夏の真昼の炎天下、人も車も通らない。樹々はそよともゆらがない。
「ゆらぎ」の無いものにヒトは不愉快を感じる。だから、クソ暑い。
そんな中で、そよと吹いた風のゆらぎを言葉にすると詩になる。
なぞなぞなァに、
たくさんあって、とれないものなァに。
青い海の青い水、
それはすくえば青かない。
なぞなぞなアに、
なんにもなくって、とれるものなァに。
夏の昼の小さい風、
それは、団扇ですくえるよ。
(『金子みすゝ゛全集』より「なぞ」)
団扇(うちわ)の風やそよ風には微妙なゆらぎがある。だから気持ちいい。
風鈴 ちりちり 鳴りました
赤ちゃん すやすや睡(ね)ましたよ
風鈴 ちりちり 鳴りました
赤ちゃん にっこと 笑います
夢のなかでも 風吹いて
風鈴 ちりちり 鳴ったでしょう
(童謡 作詞:川路柳虹)
そよ風が吹く森の中の木漏れ日の下で、小川のせせらぎを聞いているとさぞかし癒されるだろう。
と思うのだが、癒されすぎて頭が冴えてきて、人生や自分自身を省みるものなのかもしれない。
水の行くえに
身の行く末を
思や 夕暮れ花が散る
(小川未明の詩「唄」)