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松永和紀blog

科学情報の提供、時々私事

その表示、正しい?

2008-10-10 14:21:59 | Weblog
なんでも「偽装」にしてしまう新聞に書いた質問の答えを発表します!

Q.日本人乗組員の乗った中国船籍の船がインド洋で漁獲し、神奈川県の三崎港に水揚げしたマグロの原産地表示はどうなりますか? 次の4つから選びなさい。

(1)マグロ(日本産)
(2)マグロ(インド洋)
(3)マグロ(中国産)
(4)三崎のマグロ

A.マグロ(中国産)

 簡単でしたね。水産物の原産地表示は船籍主義。中国船籍の船が漁獲しているので、中国産ということになる。

 例えば、日本船籍で三崎港に所属する船がインド洋でメバチマグロを獲って三崎港で水揚げした時には、メバチマグロ(インド洋)と表示できる。漁獲した水域がまたがって記載が困難な場合には、水揚げ港名、あるいは水揚げ港が所属する都道府県を記載できるので、三崎港産、あるいは神奈川産と表示できる。
 一方、中国船籍の場合は、自動的に中国産。水域名を明示できる場合には書いても良いので、インド洋で獲ったことが確実なら、中国産(インド洋)と水域名を併記することもできる。
 要は、インド洋かその近辺でとれたマグロに代わりはないのだが、消費者から見ると、メバチマグロ(三崎港産)とメバチマグロ(中国産)では大違いだろう。

 さらにややこしいのは、水産物が加工されている場合。例えば、「アイスランド産子持ちからふとししゃも」。アイスランド産の脂ののった子持ちししゃもを中国で干物に加工し、国内で選別包装しました、という商品だ。
 表示には次のように書いてある。

 原材料:ししゃも(アイスランド)
 製造者:○○水産株式会社

 そこで、わきあがる疑問の数々。
1)漁船の船籍がアイスランドなの? 日本の船がアイスランド沖で獲ったの?
2)中国が実質的に品質に最終変更を加えているので、製造地は中国ではないの?
3)日本で選別・包装しか行っていないとしたら、輸入品だよ

 ということで、正しい表示は以下のようになる(はず)。中国で加工、という情報がどこにも入らないのがミソだろう。

 原材料:ししゃも(船籍のある国、日本船籍の場合は漁獲水域)
 輸入者:○○水産株式会社


参考:
厚生労働省のページ「水産物の表示について」
水産庁・生鮮魚介類の生産水域名の表示のガイドライン


 実は、私は食品表示に詳しくない。表示は科学ではないので、興味はあるけれども手が回らない。なので、今回は食品表示に詳しい知人たちにいろいろと教えてもらった。ししゃも(アイスランド)とししゃも(アイスランド沖)の違いなんて、素人に分かるわけがない。
 表示にかかわる企業社員や生協職員の多くは、ヒヤヒヤしながら表示の内容を決定し、業者に指導し、間違いがないか常にチェックしているという状況だ。

 表示は一定のルールに従って行うもので、実態とは切り離して「ルールを厳守する」ということに徹しないといけない。「インド洋でとれたまぐろにかわりはないじゃないか」とか、「中国で子持ちししゃもは獲れない」とか本質的な疑問を抱えたら、もう仕事としてやっていけない。
 でも、人はどうしても、本質を伝えたいと思ってしまう。だから、食品表示にかかわる仕事をしている人たちは苦しんでいるのではないか? 

 「食の安全を守るために原料原産地表示を強化しろ」とか言っている学者先生とか消費者団体幹部とかは、こういうディテイルを知らないのでしょうね。
 原料原産地表示は、食品の安全性とは無関係。そして、表示が正しく行われているからといって、それがその食品の実態を正しく映し出しているとは限らない。
 今後さらに、原料原産地表示を強化したら、事態は混乱の極みに陥るのではないか。それに、原料原産地を調べ上げルールにそって表示するコストは、莫大になるはずだ。そんな余裕が日本にあるのか? そんなコストが上乗せされた食品を、消費者は買う余裕があるのか?


(2008年10月15日追記)
 
 やっぱり、間違えてしまいました。Ohiraさんのご指摘の通り。私のミスです。
 というわけで、下記の文章は削除。

……………………
 ということで、正しい表示は以下のようになる(はず)。中国で加工、という情報がどこにも入らないのがミソだろう。

 原材料:ししゃも(船籍のある国、日本船籍の場合は漁獲水域)
 輸入者:○○水産株式会社
……………………

 正しくは、次の通りです。
…………………… 
 ということで、正しい表示は以下のようになる(はず)。

原材料:ししゃも(船籍のある国、日本船籍の場合は漁獲水域)
原産国:中国
輸入者:○○水産株式会社

 Ohiraさん、相談に乗ってくださった皆さん、ごめんなさい。そしてありがとう。お詫びして訂正します。うーんやっぱり、表示って難しいですね。     松永



なんでも「偽装」にしてしまう新聞

2008-10-07 09:29:43 | Weblog
 いきなりですが、問題です。

 日本人乗組員の乗った中国船籍の船がインド洋で漁獲し、神奈川県の三崎港に水揚げしたマグロの原産地表示はどうなりますか? 次の4つから選びなさい。

(1)マグロ(日本産)
(2)マグロ(インド洋)
(3)マグロ(中国産)
(4)三崎のマグロ

 次回、答えを発表します!



 というわけで、関連する話題を一つ。

 農水省が3日、「株式会社東京コールドチェーンにおける調味魚介類(西京漬)の不適正表示に対する措置について」というプレスリリースを出した。
 同社の「さわら西京漬」、「いか西京味噌漬」に、不適正表示があったという。
 さわら西京漬については、『原料に使用した「さわら」は中国船籍の船が東シナ海で漁獲したものであるにもかかわらず、原料原産地を「中国」と表示せず、「東シナ海産」と国産である旨の原料原産地表示を行っていたこと』が問題だという。昨年4月から今年7月までに約7万パックを販売していた。
 いか西京味噌漬は、『原料に使用した「むらさきいか」は中国船籍の船が北太平洋で漁獲したものであるにもかかわらず、原料原産地を「中国」と表示せず、「北太平洋産」と国産である旨の原料原産地表示を行っていたこと』が問題だった。やはり同様に約3万パックを販売していた。

 で、朝日新聞は3日付で「中国産サワラ・イカ、国産と偽装 首都圏中心に10万袋」と報じちゃった。
 最初の段落はこうだ。

 中国産のサワラとイカのみそ漬けを国産と偽って販売していたとして、農林水産省と千葉県は3日、川崎市宮前区の冷凍食品販売「東京コールドチェーン」と製造委託先の千葉県船橋市の水産加工「協同水産流通」に対し、JAS法に基づき改善を指示した。


 でも、私が取材したところ、これは偽装じゃないんですよ。2006年10月のJAS法改正に対応しなければならなかったのに気付かなかったうっかりミス。
 この時の法改正で、加工食品の品質表示基準の原料原産地表示のやり方が明確になり、魚介類の原産地(国)は「船籍主義」になった。東シナ海でとれたさわらであっても、北太平洋でとれたいかであっても、船籍に基づき原料原産地を「中国」と表示しなければならなくなった。それを知らずに、従来のまま東シナ海産とか北太平洋産と表示していたので、農水省に怒られた、というのが、ことの真相。

 さわらといかは、中国で水揚げして切り身加工してから日本に持ってきて、味付けをしてパック詰めされた。パルシステム生協がさわらを、東都生協がさわらといかの両方を売っていた。東京コールドチェーンが意図して偽装したわけではないことを、生協は確認しているようだ。
 JAS法改正をフォローしておらず、漁獲した水域を表示していた同社のずさんさは責められてしかるべきだけれど、これを「偽装」と報じるのは行き過ぎだ。


 実際にこの手の間違いは結構起きているのに、農水省は見過ごしている。告発があったものを調べて見せしめ的に公表して、業者に注意喚起しているのが実情だ。そこを記者が分かっていれば、記事や見出しで「偽る」とか「偽装」という言葉を安易に使えないはずなのだが…。
 農水省に乗せられてしまった朝日新聞。ということです。

 商品を取り扱っていた両生協はそれぞれ6日、プレスリリースしている。
東都生協
パルシステム生協

事故米穀の焼却に対する違和感

2008-10-04 20:57:15 | Weblog
 農水省が3日、国が保管していた事故米穀の焼却処分を始めた。毎日新聞3日付は、「改善策が確立するまでさらなる流通を防ぐ暫定措置で、今後各地で保管する約240トンを地元自治体との調整がつき次第、順次廃棄する」と伝えている。

 ものすごく大きな違和感を感じる。焼却しなくても、飼料にしたりバイオエタノールにしたり、活用できる。実際に、民間貿易が行われているほかの穀物では、事故品を飼料にできるかどうか検査して、飼料基準をクリアできれば飼料にするルートが、しっかりと構築されていて機能している。穀物についたかびをクリーニングする方法もある。

 最近は、飼料米を豚や鶏に食べさせる取り組みも出てきている。どうして、飼料にしないのか? バイオエタノールにしないのか?

 結局、「焼却」というパフォーマンスが農水省にとっては必要なのだろう。すぐに飼料やバイオエタノールにすることは難しく、保管しておく必要がある。「このままの保管は、さらに不信感を招く」という判断があったのかもしれない。

 だとしても、米を焼却処分してしまう様子を農水省が平気で見せ、テレビや新聞がさらに平気で「当然」という感覚で撮影し流している、という事実は、私には重い。米を粗末に捨て去る光景は、見るに堪えない。
 農水省とマスメディアにおぞましさを感じるのは、私だけだろうか?

 と思っていたら、きたきつねさんが同じように「バイオエタノールにすればいいのに、もったいない」と書いていた。きたきつねさんとは時々お会いする仲。同じ感情にとらわれている人がいることに、ほっとする。

 

誇りを持って生き延びろ!

2008-09-30 11:23:55 | Weblog
 9月29日、ある生協の学習会で、鳥取県畜産農業協同組合の鎌谷一也・代表理事組合長の講演を聴いた。その時に出たのが、タイトルの言葉。「もう廃業したい」ともらす生産者に言っているそうだ。力のあるいい言葉。鎌谷さんはいつも通り、にこにこ笑顔で話していた。でも、その裏にある苦しさは、本当に深い。

 同農協の「牛飼い」は少し変わっている。説明するには、まず、大山乳業農業協同組合の話から始めなければならない。
 鳥取の酪農家は全員、大山乳業の組合員であり、生乳を大山乳業の工場に出している。乳を出すのはメスだけ。酪農用の牛であるホルスタイン種のメスに種付けして妊娠出産させて、その牛の乳を人間様がいただく、ということを繰り返すのが普通の酪農だ。
 でも、出産で当然、オスも産まれてしまう。そのオスはどうする? そして、妊娠出産と生乳生産を繰り返して年老いたメスはどうする?

 そこで、鳥取県畜産農協はオスを21~24カ月令まで肥育して「国産牛」として出荷する。また、約3年ほど、搾乳して働いてもらったメスの経産牛を、約3カ月肥育して、肉として出荷している。
 つまり、牛を最大限に活かして乳も肉も食べさせていただこう、というのが鳥取県畜産農協のポリシーである。

 2000年からは、飼料イネや食品副産物(おからや米ぬかなど)を飼料に取り入れ、牛の排泄物は堆肥化して水田に還し飼料イネの栽培に活かすという循環系の構築にも取り組んでいる。
 ここの取り組みを見ていると、本来の畜産の形を見るような思いがする。畜産はもともと、人が食べられない草や食品残渣を家畜に食べさせて食物に変える「技術」だった。現在の畜産、特に日本の畜産は、人が食べられる穀物を家畜に食べさせて味の良い肉や牛乳にする。サシが十分に入り脂のとろけるような肉、高脂肪分の牛乳は、人類が長年行ってきた資源の有効利用というあり方からは、かなりずれている。

 そして、鳥取県畜産農協はそのずれを意識して、少しずつ変えていこうとしているのだ。飼料イネや食品副産物を食べて育った、赤身のおいしい肉を作っていこうとしている。
 その取り組みは私に、食べられないものを食べるものに変えるという本来の畜産の叡智を思い出させてくれる。その素晴らしさはこれからちょこちょこ、紹介する機会が出てくると思うけれど、今回は冒頭の「誇りを持って生き延びろ!」の話。

 牛乳を生産する酪農家の経営は今、本当に苦しい。2003年から06年にかけて、乳価が下落したことで所得が2割近く下がった。さらに、07年から08年にかけて飼料価格が約1.5倍に高騰。さらに資材の値上がりも追い打ちをかけて、所得が半減、7割減という状況だという。
 肉を作る肥育農家も、似たような窮状だ。そして、鎌谷さんはこう言う。「国内でBSEが発生した時は、激流だったけれど、団結して流されないように頑張った。でも、現在の危機は、闇夜の海。星も陸地も見えないところで、水も食べ物もなくいつまで漂流が続くか分からない」。

 多くの農家が借金でがんじがらめ。自己破産を考える農家を、鎌谷さんは励ます。「破産したって食っていかなきゃいけない。だったら頑張れ」。「私たちは価値を生産している。だから、誇りを持って生き延びろ」

 飼料イネをうまく栽培して飼料にできると、コストダウンにつながるそうだ(もっとも、飼料イネも国の補助金がないと輸入飼料に太刀打ちできないのだが)。作業の効率化なども図り生産コストを下げる努力を続ける。同時に、消費者に話す機会、畜産の現状を知ってもらう機会を増やし、飼料イネ育ちの肉の消費拡大を目指す。
 
 鎌谷さんは、明るい。今でも希望を持っているように見える。消費者がこの価値を、毅然と生きる農業生産者の姿を、早く評価できるようにならなければ。
 例えば、通信費にかけるお金を削って、よい牛乳や牛肉にプラスアルファの価格を支払うという「応援消費」ができるようになったらいい。 


メラミンをなぜ混入するのか?

2008-09-27 16:06:10 | Weblog
 中国製乳製品のメラミン混入事件についてかなり多くの方から、「何のために、メラミンを混入していたのか?」と尋ねられた。新聞でもぼちぼち説明されているのだが、分かりにくいようだ。メラミンをアミノ酸の一種と誤解している人もいるようなので、説明しておこう。

 食品のタンパク質含量を測定する時、通常はタンパク質を直接測るのではなく、Nの量を測定してタンパク質の量に換算している。タンパク質という生体高分子の量をそのまま測るのはなかなか難しいので、元素であるNを正確に測るのだ。

 タンパク質の構成要素であるアミノ酸各種は炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、窒素(N)、それにイオウ(S)という元素から構成されている。アミノ酸がつらなってできるタンパク質は、アミノ酸のつながる順番によって多種多様なものがあるけれど、Nの割合はあまりおおきなぶれがなく平均して16%。なので、Nをまず定量し、そこから換算してタンパク質の含有量とする。
 食品や植物などに含まれるNを定量するには一般に、ケルダール法という昔から行われている方法を使う。濃硫酸などを用い加熱して分解し、Nの含有量を化学的に測定する。
 
 そこで、なぜ牛乳にメラミンは入れるか、だ。メラミンは、アミノ酸の一種ではなく、分子式C3H6N6の有機化合物。Nが分子量の66%を占めている。N含有率が極めて高い化合物であるメラミンを牛乳に入れれば、ケルダール法で測った時にはN含有量が高くなる。そのため一見、タンパク質含有量も高く見えるという理屈になる。

 私は、中国語は読めないのだけれど、中国のサイトではメラミンが「蛋白精」と表現されているらしい。つまり、タンパク質のもと、ということ。すごいですね。

 メラミンの毒性については、食品安全委員会の資料が詳しい。
 
 話が少しそれるけれど、このケルダール分析、ものすごく懐かしい。私は大学時代、「植物栄養学」研究室にいた。栄養学の対象として植物を研究するところと時々勘違いされるが、そうではなく、植物にとっての栄養学、つまり肥料学、今風に言うと植物生理学を学ぶ研究室。
 肥料学にとって、ケルダール分析は基本のキ。なんといっても、植物にとってNはもっとも重要な必須元素だ。で、研究室の人たちはよく、ケルダール分析をしていた。

 ところが、私は不良学生だったし、Nの代謝系にかかわる研究はしておらず、植物の微量必須元素であるホウ素(B)の生理作用について、ちょこちょこ調べていただけ。そのため、ケルダール分析は、大学と大学院にいた6年間の間に1回しかしたことがない。なんだか時間がかかり面倒くさくてしかたがなかったことだけを覚えている。

 ケルダール分析は濃硫酸や高濃度の水酸化ナトリウム溶液を使うし加熱もする。時間もかかる。まったく面白くないけれど、注意してやらなければならない定量法だ。なので、学生にとってはちょっと辛い。
 学生の中には、火をたきながら途中でどこかに遊びに行ってしまって、後で先生に大目玉を食らった人もいた。この学生は今や、Natureなどの一流学術誌に何報も出している偉い研究者になってます。
 あの頃は、なんだかんだとよく先生に怒られたなあ。挨拶がちゃんとできていない、というところから怒られました。懐かしい思い出です。

大本営発表

2008-09-25 04:51:10 | Weblog
 日経BPのFood Scienceというサイトで4年半連載してきたコラムが今週、最終回となった。
 いろいろと思うところがあり、卒業することにした。支えてくださった皆さんにお礼申し上げたい。ありがとうございます。

 最後は私にとって非常に残念なことなのだが、農水省批判となった。
 事故米穀の関連業者を、「食の安全の確保を最優先する観点から」(大臣談話)、了解を得ることなく公表し始めたことに、私はずっとこだわっている。

 直接の担当者の話を私はまだ、聞けていない。だが、周辺の人たちは今回のリスト公表について「政治家からの圧力に違いない」と言う。つまり、「職員は、リスト公表が問題だと思っているが、抗えない」という解釈だ。
 
 本当は、リスト公表を受けて報道してしまったマスメディアの批判もしたかった。が、コラムとして散漫になってしまうので、やめた。

 今、マスメディアがやっていることは、大本営発表の垂れ流しと同じだ。
 リスト公表によって風評被害が起きている、と今頃テレビや新聞が報じているけれど、16日のリスト公表時点で、「この公表には問題があるから、うちは個別の業者名は報じない」という判断があってもよかったはずだ。
 自分たちは思考停止状態で、そのまんま掲載したりニュースとして流しておいて、「農水省に批判が集まっている」と平然と報じる感覚が、私には理解できない。
 一般の人たちも、もっとメディアに怒ってよいのではないでしょうか?

  

モンクロシャチホコ

2008-09-21 13:20:19 | Weblog
 メラミン、大変。
 でも、今日は別の話。

 我が家の庭に生えているスモモの木が、丸坊主になってしまった。虫にやられたのだ。とても忙しく、しばらく目を離しているうちに、悲惨なことになってしまった。

 やったヤツらは分かっている。モンクロシャチホコ。昨年と同じだ。昨年は、出張から戻ったら、写真のようになっていた。虫嫌いの人は、写真をクリックしないように。

 この時は、なんの虫かわからなかった。で、私が大尊敬している病害虫研究者、池田二三高さんに、この写真を添付したメールを送った。これはなに?

 即座に回答いただきました。いろいろアドバイスもいただいたのだが、あまりの虫だらけに、なにもせず。面白がって知人の生協職員数人に写真を送って、思いっきり顰蹙を買いました。そして今年……。

 やっぱり、昨年対処しておけばよかった。病害虫は、その年だけしのげばいい、というものではない。農業生産者の御苦労をほんの少し垣間見たような……。

 環境省植物防疫課が今年5月、「公園・街路樹等病害虫・雑草管理暫定マニュアル~農薬飛散によるリスク軽減に向けて~」というパンフレットを作って公表している
 モンクロシャチホコの解説も。
 池田さんも、写真を提供しています。

 

柄にもなくオロオロ

2008-09-20 19:54:18 | Weblog
 実は、今回の農水省のやり口に、私は個人的に大きな衝撃を受けた。柄にもなくオロオロと混乱した。

 「食の安全」とは関係がないのに、「食の安全の確保を最優先する観点から、関係企業等の名称を公表する」(大臣談話)という言い方は、許されない。
 批判を逃れ、「情報公開」という大義名分を守るために、被害者である零細業者の名前まで公表した。私は、「ああ、農水省は、業者を見捨てたのだ」と思った。
 罪のない人たちを、こんなに簡単に見捨てるような国に、私たちは生きている。そのことがショックだった。
 
 私はこれまで、市民向けの講演で、「中央省庁はBSE問題以降、大きく変わってきた。批判するだけでなく、その点もきちんと見てあげましょう。信頼しましょう」と言ってきた。
 マスメディアは、批判をする。批判をするのが自分たちの仕事だと思っている。日本という国には、行政、役人が血のにじむような努力をしていることを評価して褒めてあげるシステムがない。でも、だれかが認めてあげないと、役人だって「頑張ろう」という気にならないでは?

 そんなことを、新聞記者時代からずっと思ってきた。批判する時は批判するけれど、褒める時は中央省庁や自治体でも、自信を持って思いっきり褒めることができる。そんな力のあるライターになりたいと思って、やってきた。

 重箱の隅をつつくような批判記事を書いて「市民派」のつもりでいる新聞記者やライターなんて、ごまんといる。報道はそんなものだ、という思い込みも世間にはある。
 そんな安全圏での仕事はしない。そう決めて、努力してきたつもりだ。
 だから、「食品安全行政は、最近よく頑張っている。だから、国をまず信頼しましょうよ。信頼感を役人たちに伝えて、さらに頑張ってもらいましょうよ」とも言ってきたのだ。
 
 今回、「そんな私って、なんなのよっ」と正直に言って思いました。

 農水省をもう信頼できない。役所があれでは、メディアがどんなにリスクについて理解できなくてでたらめを報じても、文句は言えない。

 空しい。オロオロ。やっぱり私は「甘ちゃん」だったのかなあ、と思い、意気消沈した。


 で、表面は取り繕って「元気な松永さん」でいるわけだが、やっぱり親しい人たちには気付かれていたらしい。言葉をかけてもらったり、メールをいただいたりした。ありがとうございます。嬉しかった。

 今回は、徹底批判するべき時なのだろう。科学的根拠のある批判をしたい。そして、改善されたら、その時は認める。褒める。
 結局は、その繰り返しをするしかないのだと思う。


 

食品安全委員会は、資料を更新していた

2008-09-20 19:02:47 | Weblog
 「食品安全委員会も頑張っているようですよ!」 食品企業の方から教えてもらった。

 私は、食品安全委員会が5日に出したメタミドホスやアフラトキシンなどについての簡単なまとめ資料を見て、「これでは足りない」と思い、17日付で「食安委はなぜ委員長談話や見解を出さない?」と記述した。でも、いやはや、資料は更新していたようですね。

食品安全委員会

 例えば、メタミドホス。どうも12日に更新されており、
「基準値以上のメタミドホスが含まれている事故米穀が、食用として流出してしまいましたが、これを使用した食品を食べることにより健康に悪影響が出るのでしょうか?」という質問を設定し、ADIとARfDの両方について検討し、「心配いらない」と答えている。

 アセタミプリドについても、同様の質問と答えを追加し、アフラトキシンについては17日付で、鹿児島県の情報を追加しているようだ。

 さらに。
 18日には、11日に開かれた食品安全委員会第254回会合議事録抜粋をわざわざ公表。委員長の言葉を伝えている。


 「残留基準値を超えて検出された米穀が、食用に流通していたということは、量はともかくとして、食品安全の確保のための制度の根底を覆すという本当にゆゆしき事態であって、あってはならないことと考えます。
 一方で、国民が過剰に不安を感じないよう、科学者の立場から現状のリスクを冷静に分析するということも重要です。

 危害要因のうち、アセタミプリドとメタミドホスにつきましては、暫定基準値を上回っているものの、幸い比較的低い濃度でした。
 この2つの農薬について、食品安全委員会ではリスク評価を既に行い、毎日、一生涯食べ続けても健康に悪影響がない量である一日摂取許容量を決めておりますが、この値に比べても、事故米に含まれている農薬の量は十分に低いレベルなので、健康に悪影響が出る心配はありません」


 食品安全委員会は委員長談話を出すべく準備を進めていたが、圧力があり頓挫した、という情報も漏れ伝わってきた。ギリギリの努力が、「委員会議事録の抜粋」なのかもしれない。

 もう一息頑張って、やっぱり正式に委員長談話と委員会見解として、大々的に公表してほしかった。
 そうしないと、マスメディアの記者たちが報じない。一般の人たちに、大切な情報が伝わらない。

食品安全委員会はなにをしている?

2008-09-17 14:32:38 | Weblog
 今回の事故米について、食品安全委員会が委員長談話を発表しないのが、気になってしかたがない。
 農水省がいくら「安全だ」「濃度は健康被害を出した中国製ギョーザの60万分の1だ」と言ったところで、あんな不始末をしでかした組織が信用されるはずがない。
 でも、事故米のリスクの本当のところを、しかるべき機関が責任を持って国民に伝えるのは、食品行政における大きなポイントではないか。

 ここは、中立のリスク管理機関である食品安全委員会が引き取って、きちんとした見解を示したほうがいい。委員長談話を発表し、委員会としての見解を明らかにし、その根拠となった資料やデータも公表して、事故米の科学的な検討結果を国民に伝える必要があるのではないか?
 
 国の確固たる姿勢が見えないから、多くの人たちが訳が分からず、不安になっているのだと私は思う。

 現に、昨年1月に宮崎で鳥インフルエンザが発生した時は、直後に食品安全委員会委員長談話、委員会見解が公表されている。

 こんなこと、食品安全委員会の人たちも農水省も百も承知だ。でも、できない。できないのはなぜだろう?