何事も過ぎたるは及ばざるが如しということだろうか。ドル円が160円をつけた途端、財務省が為替介入を実施した(と思われる)。日米の金利差を考慮してもなお、投機筋と強弁していた割には臆病なものだ。
国内市場が期待できない小国であれば、自国の通貨安は基本的に歓迎のはずで、自民党政権が望んでいたことだとばかり思っていた。この数十年、円高になると為替介入というパターンだったからだ。
もちろん、昨年の為替介入は急激な円安を防止するためということだったが、強い自国通貨を目指すようになったとは思えない。
何を右往左往しているのだろう。例えば、明日のドル円が200円となったとして、輸入物価が急上昇しても貿易黒字で(一部の国民は)優雅な生活を続けるというのが政府の目論見だったはずだ(円の価値が落ちて高インフレになると、償還する国債が実質的に目減りするという効果もあるし、肥大化した日銀のバランスシートが評価損を伴いながらも改善する可能性すらある)。
かなりひねくれた見解を書いていると判っているが、黒田前日銀総裁が進めていた政策の効果が顕現したということだ。どのような形であれ、物価さえ上がれば(≒通貨価値が下落すれば)良いということだった。
理由はともあれ、持続的な物価上昇が見込めることは日銀にとって喜ばしいことだ。ようやく金利を上げられるわけだから。
そうそう、日銀は通貨の番人であって、賃金の番人ではないので、指標として実質賃金の増減率を見ることはあっても、実質賃金を何とかするのは企業経営者であることを忘れずに。
記者会見で円安で海外旅行ができなくなったと日銀総裁に苦情を突きつけるのは筋違いだと思う。