フィールドワーク通信

広島を拠点にフィールドワーク。カンボジア、インドネシア、市民まちづくり

プノンペン市役所都市局へ20050824

2006-01-24 16:43:43 | カンボジア通信
 パニンさんの尽力によりプノンペン市役所のBUA都市局への訪問が実現した。そこでは市役所が行ったコロニアル建築の調査報告書を見せていただきながら、議論を行った。フランス語文献なので、きちんと把握できたわけではないが、ドンペン地区全体を対象に、コロニアル建築の分布状況、保存状態、機能別の分布などが調査されている。現在プノンペンは観光地としてはまったく認識されていないが、アンコールワットのあるシェムリアップだけでなく、プノンペンを観光地として外貨を落としていくには、コロニアル建築の活用が重要なポイントとなる。現在どの程度コロニアル建築がプノンペンに残っていくのか、それがどういうふうに活用されていくのか、活用をバックアップするためにはどういった制度が必要なのかが我々の関心である。土地ならびに建物を行政が買い取って保存するというのがわかりやすい保存方策であるが、財政的にそれは無理がある。日本でいうところの登録文化財制度のようなものが整備される必要があると考えられるし、そういった事例の紹介も行ったが、なかなかむずかしい。目録の作成はできるし、公共建築については政策的に積極的な保存を推進していくことはできるかもしれない。しかし民間の建築については、どこまで規制が可能なのかは、その国の制度的・文化的背景による。実際に報告書内で活用提案がされていたコロニアル建築は、BUAの知らない間に壊されていたという。建築基準法もなく、よって確認申請のように事前に建築行為の情報を入手する仕組みもないこの国では、制度の中で保存を計っていこうとすると、建築に関する制度そのものをはじめから組み立てていかなくてはならない。

 ドンペン地区のコロニアル建築の悉皆調査が行われたその報告書をどうしても入手したかったが、市役所では購入・貸し出しはできないという。一般の書店にあるとのことで、フランス文化センター内の書店、中央郵便局の向かいのメコンリブリスに行ったが、見つけることはできなかった。フランス文化センターでは、3~4週間後に入荷すると言われたが、市役所の話では、部数は限られているとのことだったので、入荷を待つという判断は危ういと思い、コピーの入手に動くことにした。プノンペン芸術大学建築学科の図書館にあるという情報を得て、芸大へ向かった。果たしてそこにはあることはあったが貸し出しは無理だという。カラー図版をデジカメ撮影するとともに、スキャナーでCDに落としてもらうことにし、また全体のコピーをお願いした。なんとか入手が実現した。貴重な資料である。98年の発刊ということで、既に情報が古くなっているところもあり、現在改訂版を作成中とのことであったが、少なくとも現在ある情報をまとめることでプノンペンにおけるコロニアル建築の現状を整理することができる。

 市役所内にはUNハビタットの事務所もあった。昼前にアポなしで訪問したが、所長は不在であった。3時に再び訪れた。驚いたことに、所長は、フランス人であった。ドンペン地区のスラム関連のプロジェクトのデータをいただいた。4時には理科大チームが来て、プレゼンを行うとのことだった。前述したコロニアル建築の文献入手を優先して、残念ながら退出した。

 今日、路地形態の調査を新たに立ち上げた。街区と路地との関係を明らかにすることが目的である。これまで3街区にしては、様々な視点から調査を行ってきたが、ドンペン中心地区の街区と路地の関係に絞って、全体的な傾向を把握しようとするものである。+型、T字型、袋小路型、I字型などの路地型が導き出されるとともに、街区形態との関係も明らかになるのではないか。

 夜はティーさんのお別れ会。クメールキッチンに行った。最初にティーさんと会った場所である。10日の夜のことである。聞くところによると、クメールキッチンは、クメール料理レストランの中では、ハイレベルのレストランとのこと。初日は、たいしたものも食べられなかったので、今度はきちんとクメール料理を堪能しようとクメールキッチンにした。日本料理という案もあったが、ティーさんのお別れ会に日本料理というのもなんだなぁと思ったからである。

 先日のコンポンチャムに対する協力要請を受けて、コンポンチャムの学校建設についていくつかの見通しを話し合った。これまで我々は版築工法による学校建設を提案していたが、都市部はすでに版築が適応する状況にないのではないかと考えるにいたった。すでに学校数については遠隔地に比べるとそれなりに十分な数を確保するにいたっている。いわゆる質を落としても数を増やすことに重点を置く状況にはない。ある一定の質を確保しながら、建設することが求められている。

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