v6くるくる日記

「幸せな社会のための技術を語りたい?」日記

メディア論とポスト資本主義

2006-03-15 03:11:55 | IT社会論とでもいうべきもの

先日ラスベガスからの帰りの飛行機の中で、「Good Night, and Good Luck」という映画を見た。アカデミー賞にもノミネートされていたから、結構話題作だったのかもしれない。とにかく硬派で地味、しかし非常に力強い映画である。

1950年代、米国の赤狩り旋風の時代、TVというメディアの創世記の時代、マッカーシー上院議員とCBSのプロデューサー、エド・マローとの戦いを描いたものである。メディアと権力との戦いとか言論の自由とかの問題だけでなく、メディア企業の経営の問題、大衆の求めるコンテンツという問題、この難問を進めていくプロデューサーの迷いや悩み、なども見事に描いている。敢えて白黒の画面で構成されているところが、本質だけをより強く訴える。

最後にこのプロデューサーが演説する際の言葉が印象的だったので、全く正確さには欠けると思うが思い出せる限り、引用してみる。

「エドサリバンショーを4週に1回休んで、アメリカの社会問題を扱ったとしても、スポンサーや株主が文句を言うだろうか? 数千万人を啓蒙することができれば、長い目でみて、社会全体がレベルアップすることにより、はるかに大きな宣伝効果を生むのではないか。」
「楽しいだけのテレビはタダの光を発する箱である。そうではなくて、テレビは教師になりうる。ただし、よい教師になるためにはテレビという媒体をツールとして使いこなさないといけない。」

御意。

最近の国会周辺の問題にしても、何にしても、これからの国民全体の知的・精神的レベルアップが不可欠だと、常日頃から考えている私にとっては、かなりしっくりきた。そういえば先日も毎日新聞の座談会に参加し、メディア論をとりあげたが、それよりはずっと示唆にあふれていたように思う。

これらの考え方は、メディア論とか、メディア企業の経営だけにはとどまらない。ピーター・ドラッカーの予想によれば、2020年には数百年に一度の変革期も一段落し、ポスト資本主義とでも言うべき、全く新しい世界がはじまるという。企業のあり方も大きく変わるはずだ。

資本主義においては、労働の対価として賃金が定義され、お金というものを基本的尺度に株式市場などの仕組みが作られてきた。ところが、ホリエモン事件が起こるまでもなく、多くの人がすでに気づいているように「何かどこかおかしい」のである。単にCSRとか企業の社会的責任論を言いたいわけではない。CSRも、儲けるためにしておいたほうがいいこととか義務行為、というレベルで捉えられているうちは、どうもやはりどこか違う気がする。

では、来るべき新しい時代でどういう価値観とか、基本的尺度が必要となるのだろうか? これについて現時点で明確に答えられたら、おそらく歴史上の人物になるうるだろう(笑)。ただ、「どこかおかしい」と考える理由として、金銭的分配が、価値の創造、あるいは社会全体最適化への寄与度に無関係に行われるような仕組みや考え方に、資本主義(の一部の仕掛け)が陥っているところにあるように思う。私は社会論は全くの専門外だが、それでも経営者のひとりとしてこの問いは考えていくべき大事なものと思っている。

ところで、今日、ネットコアの株主総会と取締役会があり、代表取締役社長というお役をいただいた。企業なんだからきちんと儲けていくのは当たり前として、社会に対してネットコアなりの+αの何ができるのかについて、代表権をもつ責任ある立場としてさらに考えていきたい。



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3 コメント

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Unknown (tss)
2006-03-21 18:35:18
おお、私がだれだか通じましたか(喜)。

リンク先、久しぶりに更新いたしました。
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ありがとうございます (v6くるくる)
2006-03-17 16:07:49
ありがとうございます。人間って、ある役についてがんばっていると、そのうちそれらしくなってくる、っていうのを、私の周りの方や私自身でも経験しています。「役が人を作る」ですね。そういう意味で自分自身の成長のチャンスとして捉えています。



#リンクたどりました。Sさんですね?

#ご無沙汰しています!

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社長就任おめでとうございます (tss)
2006-03-15 16:50:56
目出たいだけではなくてさらに厳しかったり重たかったりする仕事になるのだとも思いますが、さらなるご活躍を期待しております。



# なんて書いても私が誰だかおわかりになりませんよね…。

# 顔だけは認識していただいているようなのですが (^^;。
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