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はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

林業視察ー宮崎県 再造林ー

2023年07月19日 | 株式会社はぐくみ幸房のお仕事

 前回の報告からだいぶ経ちますが(^_^;)、宮崎県の林業視察~再造林編~。

 

 16年間、素材生産量日本一の座に輝き続けた宮崎県。

 再造林という問題に直面しています。

 一番の問題は「人手不足」。

 伐採量に対して再造林が追い付かない。そして、造林作業はマンパワー。

 それでも、各地域で工夫して取り組み、再造林率100%を掲げる地域もありました。

 あと「地拵え」も大切にされていました。

 それについては、強く共感できるので、いずれ「無地拵え」なんて言葉は死語になるんじゃないかなと思います。

 まー、そもそも、地拵えの目的が果たせていない無地拵えに価値はないと思います。

 

 加えて、「機械地拵え」は出来るところで実施して、基本的に「人力地拵え」は0にならないという考えも共感しました。

 そうです、「人力地拵え」は無くなりません (´▽`)。

 

 紀伊半島で林業に関わってきた者からすると、宮崎県の地形は羨ましい。

 緩い、緩い。

 一方で土質・地質は、紀伊半島と比べると軟らかい傾向にあり、その上、水が流れる川・小川・谷が多く(よく目立つ)、大雨が降った時に崩土するリスクが高いという一面もあります。

 

 もう1つ、紀伊半島と比べて宮崎県の良かったところ。

 伐採跡地や再造林地に「茨(イバラ)」がほとんど生えていない。

 キイチゴ類、サルトリイバラ、カラスザンショウ、タラノキなどトゲトゲ系の植物がほとんど見当たらない。

 ジャケツイバラなんて、影も形もない!!

 これは羨ましいと思いました。下刈りの時にチクッとしないし、イラっとしない ( ゚Д゚)。

 

 再造林にあたって、土地ごと購入する場合もあり、今後、再造林を進めるうえで、土地を含めて森林所有者になるという案件・動きが表面化されるのではないかなと思いました。


林業視察ー宮崎県 大型製材工場ー

2023年07月11日 | 株式会社はぐくみ幸房のお仕事

 久しぶりの林業視察。

 今回は宮崎県。

 まずは、宮崎県に作られた大型製材工場。

 規模がすごい!の一言に尽きます。

 製材品だけでなく、見渡す限り丸太。

 月50,000㎥の材が動いているそうです。。。

 

 大量の丸太が次々と製材されていきます。

 

 ズラッとならぶ高温乾燥機。

 

 このような大型製材工場が、地域の木材需要を生み、国産材供給を支えている。

 的なことを、世間一般的によく言われますが、支えているのは工場ではなく、ここで働く人たちです。

 ここで働いている一人一人の従業員さんが、工場を支え、それが地域の木材需要を生み出し、支えています。

 大切なのは、この工場で働く人たち

 製材工場を見学させていただき、改めて、「従業員は大切」だと思いました。

 まだまだ暑い日が続くけど、熱中症に気を付けてください!


林分の発達段階

2023年07月06日 | 森林管理・森林空間・森林整備のお話

 僕の中で、森林は樹木が集合した空間であり、森林を育てることは、木を育てることという認識を持っています。

 樹木医という立場からすると、健康な樹木の集合体が健康な森林であり、不健康な樹木の集合体が不健康な森林です。

 森林の基本構成は「樹木」であること。 

 

 というわけで、その樹木の成長に応じるように、森林も発達していきます。

 このことを「林分の発達段階」と言い、藤森隆郎先生が提唱したもので、森林づくりを進める、森林施業を体系化する上で、非常に重要な知識です。

 しかし、色んな講座で、「ご存じですか?」と尋ねても、残念ながら「?」という顔をされる方が多いです。

 林業大学校や林学の大学を卒業された方でも、「?」という顔をされる方もおられ、「遷移のことですか?」と混在される方も・・・。

 

 森林づくりや森林施業に関する講義の依頼を受けたときは、室内外関わらず、「林分の発達段階」をお伝えし、現場で応用するように心がけています。

 目標とする森林、目指すべき森林をイメージする上で、「林分の発達段階」は分かり易いので、理解しておきたい知識ではないでしょうか。

 なお、この投稿に載せている絵や表は、「森林生態学 持続可能な管理の基礎(藤森隆郎著)」を元に、作成したものです。

 

 動画でも紹介しているので、併せてご覧下さい。

森の知識はぐくMOVIE「林分の発達段階」

 

 林分の発達段階は、4つに分類されます。

 なお、( )書きの林齢は、イメージを持っていただくための目安の林齢です。

 この林齢に達すれば、その段階になったということを示すものではありません。

 発達段階は、地域・環境・樹種などによって異なり、じっくり、森林を観察し、その変化に気づかないと発達段階を判断することは出来ません。

 机上の数値ではなく、現場重視です。

 

 林分発達段階は、次の4段階に分けられます。

 1「林分初期段階(おおむね10年生まで)」

 2「若齢段階(おおむね10年生~50年生まで)」

 3「成熟段階(おおむね50年生~150年生)」

 4「老齢段階(おおむね150年生以上)」

 

 次に、それぞれの段階における森林の特徴についてです。

 

「林分初期段階」

 林分がスタートする段階です。

 人工林だと、人が山に苗木を植栽することで、林分がスタートします。

 天然林だと、風で種が運ばれて発芽するなど、自然に植物が芽生えることで、林分がスタートします。

 

 特徴として、

・林床まで光が直接当たる明るい環境。

・様々な種が侵入するため、種間競争が激しい。

人工林では、下刈り、つる切り、除伐といった育林施業が必要な林分。

  → 植栽木を激しい種間競争に勝ち残らせるため、下刈りや除伐を行う。

 

 この段階の森林のイメージです。

 人工林。

 天然林。

 

「若齢段階」

 樹木の成長が旺盛な時期で、樹木同士が接する様になる段階で、林冠が閉鎖する森林です。

 樹木の成長が盛んなので、人工林だと、間伐しても、再び、林冠が閉鎖します。

 

 特徴として、

・樹木は若く、直径も小さいが、「互いに接する」、「混み合う」、「せめぎ合う」という感じの林分。

・強度の閉鎖状態になる。

・樹木は育ち盛り。光合成を盛んに行い、どんどん成長する。

・林冠が閉鎖するため、大半の光が使い尽くされ、林床まで光がほとんど当たらない暗い環境。

・下層植生(林床植生)が極めて乏しい。

・種の多様性も乏しく、土壌の発達も停滞し、表層土壌の流亡も起こる場合がある。

 

 この若齢段階は数十年続きます。(林齢的には40~50年生までとされています。)

 成長が旺盛な時期を迎える段階なので、適切な時期に適切な施業が必要な状態の森林が若齢段階です。

 若齢段階の時に施業を行ったか否かによって、次を迎える成熟段階の状況も異なってきます。

 特に、スギやヒノキなど針葉樹の単一な人工林ほど、顕著な差が生まれます。

 

 若齢段階の森林のイメージとして、

 人工林。下層植生が生えていない。よく見る人工林ですね。

 成長が旺盛な時期で、間伐しても、すぐに林冠が閉じやすい。

 だから、若齢段階の時点で、適切な時期に間伐を行うことが重要であると言うことが理解しやすいと思います。

 一方で、年輪幅が狭い木材を生産したいなら、若い時期の旺盛な生長量をコントロールする必要があります。

 間伐だけではコントロールしがたいので、生きた枝を除去する枝打ちを行い、樹木の生長量をコントロールします。

 

 そして、天然林の若齢段階も下層植生が乏しい。

 

「成熟段階」

 樹木が成熟期を迎え、樹木の成長が緩やかになります。

 そのため、間伐や自然枯死によって出来た林冠の空間は、すぐに閉鎖されず、下層植生が少しずつ生え始める段階の森林です。

 

 特徴として、

・劣勢木の枯死や間伐などにより樹木が減少し、林冠が開いても、すぐに閉じない林分。

・林冠に隙間が生まれる林分で、林床まで光が届くようになるため、下層植生(林床植生)が増え始める。

 → 複層林が成立する段階

・種の多様性が増し、水土保全の機能が高まる。

 

 上層木の樹種によりますが、この状態は100年前後かそれ以上続くとされています。

 

※若齢段階=林冠の隙間がない。下層植生がない(少ない)。

※成熟段階=林冠に隙間がある。下層植生がある(多い)。

 

 成熟段階の森林のイメージ。

 多くの方が、「理想とする人工林」、「美しいと感じる人工林」が成熟段階の人工林です。

 まずは、約90年生。

 

 約120年生前後の人工林

 

 約150年生以上の人工林。

 

 天然林のイメージ。

 ※少し無理矢理な写真ですが、あくまで、イメージです・・・。

 

 

4.老齢段階

 樹木の老齢化が進み、大きな枯死木や倒木が見られ、林冠に大きな空間ができ、そこに次世代の稚樹が見られる段階の森林です。

  

特徴として、

・樹木が老齢に達し、大木の枯死が見られる。

・大木の枯死や攪乱などの倒木によって、林冠に大きな穴が開き、成熟段階よりも光が差し込み、局地的に明るい環境ができる。

・小径木~大径木、成長が旺盛な木~衰退木、次世代を担う芽生えたばかりの樹木~枯死木まで幅広い樹齢層に恵まれた林分。

・林分の構造が複雑で、生物多様性や水土保全の機能が高い。

 

 木材生産を目指す人工林は、老齢段階に至るまで育てることは、難しく(ほぼない)、人工林は成熟段階の途中で終わるとされています。

 植えた木が、自然に枯死するまで維持し続ける人工林って、ないですよね・・・・。

 

 老齢段階の森林のイメージ。

 大小様々なサイズの樹木が、芽生えたばかりの樹木から倒木まで同時に存在する森林。

 

 常緑樹の老齢段階。

 

 そして、ここからが重要なところです。

 それぞれの段階において、発揮される機能が高い/低いを示したグラフを藤森先生が示しています。

 純生産量は成熟段階を迎えると、低下するとされていましたが、近年、高齢人工林の研究が進み、成長は低下せず、横ばいという風に見直されています。

 このグラフのとおり、水源涵養や生物多様性などの機能は、成熟段階から上がるとされています。

 よく、「公益的機能重視の森づくりをしたい!」と言う方には、「成熟段階または老齢段階の森林を目指しましょう。」と説明すると同時に、それがいかに困難で、長い道のりであることを理解してもらい、後継者など人材育成も必要などのお話もさせていただいています。

 「災害に強い山を作りたい。」

 「水が豊かな山を作りたい。」

 「生物の多様性が豊かな山を作りたい。」

 こうした山づくりを目指すのであれば、目標は成熟段階の後期~老齢段階になります。

 そのためには、目の前にある伐採跡地にどんな樹種を植え、どんな林分初期段階を作り上げるのか。

 また、若齢段階の林分を迎えたとき(または目の前の若齢段階の林分)、どのような施業が必要なのか、をしっかりと観察し、考える必要があります。

 

 

 次に、森林に期待する働きのアンケートでは、災害防止、温暖化防止、水源の涵養がトップ3で、その次が木材生産となっています。

 

 そして、現在の齢級別森林面積。(※1齢級は5年生刻み。例:10齢級は46~50年生。)

 成熟期を迎えつつある人工林が増えています。

 これから、国民が期待する公益的機能の高まりが始まる段階にある人工林が増えてくる・・・とも考えられます。

 もちろん、手入れが行き届いていない人工林もあるので、全ての人工林とは言い難いですが、公益的機能の高い森林に誘導していく可能性は0ではないと思います。

 しかし、現状は、国民が期待する第4位の木材生産を進めるため、皆伐を推進する傾向にあります。

 

 林分発達段階に基づき、現場を観察すると、その様子をうかがえる点が多々あります。

 もちろん、若齢段階でも、環境や手入れ次第では、下層植生が生えている林分もあります。

 でも、それは光が入りやすいという環境が加わっている可能性もありますし、下層植生自体がわずかな光環境を好む種類である可能性もあります。

 様々な環境や条件が加わることによって、林分発達段階が100%、そのまま現場と一致するわけではないですが、現場毎にその傾向を観てみると、理論どおりだと納得いくものが非常に多いです。

 

 林分発達段階、それぞれの段階が発揮する機能の高い/低い、齢級構成、国民アンケート。

 それぞれをつなぎ合わせて考えてみると、どういう方向を目指すべきなのかな、自ずと見えてくる。と、個人的には考えています。

 よく、水源涵養など機能別でゾーニングしていますが、機能別より発達段階をベースにゾーニングし、その段階に応じて、機能を柔軟に発揮させた方が良いのでは?と個人的には考えています。

 

 成熟段階を迎えた木材の生産をどんどん進めていくべきなのか。

 国民が求める公益的な機能の発揮を目指した森林づくりをどんどん進めていくべきなのか。

 機能と木材生産と両立できる方法を進めていくべきなのか。

 

 目標や方向性を機能に絞るのもいいですが、目指すべき森林の姿をイメージするなら、林分発達段階が分かりやすいと思います。

 これも、1つの良い指標だと思うので、ご存じなかった方は、これを機に、興味を持っていただきたいです!

 林分の発達段階など、こうした基礎的知識を理解し、身につけた上で、現場を見ると、山の見方が変わると同時に視野も広がり、そして、選択肢も広がり、山での活動がますます楽しくなります。

 もちろん、森林散策でもこの知識は大いに役立ちます!

※2019年11月の記事を改編


センノキカミキリ

2023年06月28日 | 昆虫類+αのお話

 ウコギ科の生木をホストにする「センノキカミキリ」。

 センノキとは、「ハリギリ」のことで、ハリギリはウコギ科の落葉広葉樹です。

 センノカミキリは、ハリギリ、タラノキなどウコギ科樹木の新しい枝の樹皮を食害(後食)するカミキリムシです。

 

 発生する時期は6~10月頃、体長は20~36mm、分布は北海道から沖縄まで日本全土に渡ります。

 

 幼虫は、生木の心材部を食害するので、タラノキを栽培する者にとって、センノキカミキリは代表的な害虫 ( `ー´)ノ 。

 弊社も ”トゲのない” タラノキ「メダラ」を育てているので、センノキカミキリにやられて、樹液がダラダラと流れ出ています ( ゚Д゚)。


目的と目標 問題と課題

2023年06月26日 | 人材育成・コミュニケーションのお話

 「目的」と「目標」/「問題」と「課題」。

 事業を進めたり、計画を立てるとき、何気なく使う言葉です。

 

 「目的は何かな?はっきりしないなー」

 「もう少し具体的な目標を立ててよ。数値も取り入れて。」

 「こういう問題もあるんじゃないの?」

 

 みたいな感じで・・・・。

 こうした会話の中で使われる「目的」、「目標」、「問題」、「課題」という言葉の意味や理解を他者に対して、正しく説明することが出来ますか?

 ” それでは、「目的と目標の違い」と「問題と課題の違い」について、部下の方に説明してください。” と言われたら、自信をもって、説明することが出来ますか?

 

 これが、今回お話するテーマです

 

 先日、奈良県フォレスターアカデミーにおいて「リーダーシップの理論と実践」をテーマにした講義を5日間行い、初日の授業、一発目に「目的と目標の違い」と「問題と課題の違い」を説明するというグループワークを行っていただきました。

 その時、生徒さんたちが説明したものが、こちらです。

「目的と目標」

「問題と課題」

 

 ここで重要になってくるのが、それぞれが「目的」、「目標」、「問題」、「課題」の 認識にズレ があるということです。

 言葉としては、なんとなく理解しているけど、全員が同じ答えになっていない、つまり、認識に違いがあるということです。

 

 リーダーとは、「 チームの目標達成や課題解決に向けてのかじ取りを行う人物 」のことです。

 リーダーを筆頭にチームメンバーそれぞれが、目的・目標・問題・課題という言葉に対し、同じ認識を持っていないと、チームとして統率された行動をとることが出来ません。

 そこで共通認識を持っていただくため、「目的と目標の違い」と「問題と課題の違い」をしっかりと理解したもらうため、初日にグループワークを行いました。

 

 では、「目的と目標の違い」と「問題と課題の違い」とは何か。

 

 「目的」=最終的に到達したい、成し遂げたいゴール地点

 「目標」=目的(ゴール)に到達するまでの指標、目的を達成するために設定された具体的な手段

 

 目的は何を実現したいのか、目標は実現するために具体的にどうするのか、ということです。

 目的が明確になっていないと、本質とは違うことに固執してしまい、数値目標だけを追いかけたり、手段が目的になったりしてしまい、ゴールを見失ってしまいます

 ゴールを見失った状態で、数値目標を達成しても、達成感は得られません。

 なぜなら、目的を果たせていない・ゴールに辿り着いていないからです。

 

 「問題」=現状と目標(理想)との間にあるギャップのこと、目標達成のために、解決しなければならない事柄

 「課題」=目標と現状とのギャップを埋めるためにやるべきこと、 問題を解決するために起こす具体的なアクション

 

 ここで大事なことは、問題は、現状と目標(理想)との間にギャップがあるから問題である ということ。

 現状に対し、特に理想がなければ、ギャップがないので、問題は生まれません。

 人それぞれ、現状に対する理想は違います。

 現状に満足している人は、理想がないので、問題があると感じません

 現状に不満を抱いている人は、理想があるので、そのギャップから問題があると感じます

 よく、「問題意識が足りない」という風に言う方もおられますが、そもそも現状と理想にギャップがないのだから、問題として感じていないことは至極当然なので、問題意識が足りないとか問題意識が低いという風に相手を責めることはナンセンスです。

 自分と相手の理想が違うので、問題という着眼点も異なります。

 

 まずは、目的を明確にし、具体的な目標を設定し、これを共通認識にしないと問題も共通認識になりません。

 

 そして、その問題を解決するための具体的なアクションが課題です。

 1つの問題に対し課題が複数存在することもあるため、すべての課題を解決しないと、問題は解決されません。

 課題というアクションを起こしたけど、問題が解決できなかった。という経験があったとしたら、それは、解決できていない課題があったのかもしれません。

 

 目的があるから、目標を立てることが出来ます。

 目標があるから、問題が生まれます。

 その問題を解決するためのアクションが課題です。

 

 目的と目標と問題と課題は繋がっているということです。

 

 この点をしっかりと理解し、他者も同じように理解できるように説明する力を身につけることが、リーダーとしてチームをまとめる第一歩ではないでしょうか。


ヤマモモ

2023年06月21日 | 樹木・草花のお話

 初夏に甘酸っぱい赤い実を付けるヤマモモ。

 ヤマモモは、ヤマモモ科の高木性常緑広葉樹です。

 本州(関東以西)、四国、九州、沖縄に分布し、温暖地域の低山地や海岸沿いに自生し、公園や街路樹としても植栽されています。

 日本だけでなく、中国、韓国、台湾などにも自生しています。

 ちなみに、中国名は「楊梅」と書いて、ヤンメーと言われています。

 

 ヤマモモの名前の由来は、「山に生えてモモのような実がなるから」、「葉がモモに似ているから」といった説があるそうです。

 いわゆる「桃」のような実と言われると、いささか「えっ?」と思いますが、「桃の葉」に似ていると言われれば、「まぁ、そうやな」って、感じですね。

 

 

 ヤマモモの葉は互生または束生し、長さが4~10センチ、葉柄はほとんどなく、葉質は厚みのある革質といった感じです。

 

 若木の葉は葉縁にギザギザ(鋸歯_きょし)があり、成木になるとギザギザが無くなります。

 ちなみに、萌芽更新したヤマモモの葉にも鋸歯があります。

 

 

 ヤマモモは雌雄異株で、街路樹などに植えられるヤマモモのほとんどは雄株で、たまに雌株が混ざったり。

 花期は3~4月。

 雄花は、黄褐色の芋虫に似た形状の花を出し、雌花は紅色で、花柱が2裂して突き出た花を出します。

 開花の順番は、先に雄花が咲き、その後に雌花が開花します。

 

 ヤマモモの雌花

 

 

 6月になると濃い紅紫色の実を着け、実の表面には小さな凹凸があり、そのまま食べることが出来ます。

 ついつい何度も口に運びたくなる甘酸っぱい味で、個体によって松やにのような風味・雑味があります。

 

 ちなみに、通常のヤマモモよりも大きな実をつける改良された品種あります。

 たまに、産直系のお店に並んでいることがありますが、基本的に日持ちが良くないので、出店されたその日にご購入下さい。

 なので、基本的にジャムや果実酒といった加工品に使われることが多いかと思います。

 

 ヤマモモの樹皮。

 実は、ヤマモモの樹皮は「染物」として利用されます。

 以前、ヤマモモの樹皮採取の依頼を受け、ひたすら樹皮を剥いて、採取したことがあります・・・・。

 ちょっと倒れたり、樹幹折損すると不都合な場所に生えていたヤマモモを伐採した際、タイミングよく、樹皮採取の依頼があったので、その時に対応しました。

 実は、ヤマモモは裂けやすい樹木なので、変に曲がっているヤマモモは、伐採の時、結構、慎重になります (^_^;) 。

 

 

 さて、ヤマモモの根は、窒素を固定する根粒菌と共生しています。

 そのため、肥料木として、砂防用や荒廃地の回復用樹木として植栽されます。

 

 和歌山県の特産品である「紀州備長炭」。

 その原木であるウバメガシ。

 ウバメガシを伐採する際、ウバメガシの再生を促すため、ヤマモモを伐らず、残すという山づくりの技術が伝わっています。

 ヤマモモに根粒菌があるとか、そういった知識があったわけでなく、ただただ昔から引き継がれた現場の知識。

 現場で培った山づくりの経験と科学的な根拠が結び付く事例が多々あるので、そういう話は本当に面白い!!!

 

※2015年6月の記事改編


鞄 アカメガシワ

2023年06月14日 | 資源利用(木材・特用林産物)のお話

 街でも田舎でも陽当たりの良い場所に生えてくるアカメガシワ。

 アカメガシワは、地面まで太陽の光がガンガン当たる場所に生えてきます。

 そして、いろんな樹木の中でも、陽当たりの良い場所に真っ先に生えてくる先駆性樹種(パイオニア)の代表的な樹木でもあります。

 

 さて、そんなアカメガシワ。

 樹皮は生薬の原料として有名で、胃潰瘍などに効果があります。

 

 そんな、アカメガシワの樹皮を集めて、樹皮を剥く。

 

 アカメガシワの樹皮が、こんなになります。

 

 

 今回の作品は「くまの手仕事研究所」さんが、アカメガシワの樹皮を編んで作られたもので、全て手作りです。

くまの手仕事(研) (nutshw.base.shop)

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ドクガ幼虫

2023年06月07日 | 危険な生き物のお話

 ドクガは、ドクガ科ドクガ属に属する鱗翅目(チョウ目)の昆虫です。

 毒蛾(ドクガ)という名前のとおり、幼虫の体毛には「毒毛針」があり、皮膚に刺さると激しいかゆみが伴う危険な毛虫です。

 幼虫の体色は黒く、脇や背面などにオレンジ色の模様があり、特徴的な見た目をしている毛虫です。

 生まれたばかりのドクガ、初齢虫の体長は1.0cm未満で、脱皮を繰り返しながら大きくなった終齢虫の体長は約3.5~4.0cmです。

 

 ドクガの毒毛針は、肉眼で見える毛よりも細く、それが皮膚に刺さると激しいかゆみを伴う皮膚炎を起こします。

 しかも、幼虫の成長が進むと毒針毛の威力も上がります・・・。

 ちなみに毒針毛は、蛹から成虫、そして、卵魂まで付けています。迷惑な話です。

 毒毛針は、外敵からの防御手段であり、刺激を与えると毒針毛を周囲に放出するため、基本的に近づいただけでは被害は及びません。

 

 ドクガを刺激することなく、上手くコントロールすれば、手に乗せても大丈夫ですが、マネしないでください (^_^;)。

 

 ドクガの幼虫は、8月下旬頃に孵化し、食草の上で糸を吐いて巣を作り集団で過ごします。

 10月後半、地面近くで巣を作り、集団で固まって越冬し、春になると活動を再開します。

 6月、十分に成長した幼虫(体長2.0cm以上)は、集団生活から単独生活に変わり、サクラ、ウメ、コナラ、クヌギ、カキノキ、イタドリなど色々な葉を食べます。

 脱皮を繰り返し、徐々に体長が大きくなると、毒針毛も発達するため、6~7月にドクガによる被害を受けやすくなります。

 成虫は、7月後半~8月前半に交尾し、食草植物に卵を産み、一生を終えます。

 

 これから、ドクガの幼虫が大きくなり、被害を受けやすい時期になりますので、皆さんも注意してください。

 全体が黒く、脇がオレンジ色の毛虫は注意してください!


ホオノキ 花

2023年05月18日 | 樹木・草花のお話

 大きな葉と大きな花がとても目立つ「ホオノキ」は、モクレン科モクレン属に属する樹木です。

 「ホオ」は”苞”という意味で、大きな葉で食物を盛ったことが名の由来になったそうです。

 大きな葉に食べ物を持って、”頬張る”という意味もあるとか・・・

 

 ホオノキは、高木性落葉広葉樹で、日本に生える樹木の中で、最もが大きい樹木です。

 樹高は15~30m、樹皮は灰白色。

 

 葉は単葉で、枝先に集中し、互生します。

 葉の長さは約20~40cm、幅は約10~25cmと、在来種の中で最も大きな葉をもつ樹木です。

 葉の表面は緑色、裏面は灰白緑色、葉縁は全縁で波を打ちます。

 
 4~5月頃、直径約15cmの大きな花を開花させます。

 強い芳香があって、個人的にこの香りは大好きです。!(^^)!

 

 ホオノキの花は、咲いた日は雌花(雌しべ)で、翌日に雄花(雌しべ)になるという面白い特徴を持っています。

 開花1日目が雌花。

 柱頭から反り返るように張り出しています。

 

 開花2日目が雄花で、花粉が出ています。

 昨日咲いていた雌花は柱頭にへばりついてます。

 雄花が咲く頃には、雌花が終わっています。

 

 なぜ、雌花と雄花、それぞれ咲く時期が違うのか・・・

 自分の花粉を自分で受粉しないようにするため、開花の時期をずらしています。

 簡単に言うと、自家受粉を避けるためですね。

 

 雌花は開花1日目しか見られません。

 なので、この時期(4~5月)に花開く、ホオノキの花は、雌花から雄花に変化する瞬間を楽しめます。

 僕も男ですからね、ホオノキの雌花に出逢うため、開花間近なホオノキを見つけたら、滅多に出会えない雌花と出会うため、頻繁に通います。

 車の運転中にホオノキを見つけたら、「雌花(女の子)かな?」と気になって仕方ない!( ゚Д゚)!

 

 ホオノキの花が咲きそうになったら、雌花と雄花の変化を見逃さないよう、毎日じっくり観察してみましょう!

※2016年4月記事再編


奈良県フォレスターアカデミー 2023年度 -森林内活動における危険な生物-

2023年05月13日 | 株式会社はぐくみ幸房のお仕事

 5月11日、奈良県フォレスターアカデミーにて、森林内活動における危険な生き物をテーマとした講義に行ってきました。

 アカデミー生の皆さんには、5時間という短い(?)中で、哺乳類5種、節足動物20種、爬虫類10種、両生類3種、環形動物3種、植物多数、キノコ多数の情報を、頭の中に詰め込んでいただきました。

 

 危険な生き物との接触による死亡者は、年間20~30名。

 もし、効果的な予防方法を知っていたら、一命を取りとめた方がいるかもしれません・・・。

 

 そして、死亡者の8割弱がスズメバチなどハチによる被害です。

 

 さらに、野生動物を通じた感染症による死亡者も・・・。

 

 林業は労働災害が多い産業です。

 急傾斜で足元の悪い労働環境の中で、調査したり、伐採したり、ヒヤッとすることが多々あります。

 その中で、危険な生き物による被害の割合は少ないのかもしれません。

 

 しかし、危険な生き物に対する知識や処置を身につけることは、安全管理スキルの向上につながります。

 森林、林業、自然、生き物に関する取り組みや活動は、個人、団体、法人に関わらず、活発になる中、危険な生き物に関するスキルは重宝されます。

 なので、林業に限らず、農業や田舎暮らしといった場面でも、もちろん私生活においても活用することが出来ます。

 

 そして、危険な生き物を見極めるスキルがあれば、自然観察の幅も広がります♪

 

 講義中に出したクイズ「触っても大丈夫な毛虫」。

 これが分かると、子どもたちと一緒に毛虫に触れて楽しむ自然観察会が出来ます♪

 

 

 

 講義の後半は、グループに分かれてもらい、カードを使って、危険な生き物に対する応急処置のイメージトレーニング。

 被害を確認したら、制限時間4分以内に、取るべき行動と応急処置を行い、病院への搬送と救急車の要請有無を判断してもらいます。

 

 応急処置に必要な道具も選んでいただきます(引っ掛け道具もあります(^_^;))。

 

 そして、発表。

 

 また、講義中に、ポイズンリムーバーやエピペン(練習用)も使ってもらいます。
 起こってほしくないけど、一度でも使った経験があれば、もし、事が起こった時、サッと使えるようになったと思います。
 特にポイズンリムーバーは、初見で、使い方を間違う方が多いです。。(^_^;)
 
 
 ちなみに、アカデミー生の先輩たちは、よくマダニの被害を受けていたそうです。
 だけど、この講義がきっかけで、速やかに正しい処置が行えるようになったと、うれしい報告もありました。
 
 
 事故やケガは起こらないでほしいです。
 誰も望んでいないけど、それでも、起こるときは起こってしまう。
 そんな時に必要なスキルとして、危険な生き物の知識と対処を学んでいただきました。
 
 そして、2023年度のアカデミー生も、前向きな方が多かったので、2年生になる方への講義も楽しみです♪