なんでも「偽装」にしてしまう新聞に書いた質問の答えを発表します!
Q.日本人乗組員の乗った中国船籍の船がインド洋で漁獲し、神奈川県の三崎港に水揚げしたマグロの原産地表示はどうなりますか? 次の4つから選びなさい。
(1)マグロ(日本産)
(2)マグロ(インド洋)
(3)マグロ(中国産)
(4)三崎のマグロ
A.マグロ(中国産)
簡単でしたね。水産物の原産地表示は船籍主義。中国船籍の船が漁獲しているので、中国産ということになる。
例えば、日本船籍で三崎港に所属する船がインド洋でメバチマグロを獲って三崎港で水揚げした時には、メバチマグロ(インド洋)と表示できる。漁獲した水域がまたがって記載が困難な場合には、水揚げ港名、あるいは水揚げ港が所属する都道府県を記載できるので、三崎港産、あるいは神奈川産と表示できる。
一方、中国船籍の場合は、自動的に中国産。水域名を明示できる場合には書いても良いので、インド洋で獲ったことが確実なら、中国産(インド洋)と水域名を併記することもできる。
要は、インド洋かその近辺でとれたマグロに代わりはないのだが、消費者から見ると、メバチマグロ(三崎港産)とメバチマグロ(中国産)では大違いだろう。
さらにややこしいのは、水産物が加工されている場合。例えば、「アイスランド産子持ちからふとししゃも」。アイスランド産の脂ののった子持ちししゃもを中国で干物に加工し、国内で選別包装しました、という商品だ。
表示には次のように書いてある。
原材料:ししゃも(アイスランド)
製造者:○○水産株式会社
そこで、わきあがる疑問の数々。
1)漁船の船籍がアイスランドなの? 日本の船がアイスランド沖で獲ったの?
2)中国が実質的に品質に最終変更を加えているので、製造地は中国ではないの?
3)日本で選別・包装しか行っていないとしたら、輸入品だよ
ということで、正しい表示は以下のようになる(はず)。中国で加工、という情報がどこにも入らないのがミソだろう。
原材料:ししゃも(船籍のある国、日本船籍の場合は漁獲水域)
輸入者:○○水産株式会社
参考:
厚生労働省のページ「水産物の表示について」
水産庁・生鮮魚介類の生産水域名の表示のガイドライン
実は、私は食品表示に詳しくない。表示は科学ではないので、興味はあるけれども手が回らない。なので、今回は食品表示に詳しい知人たちにいろいろと教えてもらった。ししゃも(アイスランド)とししゃも(アイスランド沖)の違いなんて、素人に分かるわけがない。
表示にかかわる企業社員や生協職員の多くは、ヒヤヒヤしながら表示の内容を決定し、業者に指導し、間違いがないか常にチェックしているという状況だ。
表示は一定のルールに従って行うもので、実態とは切り離して「ルールを厳守する」ということに徹しないといけない。「インド洋でとれたまぐろにかわりはないじゃないか」とか、「中国で子持ちししゃもは獲れない」とか本質的な疑問を抱えたら、もう仕事としてやっていけない。
でも、人はどうしても、本質を伝えたいと思ってしまう。だから、食品表示にかかわる仕事をしている人たちは苦しんでいるのではないか?
「食の安全を守るために原料原産地表示を強化しろ」とか言っている学者先生とか消費者団体幹部とかは、こういうディテイルを知らないのでしょうね。
原料原産地表示は、食品の安全性とは無関係。そして、表示が正しく行われているからといって、それがその食品の実態を正しく映し出しているとは限らない。
今後さらに、原料原産地表示を強化したら、事態は混乱の極みに陥るのではないか。それに、原料原産地を調べ上げルールにそって表示するコストは、莫大になるはずだ。そんな余裕が日本にあるのか? そんなコストが上乗せされた食品を、消費者は買う余裕があるのか?
(2008年10月15日追記)
やっぱり、間違えてしまいました。Ohiraさんのご指摘の通り。私のミスです。
というわけで、下記の文章は削除。
……………………
ということで、正しい表示は以下のようになる(はず)。中国で加工、という情報がどこにも入らないのがミソだろう。
原材料:ししゃも(船籍のある国、日本船籍の場合は漁獲水域)
輸入者:○○水産株式会社
……………………
正しくは、次の通りです。
……………………
ということで、正しい表示は以下のようになる(はず)。
原材料:ししゃも(船籍のある国、日本船籍の場合は漁獲水域)
原産国:中国
輸入者:○○水産株式会社
Ohiraさん、相談に乗ってくださった皆さん、ごめんなさい。そしてありがとう。お詫びして訂正します。うーんやっぱり、表示って難しいですね。 松永
Q.日本人乗組員の乗った中国船籍の船がインド洋で漁獲し、神奈川県の三崎港に水揚げしたマグロの原産地表示はどうなりますか? 次の4つから選びなさい。
(1)マグロ(日本産)
(2)マグロ(インド洋)
(3)マグロ(中国産)
(4)三崎のマグロ
A.マグロ(中国産)
簡単でしたね。水産物の原産地表示は船籍主義。中国船籍の船が漁獲しているので、中国産ということになる。
例えば、日本船籍で三崎港に所属する船がインド洋でメバチマグロを獲って三崎港で水揚げした時には、メバチマグロ(インド洋)と表示できる。漁獲した水域がまたがって記載が困難な場合には、水揚げ港名、あるいは水揚げ港が所属する都道府県を記載できるので、三崎港産、あるいは神奈川産と表示できる。
一方、中国船籍の場合は、自動的に中国産。水域名を明示できる場合には書いても良いので、インド洋で獲ったことが確実なら、中国産(インド洋)と水域名を併記することもできる。
要は、インド洋かその近辺でとれたマグロに代わりはないのだが、消費者から見ると、メバチマグロ(三崎港産)とメバチマグロ(中国産)では大違いだろう。
さらにややこしいのは、水産物が加工されている場合。例えば、「アイスランド産子持ちからふとししゃも」。アイスランド産の脂ののった子持ちししゃもを中国で干物に加工し、国内で選別包装しました、という商品だ。
表示には次のように書いてある。
原材料:ししゃも(アイスランド)
製造者:○○水産株式会社
そこで、わきあがる疑問の数々。
1)漁船の船籍がアイスランドなの? 日本の船がアイスランド沖で獲ったの?
2)中国が実質的に品質に最終変更を加えているので、製造地は中国ではないの?
3)日本で選別・包装しか行っていないとしたら、輸入品だよ
ということで、正しい表示は以下のようになる(はず)。中国で加工、という情報がどこにも入らないのがミソだろう。
原材料:ししゃも(船籍のある国、日本船籍の場合は漁獲水域)
輸入者:○○水産株式会社
参考:
厚生労働省のページ「水産物の表示について」
水産庁・生鮮魚介類の生産水域名の表示のガイドライン
実は、私は食品表示に詳しくない。表示は科学ではないので、興味はあるけれども手が回らない。なので、今回は食品表示に詳しい知人たちにいろいろと教えてもらった。ししゃも(アイスランド)とししゃも(アイスランド沖)の違いなんて、素人に分かるわけがない。
表示にかかわる企業社員や生協職員の多くは、ヒヤヒヤしながら表示の内容を決定し、業者に指導し、間違いがないか常にチェックしているという状況だ。
表示は一定のルールに従って行うもので、実態とは切り離して「ルールを厳守する」ということに徹しないといけない。「インド洋でとれたまぐろにかわりはないじゃないか」とか、「中国で子持ちししゃもは獲れない」とか本質的な疑問を抱えたら、もう仕事としてやっていけない。
でも、人はどうしても、本質を伝えたいと思ってしまう。だから、食品表示にかかわる仕事をしている人たちは苦しんでいるのではないか?
「食の安全を守るために原料原産地表示を強化しろ」とか言っている学者先生とか消費者団体幹部とかは、こういうディテイルを知らないのでしょうね。
原料原産地表示は、食品の安全性とは無関係。そして、表示が正しく行われているからといって、それがその食品の実態を正しく映し出しているとは限らない。
今後さらに、原料原産地表示を強化したら、事態は混乱の極みに陥るのではないか。それに、原料原産地を調べ上げルールにそって表示するコストは、莫大になるはずだ。そんな余裕が日本にあるのか? そんなコストが上乗せされた食品を、消費者は買う余裕があるのか?
(2008年10月15日追記)
やっぱり、間違えてしまいました。Ohiraさんのご指摘の通り。私のミスです。
というわけで、下記の文章は削除。
……………………
ということで、正しい表示は以下のようになる(はず)。中国で加工、という情報がどこにも入らないのがミソだろう。
原材料:ししゃも(船籍のある国、日本船籍の場合は漁獲水域)
輸入者:○○水産株式会社
……………………
正しくは、次の通りです。
……………………
ということで、正しい表示は以下のようになる(はず)。
原材料:ししゃも(船籍のある国、日本船籍の場合は漁獲水域)
原産国:中国
輸入者:○○水産株式会社
Ohiraさん、相談に乗ってくださった皆さん、ごめんなさい。そしてありがとう。お詫びして訂正します。うーんやっぱり、表示って難しいですね。 松永