一枚だけにしたもの、右は完全に卵膜をとったものです。


ちょっと拡大。形は小さくとも、成体とそっくりの形です。
小さなうちはつぶらな瞳が可愛らしいと、見る人には好評です。
下部に卵黄を持っていて、孵化が近くなると卵黄が消費されて小さくなり、
やがて自ら切り離して泳ぎだします。
そのころには卵膜も柔らかくなっているところが、実によくできています。








イカの卵塊は種によって異なります。
次はシリヤケイカとアオリイカの卵塊を紹介する予定です。