はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

手鋸・下刈鎌 手道具を使うことの重要性

2020年07月12日 | 現場技術・安全管理・道具のお話

 林業だけでなく、森林ボランティアでも、チェーンソーや草刈機を使用することが一般的な現代。

 僕が林業の業界に入った20年前(2000年)は、森林ボランティアでチェーンソーを使う方は、どちらかと言えば少数派って感じで、手鋸で間伐をしている方も多く、下草も下刈鎌を使っている方もいました。

 森林ボランティアに対する補助金が充実したり、国や都道府県と連携することも増え、機械類が購入しやすくなったという背景もあると思いますが、今では、森林ボランティアの方もチェーンソーで木を伐る、草刈機で草や灌木を刈ることが当たり前になっていると思います。

 ある日、僕の師匠が、師匠が新人だった頃の話をしてくれました。

 「駆け出しの頃は、周りがチェーンソーや草刈り機を使っている横で、1人、手鋸と下刈鎌を使って仕事をしていたから大変やった。」と。

 だけど、「でも、手道具で仕事してたら、山で働く体の動きが身についたから、結果的によかったわ。」と。

 「今は、仕事にならんから、新人にも機械を渡すけど、機械の扱いを教えながら、動きも見なあかんから、指導するのも大変。手鋸や鎌やったら、渡して、作業しやすい場所を割り当てておいたら、まぁ、放っておいても、大きなケガになることは少ないからな。ゆっくりと育てられる。」

 つまり、

 新人が林業で最初に学ぶことは、山の中での体の動かし方。
 それには、手鋸や下刈鎌で作業するのが一番。

 僕が初めてチェーンソーを買おうと思って、師匠に相談した時、

 「手鋸で伐ることも続けな、あかんで。」と言われました。
 
それはなぜか。
 チェーンソーは正しい姿勢でなくても、木を伐ることが出来る。
 目立てが上手ければ、無理な姿勢でも、木を伐ることが出来る。

 草刈機も正しい姿勢でなくても、草を刈ることが出来る。
 目立てが上手ければ、太さ10cm以上の灌木だって、スパっと切れる。

 だけど、手鋸や下刈鎌は、正しい姿勢でないと伐る・刈ることが出来ない。
 頑張れば、伐る・刈ることは出来るけども、長時間、続けることは出来ない。

 体を安定させ、しっかりと踏ん張ることが出来る姿勢で作業しないと、手鋸での間伐は、ただただ疲れるだけ。

 手鋸で作業していると、疲れてきたら、自分の姿勢を直したり、ポジションを変えたりしますが、チェーンソーは「あと少し・・」みたいな気持ちが出て、姿勢を直したりすることは少なかったり・・・。

 手鋸で木を伐り続けるには、非効率な作業をなくし、効率かつ長続きできる方法を身につけないといけないので、伐る前に、自分の立ち位置、木を伐る高さと伐りやすい姿勢、足下が踏ん張れる場所などを考えるようになり、伐るためのポジションを確認するようになります。

 

※間伐用手鋸のイメージ

 しかし、新人が初めからチェーンソーを使って、木を伐っていると、そこに行き着くことは少ない。

 自ずとそこに行き着く新人がいたら、その新人はかなり優秀です。

 人は「楽をしたい」と思うので、非効率な手鋸を使うことによって、効率的な作業姿勢や方法を自ら考え、繰り返すことで、上達していきます。

 チェーンソーを使うと、人が備えている考える力を奪ってしまいます。

 インターネットが普及し、検索すれば、色んな情報が手に入り、特に考える必要がなくなったというのと同じ現象ですね。

 

 下刈りも同様です。

 下刈鎌を使って作業する場合、作業時の足の立ち位置が「右足が前・左足が後」になります。

 作業時の足の運び方も、前進するとき右足→左足の順に足を運びます。

 この姿勢と足運びは、草刈機を使用するときも同様です。

 しかし、草刈機も正しい姿勢でなくても、草や灌木を刈ることが出来るので、「左足が前・右足が後」でも違和感なく作業することが出来ます。

 下刈鎌を使う場合、足が逆になると動きがぎこちないと実感することが出来ます。

 例えば、次の一歩を踏み出した後、手前の草が刈り足りないと気づいた時、下刈鎌を使っていると、一歩下がってから、刈り直します。
 下がらずに刈ろうとすると、無理な体勢になり、上手く刈ることが出来ません。

 刃の目立てが上手ければ、刈れなくはないけど、それでも無理な作業姿勢に違和感を持ちます。

 一方、機械を使っていると、機械を少し手前に下げて、一歩下がらずその場で刈ることも出来ます。

 これも無理な作業姿勢になりますが、機械だとサッと刈ってしまうので、無理な作業姿勢の違和感を我慢でき、やがて、その行動が自然な作業姿勢として身についてしまいます。

 そして、そんな作業をしている時に、岩や切り株にあたって、キックバックが起こる・・・

 立ち位置そのままで、機械を手前に下げた分、機械と足の距離が縮まっているので、キックバックした刃が足にあたることも・・・・。

 手鋸や下刈鎌などの手道具は、目立ても重要ですが、そもそも正しい姿勢で扱わないと疲れます。

 

 山の中で作業した経験が無い新人は、何が正しいか分かりません。

 そして、疲れる原因は、体力なのか、作業姿勢なのか、その原因も分かりません。

 体が慣れた頃、体力がついたからなのか、正しい作業姿勢が身についたからなのか、変な作業姿勢に体が慣れてしまったからなのか、体が慣れた理由も分かりません。

 どういう動きが正しいのか、分からないのが新人です。

 だから、手道具を扱わせて、作業姿勢の違和感を感じてもらうことも大切だと思います。

 

 個人的に気になるのは、今、林業業界に参入しようとする新人の方達は、手道具による作業を経験しているのか、という点。

 新人には、機械を扱う技術を学ぶことも大切ですが、まずは、山での動き方、正しい作業姿勢を身につけることも重要ではないのかなと思います。

 そのためには、手道具を使って作業する経験は、とても重要なことだと思います。


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