ワカキコースケのブログ(仮)

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さよなら、春の完全犯罪

2013-05-28 21:36:22 | 日記


ひとつの話題にできるほど知っている世界ではないので、まくらとして。

ファッションのファの字もわからない人間が、先日、企画の勉強の一環で、新宿伊勢丹3階のレディスフロアへ行き、女性服をしげしげと見て歩いた。
MiuMiuって、若いコ向けな感じなのに、どっか落ち着いてるなーと思ったり(プラダの姉妹ブランドだと後で知る)、ALEXANDER WANGはバッグもブラウスも黒がカッコイイね、と素朴に感心したり。
ブランドなんて自分の人生と無関係、と長年思っていたが、色眼鏡を外して、デザイナーの作品として間近で見ると、すごく楽しかった。年を重ねるごとに知らないことが増えていく。大変だけど、悪くないですね。
ひとめぼれしたのは、ケイタ マルヤマの、明るいワンピースだった。もちろん自分が着たいわけじゃない。ほらアレ、アーウィン・ショーの『夏服を着た女たち』。あの気分。実際は、“生脚の女たち”のほうがより眩しいんだけど。



たまたまだけど、本格的な夏服シーズンに入るのが、ちょうどの区切りみたいな気がする。
2月から丸3ヶ月関わった、推理物のアイデア出しの仕事からの、引き上げが決まった。
写真は、このあいだに目を通した、手持ちの本の解散記念写真。ごくろうさまでした。よく一緒に辛抱してくれました。




忸怩たることに、清々しく終われたわけではない。

3ヶ月のあいだに、数十の殺しの手口、アリバイのトリックをひねり出した。生まれて初めてまともに取り組むジャンルだから、手厳しくダメ出しされないと、自分でも、完全犯罪として成立しない矛盾、穴に気づかないことの繰り返し。この間のしんどさは、なんといっていいのか、まだよくわからない。ネガティブ・シンキングの人間が、怯えながら想定していた以上に辛かった。
なんとか成立はしているアイデアも幾つかはあったのだが、丸ごと採用には至らず。
野球でいうと、初先発のマウンドで、制球がさだまらないまま毎イニング四死球でランナーを出し、4回途中で降板。明日からまた二軍に逆戻り……という感じかな。

ずっと悲鳴をあげたい苦痛のなかにいた点で、2013年の春は忘れ難いが(いや、現実にはしばらくは忘れたい気もする)、では、なまじ片足を突っ込んだことを後悔しているかというと、逆。
心の底から、チャレンジしてよかったと思っている。手痛い思いをして、そのぶん、拡張域は広がった。構成作家としてはそれなりにキャリアは積んでいるけど、このジャンルではあくまでシロウト。高い峰に撥ね付けられて「ふりだしに戻る」感を味わったことは、貴重な学びの機会でもあった。

しばらくは完全犯罪なんて懲り懲り、考えたくもない。が、いずれリベンジしなくては、という炭火はしっかり残っている。

そのリベンジのために、何人かで勉強会みたいなことは、やったほうがいいかなーとはうっすら思っている。
若いクリエイター志望の人には、ひとりでコツコツと脚本を書くのはいいけれど、トレーニングで、こっちもやってみませんかと声をかけてみたい。

なぜかというと、完全犯罪は、なんというか、「アイデアの最終形態」、純粋な結晶に近いのだ。
脳みそが痛い、こっちが死にたくなる、という思いを乗り越えて、それでもなんとか作り出すと、きっと他の分野にフィードバックできる自信になる。

理由1・完全犯罪は、リアリティとファンタジーの融合物。現実の裏打ちと飛躍した発想の両立。この時点ですでに並大抵ではない。

理由2・とにかく手口やトリックを論理的に組み立てる地道で細かい作業。そのうえで、アリバイもセットで用意する。思いつきは思いつきでしかなく、ここまで形にしないとアイデアとは呼べないことが、イヤになるほどわかる。

理由3・さらに、そこまでの努力を犯人にさせる動機づくり。ふつうの怒り、殺意ではダメ。骨格の太さをめざす考え方をしないと、成立できない。つまり、ロジックとエモーションの融合物でもあらねばならない。

理由4・非常にチーム作業向き。例えば自分の体験をモチーフにシナリオやストーリーを書く若いひとは、なかなか周りの意見を素直に聞けないもの。しかし、完全犯罪だと、整合性のズレなど指摘の問題点がハッキリするので「ワタシがこうしたいから」と依怙地を張るのは一切通用しない。ミーイズムで物語をつくるのには限界があると、素直に体感することができる。


黒澤明は、「シナリオを勉強するなら推理小説を読め」という意味のアドバイスを周りにしていたそうだ。なにを言わんとしていたかは、僕もようやく、よく分かってきている。黒澤の言葉は、僕も若い頃に読んでいたのだが、しかし億劫に感じてスルーしていた。いい年になってから苦労したのは、耳を閉ざしていたぶんのペナルティだ。

近々、参考のために見た映画やドラマ、本をリストアップしたい。
といっても、この3ヶ月は、ここ数年のうちで最も映画を見なかった。見る余裕自体がなかった。代わりに、勉強の主軸は、とにかく「刑事コロンボ」を見ることだった。コロンボと初めて四つに組み、組んでは投げられる春でもありました。


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