尾道市向島町の里海を眺めて

瀬戸内海(尾道・向島)で見られる海の生物等をご紹介

中国新聞企画「海のゆりかご」 新聞協会賞受賞記念式典

2012-10-30 20:10:20 | 日記
以前に協力した中国新聞の企画「海のゆりかご」(全41回)が新聞協会賞を受賞されました。
この企画にはゴンズイ撮影の協力とウミサボテンの紹介をした縁があり、
多少なりと貢献できたのであれば大変うれしく思います。

関係者約140名を集めた式の招待状を頂いたので、ホイホイと参列してきました。


会場は中国新聞社。


受賞者のTカメラマンとK記者。念のため顔はぼかさせてもらいます。

会場の両脇には大きく引き伸ばされた、Tカメラマン渾身の写真パネルが並んでいました。
同じ写真は中国新聞社発行の写真集「命のゆりかご~瀬戸内の多様な生態系」で説明文とともに見ることができます。
大変美しく、芸術的な写真ばかりです。些かチートな手法を使った写真もあるという裏話も聞くことができました。
写真集の詳細については以下を参照してください。
この写真集はお土産に各自1冊ずつ頂きました。一冊は事前に購入済みだったため、頂いた分は保存版にしておきます。




会そのものは1時間程度で終了したので、散歩ついでに駅まで歩くことにして、
道中に夜景を撮影したり、ウィスキーを3杯ほど飲んだりしておりました。
その時おつまみに頼んだフィッシュアンドチップスにタチウオのフライが入っていて、
向島の防波堤で数年ぶりにタチウオ釣りでもしようかと考えながら帰途につきました。
首尾よくタチウオが釣れたら、一つやってみたい加工品があるのです。
(釣れなかったらスーパーで・・・)

Mesodinium rubrum(ダルマハネムシ)による赤潮

2012-10-27 17:46:29 | 日記
金曜日の昼前に海辺を見てみると赤潮が出ていました。



ヤコウチュウとは色が違うなと思い、ちょっとすくって見ました。
ヤコウチュウはオレンジ色に近い赤で、これはワインレッドに近い赤です。



マクロ撮影するとこんな感じ。大きさは50μm程度。
濃いところで大体1000匹/1mlくらいの密度でしょうか。 コップ半分の約100ml中には10万匹いる計算になります。




顕微鏡で覗いて分類してみました。 おそらくMesodinium rubrum(ダルマハネムシ)だと思います。
発生するのが秋口で、赤潮の色合いも瀬戸内海プランクトン図鑑(岩国市立ミクロ生物館発行)の記載と似ています。



ダルマハネムシの和名は最近つけられたようで、ちょっと語源を推測。
顕微鏡でのぞくときに絞りを甘めにするとケイ酸質や鞭毛の部分がはっきり見えず、ダルマのようにみえます。
また、動き方は本当に跳ねるような動きをします。動画はこちら http://youtu.be/kXp58pZH89c
ホールスライドグラスに入れて撮影してみましたが、動き回っているのでピントが合わないのはご容赦を。



赤潮が出ているあたりで来月頭の広島大学大学祭に供出するための小魚をストックしているのですが、
この影響で死んでいないことを祈るのみです。
生きていれば、11月4日の日に「ビオトープで遊ぼう」の海の生き物コーナーで行う
「金魚すくい」ならぬ「珍魚すくい」で使う予定です。


ニッポンウミシダ

2012-10-20 19:24:24 | 生物
先日のウミユリに近い仲間のウミシダ類を今回はピックアップ。
棘皮動物に分類され、瀬戸内海の浅瀬でも見つけることのできる種です。
ホンダワラなどの海草の生えるガラ藻場でよく見かけます。


これはニッポンウミシダ(Oxycomanthus japonicus
ウミシダ類は外見からの分類が大変難しいらしく、体色の変化も大きいそうです。
羽枝の先端が黄色いものはニッポンウミシダの特徴だそうですから、たぶん間違いないと思います。

裏返してみるとこんな感じ。



足のようなものがたくさん生えていますが、これが巻枝と呼ばれる部分で、この部位を使って歩きます。


これは多分オオウミシダ(Tropiometra afra macrodiscus
腕が10本なのでそう分類しています。間違っているかもしれません。
ニッポンウミシダより大きめのサイズです。

採集するときはなるべく羽枝を触らないようにして岩などから剥がします。
羽枝は粘液を出しているためかベタベタしていて、軍手などに絡みつきやすいため、
採集したら海水ごとビニール袋に入れます。ジップロックなどが重宝します。

水槽に入れておくとボリュームもあって中々見ごたえがあるのですが、
気に入らない環境下だと腕が自切してポロポロと羽枝が落ちていきます。
餌は海水中のプランクトンなどを羽枝で集めて中央の口で食べるため、
飼育中はサンゴ用の餌をスポイトで吹き付けてやります。
市販されているコペポーダを粉上にしたものなどが良いそうです。


ちなみに、東京大学の三崎臨海実験所はニッポンウミシダの人工繁殖に成功しており、
要望があれば研究・教育用に限りほぼ実費のみで販売しています。

館山湾岸生物教育研究センターで見たウミユリ

2012-10-16 19:29:25 | 生物
10日から12日まで、お茶の水女子大学附属の湾岸生物教育研究センターに会議で行ってきました。
お茶大と言っても、湾岸センターは千葉県館山市にあり、東京駅から房総なのはな号という高速バスで2時間ほどかかる場所です。
会議の中身は各地の臨海実験所で採集・飼育・施設整備に関わる職員がそれぞれの技術や情報を交換するものです。
女子大の施設のはずですが、見渡す限り会議に参加したおっさん達の群れでした。

館山では主にバフンウニの研究及び飼育を行っている現場を今回見学しました。
バフンウニは大体冬場に産卵期を迎えますが、それを温度管理して産卵期のウニを通年供給することに成功しています。
これらの調整されたウニは、各地の大学や教育機関における研究・教育のために発送されています。
ご希望の方は是非、湾岸生物教育研究センターに相談してみてください。





バフンウニの見学以外で興味を引いたのは、トリノアシ(Metacrinus rotundus CARPENTER)というウミユリの仲間が
飼育されていたことで、100mほどの海底から採泥器(ドレッジ)で採集したようです。



ウミユリは棘皮動物門に属し、ヒトデやウニ、ナマコなどの仲間になります。
その名の通り海に咲く百合のような形から和名が来ています。英名もsea lilyで、
ウミユリ綱を示すCrinoideaも百合のようなものという意味です。
根や茎のように見える部分はそのまま茎と呼ばれ、花弁のような腕(冠部)があります。
茎からちょろちょろと生えているのは巻枝と呼ばれます。
再生能力があることでも知られている生物です。

基本的に深海性の固着生活を送るウミユリですが、実は移動することができます。
私が見た時には時間がさほどなかったため移動している様子を見ることはできませんでしたが、
巻枝を使ってゆっくり匍匐前進し、冠部の腕を使って高速移動をする種もあるそうです。
中には140m/hという速度で海底を歩く種もあるらしく、歩く様子が見れるファイルも見つけました。
転載するのはまずいかもしれませんので、「A jogging flower」で検索してみてください。すぐ見つかります。
なかなかにシュールな光景です。

後は、臨海実験所の生命線である海水のラインを見学し、海水ポンプや取水口の形状、貯水槽などを確認しました。
そしてそれぞれの供給先の様子も見るのですが、中には実に人なれしたハコフグの仲間?がいました。
人が寄ると海面に浮かんできて、触らせてくれます。向島にも芸達者な生物が欲しい所です。


海水ポンプ室。実験所の心臓。


屋上の海水タンク。ポンプでくみ上げた海水をここに貯め、落差で各実験室に供給。


屋外水槽と会議に参加した面々。



湾岸生物教育研究センターの皆様には大変お世話になりました。改めて御礼申し上げます。