弥右衛門の暇つぶし

写真、動画での旅行記、ビックリ仰天記事など。

カナダ・フラインインフイッシングの話

2021-09-03 14:54:44 | 旅の思い出
どうも世の中明るい展望が望めない状況が続いてるので、今日はすっきり、晴れ晴れとした話にしたいと思いまして、その昔、ある雑誌に投稿した記事を転載します。表紙の写真は、鈴木大地初代スポーツ庁長官の若かかり日に雑誌「Number」の編集の人とカナダで「フライインフイッシング」を経験した時のものです。
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[カナダの釣り]と言うと、すぐに思いつくのはバンクーバーのサイモンフレイザー河のサーモン釣り、ロッキー山上湖でのトラウト釣りなどが思い浮かびます。カナダ西岸のブリティシュ・コロンビア州、ユーコンっ準州での釣りが日本ではよくしられてまが、北米(アメリカ・カナダ)では五大湖地方を中心にカナダ・オンタリオ州がフイッシング・パラダイスとして有名です。
オンタリオ州は、その面積7万平方キロ、スペインとフランスの面積を併せたものより広く、日本の面積の約三倍の広大な地域です。南を五大湖とセント・ローレンス河で米国と国境を分かち、北は北極海のハドソン湾に面してます。東西1,730キロ、南北約1,670キロです。数万年前の氷河期後に出来た夥しい数の湖沼、河川が点在してます。その数40万とも50万とも言われてます。その湖水に生息する淡水魚は100種類以上に及びます。こんな地理的条件がオンタリオ州を北米有数のフイッシング・パラダイスにしてるのでしょう。
1月から3月にかけてのアイス・フイッシング(結氷した湖上で釣り)に始まり、4月-9月はスティール・ヘッド(海や大湖に生息し産卵ために遡上するニジマスの一種)、サーモンの渓流釣り、夏には湖でのマスキーのトローリング、地上ルートで行けない奥地に小型水上飛行機で飛び未開拓な釣り場で楽しむ、フライインフイッシング等々、一年中多種、多様なフイッシングが楽しめます。
取り明けオンタリオ州の北部のフライインフイッシングは全米の釣り人の間で大変な人気があります。毎年、1月から3月の間、全米各地で「スポーツマン・ショー」と名打った大規模なアウト・ドァー・スポーツ関連のコンシューマー・ショーが開催されます。会場では決まってオンタリオ州北部のフライインフイッシングの情報コーナーとアラスカのサーモン・フイッシングのコナーに黒山の人だかりが出来ます。ちょうどモーターショーで人気の車種のコーナーに人だかりが出来るのと同じです。このショーは北米のアウト・ドァー関連の用具メーカー、情報雑誌社、リゾート・ホテル、スポーツ・ロッジ、チャーター飛行機のオペレイター、アウト・ドァー関連のツァーオペレイターなどが主体で運営されてます。
それほど人気のフライインフイッシングですから、全米から毎年、数多くの釣り師達が各自のタックルボックスにスプーンだ、プラグだ、ストリーマーなどの自慢の疑似餌いっぱいに詰め、思い思いの野望を胸に秘めて乗り込んできます。ベースになるフィッシング・ロッジは米松の角材を組み合わせたログハウスです。天井まで吹き抜けのロビー、石で組んだ暖炉、壁にはヘラジカの剥製、食堂にはバーがあり釣り客の自慢話が出来るようになってる。部屋は質素ですが清潔で部屋いっぱいに木の香が心地良い。
さぁー、いよいよ戦闘開始、これから何日間の釣りスケジュールをガイドと打ち合わせます。まず、自分の釣りたい魚を申告し、それを釣るのに適した湖を選びます。こんな感じの会話です。「ここ数日、気温が高いので、最初の2日間は200キロ北の「Wawa Lake」でノーザンパイクとマスキーを狙う。調子が良ければ次の日もそこにとどまるが、調子が悪ければ、更に西50キロの「B1 Lake」(名前の無い湖もある)再度挑戦する」。こんな感じの打ち合わせです。そして勝利を願って乾杯です。最初の晩は昂奮してるのでなかなか寝付かれません。ウトウトしてるうちに起床の時間です。釣り師の朝は早い。朝食を済ませて外に出ると松の落ち葉の香りを含んだ冷気が肺の中いっぱいに広がります。湖面は朝靄がたち込み神秘的な静寂が漂ってます。船着き場には水上機が準備をと整えてスタンバイしてます。さぁー、出発です。機は湖の中央まで進み離陸態勢に入ります。朝靄をかき分けスピードを上げていくと、ふあっと機は浮き上がり、水面を離れ、さらに高度を上げていきます。東の空がまさに明るみ始め、黒くぼんやりしていた森林はその緑色を鮮明になってきます。その森林のところどころに綿をちぎって置いたような朝靄に覆われた湖が点在してます。まことに幻想的な眺めです。機が目的湖に着水するころにはすっかり明るくなり、遠く無数の水鳥が見えます。機を岸に着け、カヌーに乗り移ってポイントに移動します。
いよいよ待ちに待った「ファースト・キャスティング」、何とも言えない感激が湧いてきます。そして何回かキャスティングしているうちに、最初のあたりです。「ガッン」突如の猛進、ブレーキのかかっているリールから平然と糸を引き出し、右へ左へと突進、そして大ジャンプ。この瞬間を釣り人は何回夢みたでしょうか。そして釣り人は大満足するのです。まぁ、しかし実際はこんな簡単にはいかないのですが、釣り師はこの瞬間のため。日頃研究し、準備して何日も待つのです。

黄昏時にロッジに戻る機上からの眺めも絶景です。地平線は黄金色に染まり、黒々とした森林の中にオレンジ色に光る湖が点々としてます。この黄昏時は夏は午後10時頃まで続きます。一日で一番良い時間でしょうか。
自然の中にどっぷりと浸かり充実した数日を過ごす。フライインフイッシングは単に釣りを楽しむことだけでなく、ここに身を置くことに醍醐味があるのでしょうか。もちろん奥さんぬきにです。(米国の男はここに来るのは奥さんから離れて釣り仲間と数日を過ごすのが、人生、最大の楽しみ、だとのことです。分かるよね。)
おわり


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