不良家

駄文好む 無教養 くすぶり 時々漂流

 ノグチ氏のユーガな・・・

2014-08-27 15:55:29 | 意味不明

 元そこそこの銀行で、そこそこのポジションにいたノグチ氏から召喚電話があった。「お、会長」 「やあ、会長」 {*1} お笑い孤独死友の会{*2}は実にちゃらんぽらんで全員が会長だ。

 タバコには拒絶感があって酒、バクチに向かう根性がきわめて欠損、病院でチェックしたらガンの疑いがあるという。そいつはめでたい。{*3}前祝い金ものだ。

 「どうもすい臓らしいんだ。おやじと兄貴がやられているから、残余金はないだろうね。おい、なに笑ってる、おかしいか?」 

 「うん。でもさ、検査結果を聞くとそいつはガンモドキてやつだろう。まだ赤字になってない。大体さ、ガンモドキはおでん屋のタネだろ。おでんのシーズンはちょっと早い」

 「・・・」

 「それにさ。ガンモドキだからってガン治療したら寿命がショートするてのが定説らしい。それでも死に急ぐんなら手術でもなんでもやるよろし」

 「冷たいな。香典よこせ」 「知るか。他人の不幸はわが幸せ」

 ゴキブリうろちょろの古アパートにひとり住まいのノグチ氏。今夏の行状を耳にしてあきれ返った。ガンモドキの告知?を受けて、毎日早朝からお昼までせこせこクルマを走らせていた小口運送の仕事をやめた。

 「おれ、腹をくくったら腹がへらなくなってさ。人間食うのが一番面倒だろ。ちょうどいいってなもんでアパートにこもってさ」{*4} 

 深夜はメジャー・リーグ、朝起きて高校野球、その間にはスポーツ紙を精読。夜タイムはプロ野球。なべて小っこいTV観戦。 「どうだ。忙しい日々だろう。充実した人生」 「・・・確かに」

 お楽しみが野球しかなかった敗戦後ボーイは、高校まで一応は勉強して大学に進学すると、なむと!野球部に入部する。たっぱ169、めかた54。{*5} 

 それでも東都1部リーグのガッコだ。当然、球ひろいに発声要員だ。根っからの野球好きだから4年間の奴隷青春。球歴としては卒業寸前のオープン戦の1打席。相手投手は巨人で活躍したミヤタ{*6} だったという。もちろん三振。

 「なかなかの実績だろう」 ニヤリする顔面に欠けた歯が不気味だ。銀行員になってからも草野球のへなちょこ選手。ハタ・・・と気付いたときにはバクチによる借金の山脈で、日本橋の家を処分して清算した。ついでに妻子とも清算。帳尻を合わせた。バクチで溶けた主要な負債種目は外国勤務のときのバカラ。{*7} 

 「不思議なもんだ。いまだに野球漬けだ。寝っ転がって監督やってる。同輩の何人かが高校野球の監督をやってやがってさ。あのバカどもが勤まってるんだからおれだって・・・」

 「やればぁ。高校野球なんて青臭いチームではなく、プロ野球の監督、やれば。なんだったら球団をひとつ買ってやろうか」

 「大きく出たな。一丁頼むかな」{*8} 

 「いいよ。プロの球団はオモテ向きはド派手だけど、経営規模からいえば銀座の老舗とスクラッチだ」

 「で、スポンサー様のあんたはなにやる?」

 「ナベツネ2世。プロ野球を中華大鍋でぐっしゃぐっしゃにかき混ぜて・・・いや、やめた、やめ。なにもアクションしない。金は出しても口出さず。清く美しくタカラズカ」

 「朝まで、いや、死ぬまでいってろ」 {*9}

  ノグチ氏は強気だ。2020東京五輪決定のニュースに接して俄然攻勢に出た。{*10} 「6年後、この目でナマ・オリンピックを見てからってことにする。会長職はあと6年間留任する」 おいおい。そんな延長戦はありえねー。  

 「おいおい。名誉あるポストにしがみつくってか。老害のきわみだ」{*10} 

  ノグチ氏の優雅なる日常は<野球命>にあった。それも強欲こいてあと6年間だそうだ。あくまでも単なる努力目標であってほしいものだ.{*12}

           {*1} <孤立した個人の内部に限りなく退行していく男」> 寺山修司

      {*2} 嫁逃げられ歴3のジャズピアニストSがいい出しっ屁

      {*3} 「世紀末は明るい未来なのだ、のう杉作」 {鞍馬天狗のおじさん}

      {*4} ミニスーパーに50%OFFの弁当があれば買う

      {*5} ひょろい

      {*6} 八時半の男

      {*7} ほかには麻雀、競馬、チンチロリン、石蹴り

      {*8} 裏金主は兆単位汚職の殿堂、紫禁城

      {*9} 有史以来最強の賛辞

      {*10} 野球は本妻、五輪はごりんばばあ

      {*11} ノグチ氏よ、朝の来ない夜はあるのだよ

      {*12} お星さんにお願いして、3000年冥王星五輪まで延命説


 前略っ。

2014-08-13 21:44:17 | 意味不明
 せまいベランダがとてもきれいになった。ごつい台風、狂乱雨がすこっと清掃してくれた。縁台タバコがうまい。朝タイムは起きたぞけむり、夕涼みは孤高ののろし。

 ちっこいベンチをせこい花壇にした。ハイビスカスが2鉢。朱色と品がないイエロー。まいにち開花を競わせている。
 お気に入りのアジアンタム。1株50円がいつの日にか森林になれと給水する。

 この夏になってモダンアート制作者になった。「100均アーティスト」と自分でうそぶいている。
 花鉢に100均でせしめた油性ペンで塗りまくる。カラーテープでぐるぐる巻きつける。懲りるもんかとばかり音符やら星やらのシールだって貼り付けた。

 調子がサーフィンして、材質が木らしい小箱をゲットして額縁面を塗りたぐった。ひとつは荒野群青色、もひとつは焼跡闇芝居色とネーミング。
 どうでもいいがどうでもいい作品!だ。駄新作である。横浜トリエンナーレから出品オファー?まだないものの、ありだったら・・・謹んで固辞したい。

 悪だくみをしている。ヨーロッパ鉄道旅の聖書「トーマス・クック」をひろげてにらんでいる。
 と。
 ロンドンの美術館のとある絵画が、強度のやぶにらみ2名ににらまれて変色してしまった。この故事が真実だった。

 ポイントになるページがすぽっと消えていた。ほー、感心しながら原因を追究した。45秒後にわかった。
 数年前にトーマス・クック旅をしたときにぶっちぎったことを思い出す。あれ、1冊持ち歩くのは荷物になる。重い。体力が消耗する。

 自前の聖書が役立たずだから、図書館に出かけた。2館ともなかった。仕方なく本屋で立ち読む。「ちょっとコピーさせていただくわけには・・・」無理ってもんだ。旅ってタクラマカン砂漠、じゃなかった。たくらむ段階で疲れる。

 さてどこいらに出撃してやろうか。
 メルヘン街道?ロマンティック街道?ガラじゃねー。
 第1次世界大戦100年というから戦跡巡り?よしやがれ。
 硝煙漂うウクライナ前線?やめとけ。
 ジュネーブの禅世界会議?そんなの知らねー。
 EUの本部があるブリュッセルでヨーロッパの金庫内部を減らす・・・ユーロ札を1トンばかり・・・うーむ、そそられるものがある。

 自由の語義にはたくらみの自由も含まれるはずだ、当然。ベランダにおいて奇想する。 そこは個人所有のプチな公園である。自作のアート作品もある。タバコがうまい。草々っ。

 

 その男、昭和の説教強盗

2014-08-06 16:50:29 | 酒場にて
 新宿愛住町の残骸風化マンションの一室を借りた。年号が平成になるあたりだ。
 NHKで月給ドロボーをやっているバカが所有している部屋だ。
 「借りてくれよ、な。地名が愛が住む町だぜ。あんたにはお似合いてーもんだろ」  いろいろあった時期だったから乗った。ま、いっか、いつもの調子だ。

 新宿といっても、アクセスは地下鉄四谷三丁目。消防署の小路を入って下る。なむとそこは暗闇坂。急な坂を素っ転んでまだ生きてさえいれば、そのマンションにたどり着く。
 ♪良い子が住んでる良い町はァ、楽しい楽しい愛の町ィ やけくそ原理主義で鼻歌した。

 どうせならエラソーなネーミングにしたいので奇策に出た。オフィス「海舎」にした。会社=カイシャ、スタッフには社長=シャチョーと呼ばせた。「会社の社長」を詐称して小ゼニを稼いだ。

 午後になると近くの雀荘から電話が入る。「おいしいお客がお出でになる」悪魔のお誘いではない。収入源の営業ひとつだ。
 「下手の麻雀好き」新宿や赤坂のお高級なクラブホステスどもが相手だから、常時収入はとても美味だった。

 愛住町に日の出あたりまで営業している居酒屋があった。ある朝の5時ごろ、よろよろっとしたジーサンが忍び足で引き戸をあける。伏し目でぼそ。
 「いっぺぇ、やってくんねぇ」
 おお、江戸弁だぜい。いまごろなら浅田次郎の小説「天切り松闇がたり」シリーズの世界だ。

 店主は黙ってそぅっと茶碗酒を出す。そいつをくいくいぃ、三口、四口ぐらいで飲み空ける。ジーサン、無言で立ち去る。朝もやに溶けた。渋い絵の一幅だ。その男、昭和の説教強盗。本名妻木松吉。
 ドロボーの名横綱、昭和の有名人、石川五右衛門クラスだ。

 こいつはおもろそー。良くいえば仕事のテーマになる。ざっくりいうとカネになる。じっくり観察することにきめた。動機はいつだって不純だ。

 消防署の通りを歩くと、木造アパートのまえでジーサンと年配のオバサンがふたりでのんびり日向ぼっこをしていた。

 いつか仲良しになってやる。活字にしてうまい酒を飲んでやる。それなりに資料を集めて、そのオバサンは看護師さん。刑務所仲間の娘で、頼まれて養女にしたことなどがわかっている。

 説教強盗、妻木松吉。1901年生まれ。左官職人。とてもユニークなドロボーだった。東京市内の新宿、池袋、板橋あたりの民家にそろり深夜訪問する。
 「お静かに願います」といって入場。一家は金銭を差し出す。それから正座でドロボーの追い銭のような説教を謹聴させられることになる。

 「この家は戸締まりがなってねえ」 自分の侵入手口を明かして防犯の不備を指摘する。
 「泥棒除けに犬を飼うもんだ」・・・朝までこんこんとさとす。始発電車の時間になるとす~朝もやの彼方に消える。

 帝都騒然。現代では愉快犯の一種になるだろう。このユニークなドロちゃん、一躍スーパーになった。昭和なる時代のおどろおどろしたダーティー・ヒーロー。

 なかにはわが家にもウエルカムの風潮があったそうだ。強盗さんいらっしゃい。
 はっきりしているのは、この事件をきっかけにして番犬を飼うのがブームになったことだ。
 戦後になって出所してから新宿末広亭で「防犯講演」なる演し物をやって評判を得たくらいの、よっ、ワルのデェートーリョー!一世風靡した。

 妻木松吉は平成の世になろうという現代にリアルタイムで生きていたのだ。絶望の暗黒の時代を総括するのにふさわしい存在のひとりといえる。
 昭和のビッグスターの「あの人はいま」が、愛住町でのへら~と日向ぼっこをしている。そっち関係を生業としている身にはおいしそうな素材であった。

 昭和裏面史を証言者としてご登場願いたかった。なにそろ海千山千の怪人だ。一筋縄ではない。たぶん誇大、嘘八百を並べられることになるのは想定内だ。
 したたか帝王だ。千三つ、つまり1000分の3しか真実はない!ノンフィクション分野では<犯罪者のホントの証言は1割>が相場だ。それはまたそれ。漫画チックで痛快そうだ。


 ☆当方、私的キホンは<ただいま夏期冬眠中>つづき予定は・・・はしょるのでござる。
 <メモ>1929年{昭和4年}逮捕。無期懲役。獄中で井上日召(右翼団体血盟団のリーダー)や河上肇(マルキスト)らと出会い、左右両翼の大物から諭されて、文字を習った。
 1947年{昭和22年}出所。獄中18年。<戦争を知らない明治男>
 永い戦後の暮らし向きは生活保護。1989年{平成元年}89歳で死亡。

 ○新橋の出版社にいた友人が「烏森の飲み屋にチンチンカットの阿部定がいたぜ」タイの幼妻ハーレムの玉本敏雄をチェンマイに取材に行ったぜ」こっちは説教強盗で勝負してやる。対抗心めらめら。

 ○ところがぎっちょん。飲み仲間の作家Nに説教強盗の話題をした。その10日後のサンデー毎日に彼の記事が掲載された。Nは「すまん。結果としておれがリークしたことになる」

 ○直後にくだんの飲み屋から出禁の宣告。「わけのわからないライターが多勢やってきてトラブルになった。あんたのせいだ」どうやら本人が取材協力費などでもめて、店のおやじが巻きこまれて迷惑したという。必然な流れとしてボツにした。
 ○その後、妻木は愛住町から老人ホームへ転じた。

 ○ことし。野暮用で四谷三丁目に出向いたさいに、くだんの飲み屋を数10年ぶりに再訪。亭主が覚えていてその話題に終始する。彼は妻木老を尊敬していた。

 てなC調なメロディラインを予定していたわけでありまして。  FIN