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酒と音楽とPC

血は酒で出来ている(某声優談)。他の趣味はPC組み立てるのと音楽聴くのしかない。

フィンギン・コリンズのシューマン

2019-06-06 15:56:16 | 音楽

Signumばかり書くのも何なのでClavesレーベルも取り上げよう。コリンズはもう若手とは言いかねる年齢に達したアイルランド出身のピアニスト。ただし、これを録音した当時(2006、2009年)は若手と言って差し支えない年齢だったようだ。今ではメジャーレーベルに活躍の軸足を移しつつある。なお、なかなかのイケメンであるが、男性である私にはどうでもいい(笑)

この録音を買った理由は試聴した時にとても暖かい音色と感じたからだった。ハイレゾ録音はどうしてもクールなイメージになる。これはハイレゾの性質上仕方のない部分もあると思う。そのクールになりやすいハイレゾ録音で暖かく聴こえるということは実演も暖かいのではないか、との予測が自分の中で立てられたからでもある。ホロヴィッツの系譜ではなく、ハスキルやクラウスを思わせる暖かく嫋やかな音色。これを聴いていて私もしみじみとオールド・ファンになったのだなぁと自覚させられた。シューマンやシューベルトのピアノ曲には暖かい音色がよく似合う。ハイレゾ録音でもアナログ的な表現は可能なのだ。最近のクールなピアノ演奏に辟易してる人にはオススメ。舞曲では腕の立つところもちゃんと披露してくれる。海外評も概ね暖かい音色と褒めているようだ。

この録音はシューマンのピアノ独奏全集を目指した録音であるが、残念ながらコリンズ単独の企画ではなく、その他の曲は他のピアニストが担当している。勿体無いことだ。どれもCDに換算すれば2枚分に相当し、コスパはとても高い。

シューマン Complete Works Vol.1 A(幻想小曲集、フモレスケ、子供の情景、森の情景他)

シューマン Complete Works Vol.3 A(アベッグ変奏曲、交響的練習曲、色とりどりの小品他)

録音がAなのは演奏に合わせたぼかし気味の録音が解像度が高いとは言えないため。解像度を高くしたらクールになるだろうから録音技師のこの選択は間違ってはいないと思う。

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エマニュエル・デスパのサン=サーンスとフランク

2019-06-06 15:27:12 | 音楽

これもSignumレーベル。デスパは30歳ぐらいのフランスのピアニスト。サン=サーンスのピアノ協奏曲第2番が珍しかったので購入。サン=サーンスのピアノ協奏曲は5曲もあるのに録音する人が少ないが、チャイコフスキーの2番やメンデルスゾーンのピアノ協奏曲が録音される時代なのだからもっと録音が増えてもいいと思う。プーランクもサン=サーンスもそんなに悪い曲じゃないのにピアノ協奏曲が録音されるのは稀だ。それに対してフランクの交響的変奏曲は最近ではよく録音される。古くはカサドシュやボレットの録音があった。

デスパは音色も美しく、強弱を上手く使ってドラマティックな演出もうまい。派手な演出を好まない傾向がある若手ピアニストの中では異色かも知れない。ただし、音楽の手触りは温かい方向ではなくシャープでクール。サン=サーンスのピアノ協奏曲がとても魅力的に聴こえてきた。オーケストラはオルフェウス・シンフォニアという新進の団体のようだ。オルフェウスを名乗る団体は新旧合わせて多すぎて覚えきれない。一応オルフェウス財団がバックに付いているとかで勝手にオルフェウスを名乗っているわけではないそうだ。なお、録音はSignumの中でもかなり優秀だ。

サン=サーンスピアノ協奏曲第2番、ゴス ピアノ協奏曲、フランク交響的変奏曲 S

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ジェームズ・ローズ Live in Brighton、Five

2019-02-11 14:26:37 | 音楽

LSOレーベルに続いてRCOレーベルも国内で取り扱われなくなった。BR-Klassiksはまだ残っているが時間の問題なのかも知れない。新顔としてCSOレーベルが発売されているが、これもいつまで持つか。確かにオーケストラ自主制作レーベルはCBSやユニヴァーサル、ワーナーと比較すると売上は小さかったのだろう。しかし、音楽マニアというものは様々なアーティスト、演奏に手を出すのが性のようなもの。選択肢が狭まればその店からは離れていくことになる。リアルの世界でも品揃えの良くない店に行こうとは思わない。そもそも国内販売では海外音源の価格設定が大幅に割高なのだから売上が伸びないのは音源に魅力がないからではない。海外と競合しない国内販売に特化するというならそれはそれでいい。そうなったら海外の会社が日本向けにより力を入れてくれるであろうから。中途半端に国内販売が存在してる状態だと海外の店も積極的に日本市場に参入しようとは思わないだろう。

そんな中で海外価格と競合可能な値段で売られているのがSignumとClavesの両レーベルである。アーティストの知名度がメジャーとは比較にならないから廉価という方向性を取っているのであろうが、廉価というだけでは低品質のイメージがついてしまうのだろう。最初は初期のNaxos路線だったSignumも次第に方向性が変わってきた。将来メジャーに行く人の苗床、メジャー落ちした人の受け皿、有名演奏家が選曲の自由を求めてメジャーと掛け持ちという意味だけではなく、知名度は低いがライヴでは高い人気を誇る人、一般受けはしない癖のある演奏をする人、通常のルートに乗らずに演奏家になった人等メジャーとは縁がなさそうな人をチョイスする傾向になってきた。このローズは最後のパターンに当たる。若い頃に精神的に問題があってまともな音楽教育を受けられなかったそうだ。このパターンはロシアの演奏家に多かったわけ(マイスキー、ウゴルスキ等)だが、あれはそうしなければ国家芸術家として生きなければならないという厳しいソ連の環境に問題があったわけで本当に精神的に問題があったのか怪しいものである。

このライブ盤ではローズが演奏中にかなりハイになっているのがよく分かる。格好もロックミュージシャンのそれだが、とにかく汚い口調で前口上を述べるのがライヴの売りであるらしい。ただし、音は暖かく澄み切って綺麗であり、ゆったりしたテンポも辞さず口調とのギャップが激しい。音色が冷たくてクリスタル、速くてインテンポという通常のルートを辿った若手演奏家に有りがちなパターンに嵌っていないピアニストとして存在価値がある人のようだ。50年代、60年代のアナログ録音によるピアノ演奏が好きという人には受けが良いかも知れない。バッハの演奏はニコラーエワあたりを彷彿とさせる。ショパンを嫋々と弾き、ベートーヴェンも鋭いというよりは落ち着いている。ホフマン、ラフマニノフ、ボレット、チェルカスキーがよく弾いたモシュコフスキーの曲も取り上げており、腕が立たないというわけではなく、保守的な曲では澄んだ音を活かすため敢えてゆったりしたテンポをとる方針のようだ。

Live in Brigthton A

Five A

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R. カプソンのバルトーク ヴァイオリン協奏曲集

2018-12-28 13:14:00 | 音楽

カプソンとテツラフ(Ondineの新盤)で迷ったのだが、とりあえず安売りされていたカプソンを選択。以前はバルトークのヴァイオリン協奏曲は早くから名作として評価されていた2番のみが録音されるのが常であったが、現在では後に2つの肖像として改作された若書きの1番と併録されることが多い。メンデルスゾーンも若書きのニ長調を1番として録音し、今までは単純にメン・コンとして知られていたホ短調を2番として録音することが増えてきている。ハイドン、モーツァルトほどではないが、作品番号の変更等は今後もなされていくのであろう。カプソンもテツラフも新しいバルトークでは1番と2番を併録してヴァイオリン協奏曲集という名目になっている。

さて、このカプソンのバルトークであるが、バルトークらしからぬ美音の洪水。ある程度予想はしていたものの、バルトークをメンデルスゾーンやチャイコフスキー同様の甘美な作品に置き換えてしまう。これをやられると大概腹が立つことが多い(パールマン、ズカーマン等)のであるが、ここまで美音で徹底されると「参りました」になってしまう。何という上質な美音であろうか。バルトークの本来の姿とは異なるとは思うものの、大衆の支持は絶対にこちらにあるであろう。パールマン、ズカーマンは無意識的に、意図せずこうなっているイメージなのだが、カプソンはクレーメル同様に意図的に、戦略的にやっている姿が透けて見える。お口直しに次はテツラフで急速冷凍してもらうとしよう(笑)。

バルトーク ヴァイオリン協奏曲集 S

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クリップスのベートーヴェン交響曲全集

2018-12-28 12:20:19 | 音楽

貴重なエベレスト原盤でかっては幻の名盤だったというもの。エベレストはマーキュリー同様、当時最高の録音テープを使った優秀録音が売りのレーベルであった。何故か日本では極端に安く廉価盤としてハイレゾ・リマスターで発売されている。以前に取り上げた若き日のボレットの録音もこのレーベルで廉価盤になっていたもの。

貴重なものである上に安いとあってバンバン売れた。ハイレゾの全集で上下巻合わせて1800円ポッキリとあっては売れるのも当然・・・なのか。よく考えるとバレンボイムの全集も同じぐらいの値段(2000円程度)で売られていることが多い。あちらもハイレゾというにはちょっと古い録音ではあるが、1990年代のデジタル録音である。

オーケストラで聴くハイレゾクラシックという如何にも初心者向けの説明とダサいジャケットはご愛嬌であるが、内容は極めてまっとうなもの。モーツァルトではピリオド・アプローチを意識したフレージング、小編成を採用する先進的な面もあったクリップスであるが、このベートーヴェンはかなり保守的で穏当な解釈。クリップスにはウィーンの重鎮で保守派というイメージを持つ人が多いであろうが、その認識と大きくはずれない演奏が展開されている。安心して聴けるとは言えるが新しい発見はなかった。

これで録音がハイレゾと呼ぶに相応しいものであれば一家に一枚というリファレンスにならなくもなかったのだが、残念ながらある程度劣化していることを覚悟していなければならない。とにかくこのテープは劇薬を用いていて扱いが難しいものであったらしく、リマスターも困難を極めたそうだ。録音当時(1960年前後)はとても素晴らしい録音であったのかもしれないが、長期間の放置で劣化は免れなかったようだ。ただ、膨よかで元々の素性の良さは感じ取れる。EMIのフレモー録音よりずっと好ましい。ハイレゾとしてはオススメ出来るレベルではないが。ボレットではがっかりさせられたエベレスト原盤のハイレゾ・リマスター盤だが、これは値段を考えれば買って損するようなものではない。

ベートーヴェン交響曲全集 クリップス / ロンドン響 B-A

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