Signumで冒険的な録音を敢行しているクラリネットの名手ブリス。今回はロック、ジャズ、クラシックとあらゆるジャンルを横断的に演奏するというカルダッチ四重奏団とのコラボ。演目はデヴィッド・ブルースという現代作曲家のゴム長靴(Gumboots)とブラームスのクラリネット五重奏曲。
このブルースのゴム長はどうやら中国かベトナムあたりが舞台であるのか、如何にも東洋っぽい旋律で始まる。最初は決して悪くない、と思った。だが、その期待は残酷なまでに裏切られる。緩やかなPart1以降は全部舞曲。しかも現代音楽風ガーガー、ヒーヒー、鋭くリズムを刻むピツィカートの嵐が延々と続く。耳障りな音のオンパレードの上にこの四重奏団、とにかく音が鋭くて私の愛するブリスのクラリネットを掻き消しまくる。これが許せない!現代音楽が好きな私でも耐えられない!腕が立てばいいってもんじゃないよ。
せめてブラームスで落ち着こうと思った期待も残酷に裏切られる。古典であろうがこの四重奏団の演奏姿勢は変わらない。とにかく速く鋭くやかましく常に前のめりの汚い大きな音。こんなせかせかしたブラームスは御免こうむる。肝心のブリスすら釣られて鋭く汚い音を出してしまう(何でも出来る人だからね)。まあ、そうじゃないとクラリネットが全然聴こえないわけだが。こんなに聴いてて辛いブラームスは初めてだ!クロノス四重奏団の現代音楽演奏が大好きというような人だけに推奨。この四重奏団はSignumで私の愛するショスタコーヴィチの四重奏曲を録音しているのだが、絶対に買うものかと心に誓った。本家でモーツァルトのクラリネット五重奏曲をブリスと録音済みだが、これまた買いたくない。速やかにコラボ解消して別の四重奏団と再録音して欲しい。私の好みはやはり保守的なのだと思い知らされた一枚となった。
デビッド・ブルース ゴム長靴、ブラームス クラリネット五重奏曲 A