素朴な疑問に答えよう! 第三弾行きます。
(疑問)
「ルータなどは大分前からIPv6対応になっているのに、なぜIPv6への移行がすすまないのでしょうか?」
(回答)
うーむ、痛いところを衝いた質問です(笑)。
ひとつには技術的に見てIPv6仕様がIPv4と上位互換性がないということがありますね。WindowsのOSはバージョンアップしていくとき、ハードウェアやアプリケーションなどまで入れ替えていくことはありませんよね。また、いろんなバージョンがそれぞれのPCで動いていても何の問題もありませんよね。だからバージョンアップがスムーズに進むわけですが、IPv6はそのままではIPv4ネットワークとの乗り入れはできません。これは90年代前半にIPv6の標準化がなされたときに大きな議論となったそうです。でも、結論としては上位互換性を保証して中途半端な仕様とするよりは、既存のものにひっぱられない全く新しい優れた仕様にしようということで決まったのでした。この判断がよかったのかどうかは、これから何年もして評価が下るとは思いますけれど。
次の理由は案外IPv4のアドレスが当初の予定より長持ちしまっていること、IPv4関連の技術が進歩していることがあげられます。VoIPソフトとして有名なSkypeは何種類ものNAT越え技術を駆使しており、NAT不要というIPv6のメリットを消しているようにも思えます。
また、IPv6が誰にとってのどういうメリットになるかが、よく理解されていかなかったということもあると思います。これについてはここ2年ぐらいで急速に知見として積みあがってきたと思います。この辺についてはまた別途。
IPv6を決めていた頃って、IPの絶頂期で、少し技術者の悪乗りが過ぎたのではないかと思ってます。すなわち、IPv4との何らかの互換の仕組みを埋め込んでおけば、普及にこんなに歳月がかかるようなことも無かったのではないかと。
また、IPv6の問題点は、IPv6が有るがために、IPv6では無い代替の方式(例えばIPv4互換のIPv8)の検討が有形・無形の形で阻害されていることです。以前、「こうすればIPv4と互換でアドレス・スペースを増やすことが出来る」なんていう話をしていたら「WIDE関係者に銃で撃たれるよ」といわれて議論が止まってしまった事がありました。真偽はともかく、そういう感覚を持った人がたくさん居ることは事実だと思います。
私はIPv6の仕様化のころの1990年代前半はIPv6はおろか、IPv4すら単なるユーザでしたから、当時のことは知る由もありませんが、想像するに、ngtrans WGで移行の方法を検討すれば非互換でもいいや、って決めたんでしょうね。たぶんロジカルにはきれいですけど、ここに落とし穴があったんでしょう。
つまり、ngtransで考えられたトランスレータとかは別の箱を置く、コストを余分にかけないといかんようなソリューションばっかりだったわけです。これでは進みませんね。
ところで、後半部分ですが、IPv4があり、非互換のIPv6があり、それとは別にIPv4上位互換のIPvXを作るのは(少なくともこの期に及んで)私はあまり賛成できません。IPv6って既に結構いろいろ技術、商品・サービス、経験、ノウハウ積みあがってきています。それこそスクラッチから始めたら、どれくらいかかるでしょうか。それはv4の枯渇に間に合いますかねぇ?
でも、荒野さんの仰るように、IPv6にここまで投資してしまっている人たち(メーカ、ユーザ、学術系)も居ますので、現実的には難しいのかなぁ・・