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酒と音楽とPC

血は酒で出来ている(某声優談)。他の趣味はPC組み立てるのと音楽聴くのしかない。

ジュリアン・ブリスとカルダッチ四重奏団

2018-12-28 01:24:31 | 音楽

Signumで冒険的な録音を敢行しているクラリネットの名手ブリス。今回はロック、ジャズ、クラシックとあらゆるジャンルを横断的に演奏するというカルダッチ四重奏団とのコラボ。演目はデヴィッド・ブルースという現代作曲家のゴム長靴(Gumboots)とブラームスのクラリネット五重奏曲。

このブルースのゴム長はどうやら中国かベトナムあたりが舞台であるのか、如何にも東洋っぽい旋律で始まる。最初は決して悪くない、と思った。だが、その期待は残酷なまでに裏切られる。緩やかなPart1以降は全部舞曲。しかも現代音楽風ガーガー、ヒーヒー、鋭くリズムを刻むピツィカートの嵐が延々と続く。耳障りな音のオンパレードの上にこの四重奏団、とにかく音が鋭くて私の愛するブリスのクラリネットを掻き消しまくる。これが許せない!現代音楽が好きな私でも耐えられない!腕が立てばいいってもんじゃないよ。

せめてブラームスで落ち着こうと思った期待も残酷に裏切られる。古典であろうがこの四重奏団の演奏姿勢は変わらない。とにかく速く鋭くやかましく常に前のめりの汚い大きな音。こんなせかせかしたブラームスは御免こうむる。肝心のブリスすら釣られて鋭く汚い音を出してしまう(何でも出来る人だからね)。まあ、そうじゃないとクラリネットが全然聴こえないわけだが。こんなに聴いてて辛いブラームスは初めてだ!クロノス四重奏団の現代音楽演奏が大好きというような人だけに推奨。この四重奏団はSignumで私の愛するショスタコーヴィチの四重奏曲を録音しているのだが、絶対に買うものかと心に誓った。本家でモーツァルトのクラリネット五重奏曲をブリスと録音済みだが、これまた買いたくない。速やかにコラボ解消して別の四重奏団と再録音して欲しい。私の好みはやはり保守的なのだと思い知らされた一枚となった。

デビッド・ブルース ゴム長靴、ブラームス クラリネット五重奏曲 A

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ギルトブルクのショスタコーヴィチ協奏曲集

2018-12-28 00:20:24 | 音楽

ギルトブルクといえば移動の合間に駅のアップライト・ピアノで暇つぶしに見事な演奏をして名を上げたピアニストである。既に名声を得ていたピアニストなのであるが、ひょんなことからスターに名乗りを上げることになった。私がこの音源を買ったのはギルトブルクに注目したと言うよりV. ペトレンコのショスタコーヴィチシリーズの一環としてであったが。

以前ドノホーが演奏したショスタコーヴィチのピアノ協奏曲集に不満を抱いたことは書いたように思う。ピアニスト主導の嫋やかなショスタコーヴィチは私が望むものではなかった。伴奏がV. ペトレンコなら大丈夫だろう。金をかけないことには定評のある(?)Naxosなのにトランペット奏者がクレジットされているあたり、わかってる!

さて、演奏の方はやはりオーケストラに荒々しさと静謐さの対比がしっかりと取れている。トランペットは比較的抑え気味であるが、肝心なところでは強奏させており、これなら不満はない。ギルトブルクもドノホーに劣らないテクニックの持ち主であるようでオケとトランペットの分、SignumにNaxosが圧勝という形になった。残念ながら2xHDではないが、録音はなかなか良い。

ギルトブルクは余白で弦楽四重奏曲第8番のピアノ編曲まで弾いており、一筋縄ではいかない音楽性の持ち主であるようだ。Naxosには他にラフマニノフの協奏曲と音の絵、楽興の時、編曲集などを録音しており、やはり一味違うタイプらしい。普通なら前奏曲集かソナタを入れるだろうに。Naxosもラッキーにも濡れ手に粟で知名度と実力を兼ね備えたスターを手に入れたわけで今後の録音にも期待できそうだ(メジャーに引き抜かれなければw)。

ショスタコーヴィチ協奏曲集 A

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エステル・ホッペ

2018-12-27 22:49:57 | 音楽

これまたClavesレーベルが力を入れている美形の女流ヴァイオリニストである。この人はスイス出身とかでClavesレーベル的には地元のスター候補生にあたる。日本語では色々な表記をされる人であるが、英語圏出身者ではないのでこの読み方で良いのではないだろうか。スイスやベルギーで活躍した美形の女流といえば古株のファンならボベスコ(出身はルーマア)が頭に浮かぶであろう。今の美形演奏家ブームの走りのような人で演奏も如何にも女流と言った感じであった。ボベスコは技術的な限界もあってか、ヘンデル、モーツァルトといった古典、フランス系の音楽を得意とした。技術的に困難な割に人気のない現代作品には手を出さないタイプであった。

このホッペはその点が異なる。彼女の録音は必ず現代音楽を含めるリサイタル型になっている。あちらで高く評価されたのはストラヴィンスキーとモーツァルトの組み合わせであった。もう一枚のアルバムもモーツァルトとプーランクの組み合わせである。それなら腕に覚えのあるバリバリ弾くタイプなのか?と思うだろうが、そうでもなさそうである。モーツァルトは如何にも女流という感じのクールではあるが嫋やかな音色で聴かせる。技巧の限界もあって暖かい(緩い?)ボベスコと違って時々鋭さは見せるものの、ハーンのように常に冷たく玲瓏である意味取り付く島もない美音とは対極に立つタイプと思われる。しかし、ストラヴィンスキー、プーランクでは更にぐっと温度が下がってハーンに近くなる。今後もこんな二面性を維持したまま進むのか興味深い。ただ、ハーンほどの技巧を持つようには思えず、最終的にはボベスコの後継者のような地位に落ち着くのではないだろうか。

それにしても、美音と言っても男性と女性では全く質が異なる。男性のように弾く人もいないではないのだろうが、手の大きさ、体格、体力によるのだろうか。偉大な男性ヴァイオリニストのような大らかさを女性ヴァイオリニストから感じ取ることは稀である。その代り、きめ細やかでちょっと神経質か、嫋嫋としたタイプになる。ヌヴーとデュ・プレが破格なのはそのような性別の壁を乗り越えてしまっているところにあるのだろうか。

モーツァルト、ストラヴィンスキー ヴァイオリンとピアノのための作品集 A

モーツァルト、プーランク ヴァイオリン・ソナタ集 A

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ジャン・ロンドー

2018-12-27 21:42:30 | 音楽

ジャケットのケッタイな格好をした兄ちゃんを見て買う気が激減した人も少なくないだろう。実は私もその口である。しかし、試聴したら凄いのなんの。こりゃー弱冠10台から大器としてメジャーレーベル(Erato)と契約するのも当然だ。

この人の録音は既に複数出ているが、私が買ったのはバッハの編曲集。この人ならばどれも素晴らしいだろうが、これが安く売られていたのでとりあえず手に取った。この人はチェンバリストでありながらロックミュージシャンとコラボしたり、歌手の伴奏ピアノを弾いたりもするそうで、外見のまま如何にもフリーダムな感じだが、演奏もまさにそのイメージのままテンポを自在に揺らしたり異様な加速をしたりする。しかし、彼の格調の高い音は決して演奏を下品にすることを許さない。上品でありながら自由奔放。スコット・ロス、グールドみたいな稀有の才能なのかもしれない。まだ20台前半であり、今後がとても楽しみな人だ。スカルラッティのソナタ集、バッハの協奏曲集も近いうちに買ってみたい。

Bach - Imagine S

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コーリー・セロヴシェク

2018-12-27 20:33:49 | 音楽

コーリー・セロヴシェクはスイスのClavesレーベルに録音しているヴァイオリニスト。Clavesは海外ではそれほど廉価レーベルというイメージはないようだが、何故か日本ではやたらと安く売られている。以前取り上げたものの中ではアバドの協奏曲集がこのレーベルであった。ここはメインストリームとは言い難いちょっと変わったアーティストを取り上げるレーベルであるようだ。Signumも最近は単純な廉価レーベルではなく、ジェームズ・ローズのようなちょっと捻ったアーティストを取り上げるレーベルになってきており、中小レーベルではこういうやり方が流行しているようである。

この人の録音はベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集があちらの著名な賞を取ったとかでそこそこ話題になったのだろうか。2007年録音であるから今となっては新しいとは言い難い。Clavesレーベルは中小とはいえ、30年近い歴史を持つそうで日本ではあまり知られていない面白いアーティストの録音を大量に持っているようで今後の展開も楽しみである。中には大家の古い録音もあるようだが、ハイレゾ好きとしてはなるべく若い人の新しい録音を漁るのが筋であろう。2007年であれば最新とはいえなくても既にハイレゾ録音が広まりつつある時期であり、録音も期待していた。録音はまあ、及第点である。問題は演奏の方。サラサラと流れる流麗な演奏と言えなくもないのだが、なにせ曲はベートーヴェンである。ピリオド楽器を握っているならともかく、この薄味さっぱりには何とも食い足りなさが残った。1500円で全集が買えると思えばコスパはかなり良いのであるが・・・。

この時点でこのヴァイオリニストとは今後縁がなかろうと思っていたのだが、ヴュータン、ヴィエニャフスキの協奏曲の録音が出ていることに気づいた。この分野は録音されることが少なくなってきている。最近メジャーで録音している人がいるのであろうか?ヴァイオリニストと言うよりはハイレゾ新録でこれらの曲が聴きたくて購入。図らずも再び縁ができたというわけだ。この録音は2011年ということになっている。後ろ姿しか写っていないベートーヴェンのジャケと違ってジャケにちゃんとした写真が載っている。如何にも禿げそうだがなかなか初々しいイケメンである。

私にとってヴュータン、ヴィエニャフスキはハイフェッツとパールマンが基準となっていた。私の印象ではこれらの曲は技巧曲であった。それが・・・セロヴシェクの録音は何とも美しいのだ。これはR. カプソンに匹敵するレベルの美音家である。慌ててベートーヴェンも聴き直してみた。サラサラ流れてつまらないという印象は変わらなかったが音はよく聴いたら美しい。演奏傾向が気に入らなかったので音色に注意が行っていなかったのだ。ただ、ベートーヴェンのソナタは音色の美しさだけでは持たない曲であるという印象は変わらない。美音家のベートーヴェンはズカーマンを持っていてこちらは文句なしなのだが・・・。

セロヴシェクのベートーヴェンでがっかりした人は是非ヴュータンとヴィエニャフスキの録音を試聴して頂きたい。イメージが変わること請け合いである。オケも録音の悪さもあってとても荒っぽいハイフェッツ盤と全く異なる美しい演奏だ。指揮者はこれまたOndineのエネスコ以来再び縁のできたハヌゥ・リントゥである。

ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ全集 A

ヴュータン ヴァイオリン協奏曲第5番、ヴィエニャフスキ ヴァイオリン協奏曲第2番 S

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