今日の朝日新聞のトップはファーストリテーリングの世界統一賃金という内容だった。記事を読んで、まず思ったのが、ユニクロの海外店舗の賃金は特に日本の賃金水準を考慮していなかったのか?ということだ。どの国でも、同じ評価であれば同様の生活水準を維持するというのは、少なくとも海外拠点を持つ企業なら当然考慮される内容だと思うのだが……。
それはさておき、ファーストリテーリングは日本を離れることを前提としているようだ。会長のインタビューでも、日本に拠点を置くことの不利益を述べているし、市場としての魅力がなければ日本に拠点をおく必要はなさそうだ。確かに、ファストファッションと呼ばれる分野の企業は同様の人事政策をとっているのだろう(確証なし)。
情報技術の進歩で、本社機能がどこにあるかは大した意味を持たない。それこそ、航空母艦並みの容積を持つ船舶を利用してもいい位だ。
嫌味な話はともかく、この話が示唆することは製造業の世界最適生産から進んで、小売業では世界最適販売という方向に行くだろうということだ。市場規模や潜在成長力や販売のために必要なコストを比較して、最も利益を見込めるところに出店し、一定の利益が出ないところからは撤退するということだ。
企業が利益を得るための道具であると割り切れば、サービス業も国際競争になる。低コストで高い利益(付加価値)を得ることが出来る場所で、高い利益を得られる間だけ事業を行うことは理にかなっている。小売業は製造業に比べて設備や人員への投資が少ないから、出入りは簡単だろう。
問題は、小売業では低コストで高い利益を単一の市場で得ることは、長期的に成立しないことだ。つまり、低コストは人件費が低いことを示すが、高い利益は物価が高いこと(=人件費が高い)に連動するからだ。短期的には購買意欲を高めることで薄利多売で進むことができるが、競争相手の進出を含め、市場が成熟してくると低廉な人件費で雇用できる労働力では売り上げを維持できなくなる。結局、一種の焼き畑農業であり、次々と新しい市場に出て行くことを宿命付けられる。言ってみれば、究極の自転車操業だ。
あまり好きになれない予想だが、資本の論理では世界最適販売へ向かうだろう。そのとき、資本ほど自由に移動できない労働力は捨てられていくのだろう。まさにブラックな世界だ。