ウィークエンド・カフェ・デ・サイエンス (WEcafe)

国立科学博物館認定サイエンスコミュニケータ×武田計測先端知財団によるサイエンスカフェWEcafe公式ブログ

【書評】『理系のための就活ガイド―業界研究・エントリーシート・面接対策』

2017年01月07日 | 書評

2017年 今年もWEcafeをどうぞよろしくお願いいたします。

 

今年初の投稿は、本のご紹介。

理系の大学生・大学院生におすすめの一冊、

『理系のための就活ガイド』についてです!


大学院生をしている私の周りでは、
理系で就職するには、大学院の修士課程までは行っておくべき・・・という話をよく聞きます。

でも、実際のところはどうなのでしょう?
そして、理系での就職には、どういう職種があるのでしょう?

そういった全体像の把握から、本書は始まります。
 

  


著者は、理系出身で、
日刊工業新聞社で長年 記者をされていた、山本佳世子さん

本の中では、山本さんご自身の体験エピソードに加えて、
複数の大学・企業の関係者の声も紹介されているので、
色々な視点から 理系の就活について見ることができます。


就活のノウハウにとどまらず、幅広い情報が盛り込まれているので、

進学か就職かを迷っている人や、就活はまだ先という人にも参考になる部分が多い

と感じました。

 

特に印象にのこったのは、

理系の研究を進めるためのスキルが、(理系の職に限らず)就職後にも活かされる

という点です。

研究では、課題を見つけて、仮説をたて、実験や理論をもちいて検証していきます。
ここでの論理性や課題を発見し解決する力は、
社会人の能力としても重要とのことでした。

 


大学院進学か就職か、という 多くの人のお悩みポイントでは、

自分が目指す業界や職種では、学生のどういう力が重視されるのか

をふまえて考えてみるのもひとつ。
仕事によって、理系の専門性が大事なこともあれば、
理系の力だけでなく 企画力など他の力も必要とされることも…。

 

そういった企業側の視点や、社会の動向を知るのに役立ちそうなのが、
第3章で紹介されている新聞の活用術 
そして後半の第4章から第6章では、ES作成や面接での注意点まで、
実際の就活で役立つ、具体的な情報がたくさん載っています

 
たとえば、履歴書に研究紹介を書く場合

理系学生にとって、研究の概要やそのおもしろさについて
うまく文章で伝えるのはなかなか難しいときも...
そこで山本さんが提案しているのは、
図表と数字をちょっと工夫して取り入れる こと。
理系の弱みを、強みでカバーしてしまう というわけです

 

その他、学会主催の合同説明会や、大学院生が参加するインターンシップなど、
広がりつつある新しい取り組みについての情報も知ることができました。


   


全体は大きく6章に分けられていて、
さらに小タイトルごとに短くまとめられているので、
気になるポイントだけ読むのにも向いています。

 

理系の就活について覗いてみたいと思ったら、
一度手に取ってみてはいかがでしょうか。

 


記事執筆 : 江崎 和音 (えざき かずね)

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今回ご紹介した本は・・・

『理系のための就活ガイド―業界研究・エントリーシート・面接対策』

著者:山本佳世子(日刊工業新聞社 論説委員兼編集局科学技術部編集委員)

出版社:丸善出版

発行:2014年11月

https://www.amazon.co.jp/dp/4621088580


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【書評】『図解 生き物が見ている世界』

2015年08月19日 | 書評

「イヌの目は、色が見えない」

「ヘビは、赤外線が見える」

などの、生物トリビアをどこかで聞いたことありませんか??

 

実際、イヌが見ている世界とは、どんな世界なのでしょうか

そんな、ふとした疑問をビジュアル化した本が発売されたので、ご紹介いたします

 

 『図解 生き物が見ている世界』

ゾウやライオンなどの野生動物、犬猫などのペット、鳥、昆虫、は虫類と全34種の生き物が「見ている世界」をビジュアル化して紹介されています。

 

この本の1番のポイントは、著者です。

普通、科学の本というと専門家が一般の人にも分かりやすく、科学現象について説明しているものですが、この本は違います。

 

著者は、なんとお笑い芸人の田中直樹さん(ココリコ

 

本の冒頭では、動物好きの田中さんが、愛犬の見ている世界を知りたくて、調べ始めたことがこの本の出版へつながったことが紹介されています

田中さんは、科学を題材にした番組に出演されていて、仕事で出会う研究者の方々と直接話をするうちに、どんどん科学の世界へ惹かれていったそうです。

 

そんな田中さんの目線で作られた本なので、

まるでサイエンスカフェ(※)に参加した直後の友人の楽しい感想を聞くような感じで読むことができます

(※WEcafeで開催している研究者とお話できるトークイベント)

 

科学の面白さに触れたあと、さらに自分で色々な考えを巡らせて、科学の世界へ一歩踏み込んだ形が、この本なのではないでしょうか

 

巻末では、著者の田中さんと共著・監修の長沼博士(広島大学准教授)の対談が掲載されています。

その中でも、田中さんは、動物たちの見ている世界について、面白い想像をされています

(パンダの視力で人間社会を生きていけるだろうか?…など)

 

また、この本は、科学的事実に忠実に書かれていますが、将来、研究が進むとこの事実がひっくり返っているかもしれないそうです。

そんな科学のあやふやな部分にも率直に触れたコメントが面白かったです。

 

専門家でなくても科学の世界を楽しめる、そんなことを教えてくれる1冊をご紹介しました

私たちも科学的なものの見方や考え方を楽しく発展させていけたら良いですね

 

 

絵が多い本なので、小さな子どもでも楽しめる仕様になっていると思います。

夏休みの間に読んでみてはいかがでしょうか?

 

記事執筆 : 古垣内 彩(ふるがいち あや)

 

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今回ご紹介した本は・・・

ココリコ田中×長沼毅presents 図解 生き物が見ている世界

著者:ココリコ 田中直樹

共著・監修:長沼毅

出版社:学研

発行:2015年8月

https://shop.gakken.co.jp/shop/order/k_ok/bookdisp.asp?code=1340631100

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【書評】動物たちの箱船~動物園と種の保存~

2014年04月03日 | 書評

最後に動物園にでかけたのは、いつごろでしょうか。
月に1回は行ってるよ!という動物園ファンの方もいれば、小学校の遠足で行ったきりという方もいらっしゃると思います。
大人になると、なかなか動物園に行く機会が無いですよね。
そう考えると、一般的に、動物園は子供や家族連れのためのレジャー施設というイメージが強いかもしれません。

今回ご紹介するのは、動物園の、展示だけではない新しい役割について書かれた本です。
題名は、「動物たちの箱船-動物園と種の保存-(原題: LAST ANIMALS AT THE ZOO)」。
著者のコリン・タッジは、動物学者であり、一般向けの本も多く書いているサイエンスライターです。動物園の役割は、すみかを失い、数を減らしている野生動物を後世に残すことだとして、動物園における「種の保存」の取り組みがわかりやすく紹介されていました。


動物園が種の保存のために取り組んでいることの中で、「そういうことだったのか!」と思ったことを2つ紹介します。


ときどき、「○○動物園から○○動物園へゾウがお引っ越し」というニュースを聞くことはありませんか?
コリン・ダッジは、「動物たちは、動物園間で必要に応じて引っ越しをすべきだ」と言います。
といっても、動物園間の友好を深めろ、というわけではありません。
動物園は、絶滅の危機に瀕している生き物を後世に残すため、飼育下での繁殖に取り組んでいます。
しかし、一つの動物園の中で繁殖させて世代を重ねていくと、飼育している動物たちの間で遺伝情報がどんどん似てきます。
そうなると、同じ病気にかかり易くなり、全滅の危険性が高まるなど、いろいろと悪い影響が出てきてしまうのです。
そこで、他の動物園から遺伝情報が似ていない動物に来てもらい、遺伝的な多様性をできるだけ保つ取り組みが「動物のお引っ越し」という訳なのです。


もう一つは、展示の方法についてです。
近年、飼育環境を実際の生息環境に近づけたり、動物の行動を引き出すような道具を設置したりしている展示が増えています。
日本では旭山動物園の取り組みで有名になりましたよね。
著者曰く、このような取り組みは、「動物をより魅力的に見せるだけでなく、種の保存の面でも重要である」とのこと。
動物を後世に残す、といういうことには、動物が本来持っている習性や行動の多様性の保存も含まれる。
だから、飼育環境や行動も自然の状態に近づけておくべきだ――というのです。
このことは、WEcafe vol.15,16「あなたの知らない動物園」でも、話題に登場していました!


この本の中では、動物園で生き物を飼育する最終的な目的は、本来の生息地が再生したとき、野生に戻すことであると書かれています。
実際、アラビアオリックスやゴールデンライオンタマリンなど、野生の個体が絶滅した後、動物園で飼育されていた個体を野生に戻すことに成功した例があります。
しかし、コリン・タッジは地球環境が完全に生き物が暮らしやすい状態に戻るまでには、100年、200年、またはそれ以上かかるだろうといいます。
これから動物園で何世代にもわたって暮らした動物たちの、遺伝的な多様性や本来の習性が失われないような飼育・展示の工夫に、なるほど~と納得しました。


手軽によむにはボリュームが多く、一部専門的な知識が必要なところもありますが、普段何気なく入ってくる「◯◯の赤ちゃんが生まれました」や「動物のお引っ越し」というニュースも、この本を読むと少し違って聞こえることうけあいです。
また、これからの動物園について著者の見解も書かれているので、将来動物園で働きたいと思っている方にもお勧めの本です!


(WEcafeスタッフ 宮崎)

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【書評】「サボり上手な動物たち-海の中から新発見」

2013年09月20日 | 書評

私たち人間が直接目で観察できる動物たちの姿は、彼らの生活の一部だけ。まして、海の中に棲む動物となると、水中での様子を観察するのは、容易なことではありません。本書では、そうした水生生物に記録計を取り付け、動物自身に行動を記録させる「バイオロギング」という研究手法が紹介されています。

             

動物たちに記録計をつけると、どこまで速く泳げるのか?どこまで深く潜れるのか?といった最大記録が気になってしまいますよね。誰だって「エンペラーペンギンは最大564 mの潜水記録がある。」と、言われると、じぇじぇっと驚いてしまいます。

ところが、研究者は最大記録に捉われてばかりではいけないそうです。普段どの程度の深さ、速さで潜っているのかを知ることで、その動物の日常を知ることが出来るのです。確かに、陸上の動物だって常に全力疾走はしていないですよね。バイオロギングによって動物たちが非常に効率よくエネルギーを使って行動している様子が分かってきました。彼らはとても上手にサボっていたのです。

           

 本書は研究者ご自身によって書かれているので、長年行われてきた研究を体感することができます。イキイキと紹介される様々なエピソードは、まるで、著者が友人に楽しく語りかけるかのようです。

特に研究者の視点から記録計のデータを読み解くところは印象的でした。私たちはついつい人間の常識を動物たちの行動にも当てはめてしまいがちですが、それが動物たちにとって常識とは限らないのですよね。研究者の方の視点を知る、というのはとても刺激的です。

             

技術の発達によってより詳細な調査が可能となっていくバイオロギング。記録計から得られたデータを研究者はどのように選別して、動物たちの行動を解き明かすのか?読んだらきっと本書について誰かと話したくなりますよ。私もいつか本書から飛び出したようなサイエンスカフェを開催してみたいです☆

 

記事執筆 : 古垣内 彩

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今回ご紹介した本は・・・

書名:サボり上手な動物たちー海の中から新発見

著者:佐藤克文さん(東京大学大気海洋研究所准教授)

    森阪匡通さん(京都大学野生動物研究センター特定助教)

出版社:岩波書店

定価:本体1500円(税別)

発行:2013年2月

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【書評】「わかりあえないことから ― コミュニケーション能力とは何か」

2013年07月07日 | 書評

コミュニケーション能力とは何か、そして、どのようなコミュニケーションであれば「良い」と言えるのか。平田オリザさんの新書「わかりあえないことから ― コミュニケーション能力とは何か」は、サイエンスコミュニケータを名乗っている身としてとても気になるテーマであり、最初は、読み始めるのがちょっと怖いくらいでした。

            

本書で平田さんは、一貫して「わかりあえないところから出発するコミュニケーションの必要性」について論じています。これまでの日本は「わかりあう文化・察しあう文化」でしたが、異なる価値観と隣り合わせになる機会が増えるこれからは、「説明しあう文化」と「対話の基礎体力」が必要だといいます。私にとっては、初めて自覚することばかりでした。

「わかりあえない」ことを前提に、物怖じせず、互いにわかりあえる部分を見つけ 出していく営み・・・考えてみれば、私たちサイエンスコミュニケータがサイエンスカフェの司会を務める際にも、これは欠かせない能力だと気づきました。

            

サイエンスカフェという科学者と参加者が対等な立場でおしゃべりする場には、多様な価値観の市民が集まります。科学者と参加者との会話をファシリテートする私たちにとって、打ち解けた雰囲気を作ることは簡単でも、他者の意見に対して異論や疑問をもったときにそれを口に出すのはなかなか難しいもの。自主性をもって意見することが、ある意味、輪を乱すように感じられるからでしょう。

それでも平田さんは、「心からわかりあえないんだよ、初めからは」「説明しあいながら、粘り強くわかりあえる部分を見つけ出していこう」と説きます。個人の考えがバラバラになっていくなかで、今後さらに、「対話を通じて、どうにかしてうまくやっていく能力」が求められるからです。

協調性から社交性へ。わかりあえないながらも、少しでも共有でき る部分を見つけたときの喜び。私も、これこそがコミュニケーションの難しさと楽しさだと感じます。周囲と意見が食い違ってもいい、浮いていてもいい。粘り 強く、説明しあっていこう・・・。

            

読み終える頃には、平田さんのコミュニケーション論に納得するだけでなく、これから自分たちがコミュニケーションの場を提供していくことに対する「使命感」 と「ワクワク感」を新たにできました。素敵だなぁ、と感じるたびにページの角を折っていたら、読み終える頃には、買ったときよりもだいぶ厚い本になってしまいました。

「伝わらない」ことで悔しい想いをしたことがある人ほど、きっと、平田さんに背中を押してもらえるはずです。

 

記事執筆: 蓑田 裕美

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今回ご紹介した本は・・・

書名: わかりあえないことから ── コミュニケーション能力とは何か

著者: 平田オリザ(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授)

出版社: 講談社(講談社現代新書)

定価: 本体740円(税別)

発行: 2012年10月

http://www.amazon.co.jp/dp/4062881772

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