Signumばかり書くのも何なのでClavesレーベルも取り上げよう。コリンズはもう若手とは言いかねる年齢に達したアイルランド出身のピアニスト。ただし、これを録音した当時(2006、2009年)は若手と言って差し支えない年齢だったようだ。今ではメジャーレーベルに活躍の軸足を移しつつある。なお、なかなかのイケメンであるが、男性である私にはどうでもいい(笑)。
この録音を買った理由は試聴した時にとても暖かい音色と感じたからだった。ハイレゾ録音はどうしてもクールなイメージになる。これはハイレゾの性質上仕方のない部分もあると思う。そのクールになりやすいハイレゾ録音で暖かく聴こえるということは実演も暖かいのではないか、との予測が自分の中で立てられたからでもある。ホロヴィッツの系譜ではなく、ハスキルやクラウスを思わせる暖かく嫋やかな音色。これを聴いていて私もしみじみとオールド・ファンになったのだなぁと自覚させられた。シューマンやシューベルトのピアノ曲には暖かい音色がよく似合う。ハイレゾ録音でもアナログ的な表現は可能なのだ。最近のクールなピアノ演奏に辟易してる人にはオススメ。舞曲では腕の立つところもちゃんと披露してくれる。海外評も概ね暖かい音色と褒めているようだ。
この録音はシューマンのピアノ独奏全集を目指した録音であるが、残念ながらコリンズ単独の企画ではなく、その他の曲は他のピアニストが担当している。勿体無いことだ。どれもCDに換算すれば2枚分に相当し、コスパはとても高い。
シューマン Complete Works Vol.1 A(幻想小曲集、フモレスケ、子供の情景、森の情景他)
シューマン Complete Works Vol.3 A(アベッグ変奏曲、交響的練習曲、色とりどりの小品他)
録音がAなのは演奏に合わせたぼかし気味の録音が解像度が高いとは言えないため。解像度を高くしたらクールになるだろうから録音技師のこの選択は間違ってはいないと思う。