今年9月の各国による米国債保有残高が発表された。
おなじみの上位3カ国(中・日・英)は、保有をやや増やし、香港や
スイス、ロシア、フランス、トルコは若干売却した。
保有残高4位のブラジルは、100億ドル買い増した。
またカナダも、130億ドル強ほど増加させた。
一方で大幅に売却させた国がある。
ベネルクス3ヶ国の一角、ベルギーだ。
前月8月まで保有していた米国債340億ドルを、一気に半分以下
の162億ドルまで減らしたのである。
9月はちょうどベルギーの財政赤字が膨れ上がり、世界中で注目
された月だ。
一時はPIIGSに次ぐ危険国とまで揶揄された。
ベルギーでは今年中に米自動車メーカーのGMが、同国アントワ
ープの工場を完全撤退することを決めていたことから、市場では
米国債の保有意味が薄れてしまったのではないか・・・ もしくは
報復措置として売却したのではないか・・・ という噂もある。
しかし同国の財政赤字がこの時期、急激に膨らんだ事実もあるこ
とから、その穴埋めとして利用したという理由もあるだろう。
今回は同じベネルクスのオランダも、20億ドル売却している。
はっきりしていることは、上位国がそう簡単に国債の売却なんて
できないという現実がある。
日銀による日本国債の保有や、ECBによるギリシャ国債の購入、
FRBの米国債増加など. . . 一旦購入したらなかなか売却なんて
できるはずがないのである。
ある意味で不可能に近いといっていいだろう。
売却したら一気に価格が下落し、自己の保有だけでなく世界市場
に大きな影響をもたらすからだ。
当たり前のことである。
日本は急激な円高を避けるため、米国債をやすやすと手放せない。
中国は円高を望んでいるが、米国市場の重要さを理解しているの
で、こちらも簡単に売却できない。
もちろん政治的な意図も大きいし、維持したいという魂胆がある。
一体、将来は紙屑と化する米国債をどこまで保有できるのか?
米国債自体の海外依存も約5割と、決して小さくない。
しばらくはこの動向について目が離せない月が続くだろう。
★シティアライアンス 代表兼 「ヒルザー・ドットコム」 運営者