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flexaret Ⅳのレストア、巻き上げカウンター

2008年02月15日 21時03分50秒 | flexaret Ⅳ レストア
※flexaret Ⅳのレストアについてのまとめはflexaret Ⅳのレストア、まとめにあります。

今回は巻き上げカウンターについてです。目次は以下の通り。

1.セミオートマット
2.巻き上げカウンターの仕組み
3.問題と対策




1.セミオートマット

クラシックカメラの説明を読んでいると、よく「オートマット(Automat)」を目にします。オートマットは一枚分フィルムを巻き上げると自動的にチャージされシャッターを切らない限り、それ以上巻き上げられない状態になる仕組みを表す言葉だそうです。それに対して、セミオートマットは、一枚分巻き上げるとそれ以上巻き上がらなくなるけれども、しかし、チャージは自動ではなく手動でする仕組みです。私的には、セミオートマットの方が好きです。チャージをする行為自体に何とも言えない充実感を覚えるからです。それはさておき、flexaretⅣはセミオートマットです。しかし、この一枚分巻き上げるとそれ以上巻き上げられなくなる仕組みが、内部を開けてみたところ、不具合を起こしやすい様です。実際、私のflexaretにもこの不具合が生じました。




2.巻き上げカウンターの仕組み

巻き上げノブ側の側板を外すと、巻き上げカウンターを制御している機構が現われます。枚数を表示する円盤を外した状態の写真で説明しますが、仕組みをつくるうえでの要点は、次の写真の「α」の爪が一定量巻き上げる度に矢印の方向に動き、巻き上げノブのギアに引っかかり巻上げが出来ない状態にすることです。ちなみに、シャッターのレバーの部品についている白いものは、前の持ち主が塗ったと思われるグリスです。悪しからず。



巻き上げノブのギアは次の写真のものです。



さて、先程の写真に戻ります。flexaretⅣがネット等で売られていると、「フィルムを装填しないとシャッター切れません」だなんて書いてありますが、あれは嘘です。このことについて触れながら、カウンターの仕組みを説明いたします。次の写真と先程の写真を見比べて下さい。次の写真は、指で裏蓋側に突き出ている部品を抑えている状態になっています。つまり、裏蓋を閉めたときのカウンター機構を再現しています。ここで、爪のついている「α」の部品を押さえ込んでいる部品が裏蓋に押されて矢印の方向に動いて「α」が解放されているのがわかると思います。



「フィルムを装填しないとシャッター切れません」と書かれているのは、まず裏蓋を閉めてこのように「α」が解放されないと話が始まらないからです。しかし、写真の通り、まだ「α」の爪は巻き上げノブを動かなくするところまでは動いていません。

フィルムを装填してフィルムを巻き上げると下の写真の太い軸がフィルムに引きずられて回ります。



この軸の端は下の写真の「1」のギアになっていて、この軸が回転すると「1」の歯車(見た目からしてギアというより「歯車」といった感じなので以降「歯車」と呼びます)が回ります。それと連動して「2」の歯車が回ります。



裏蓋を閉めて、突起を押さえ込むことと、フィルムを巻き上げて「1」の歯車を回すこと。この二つがなければ、本体のシャッターが切れる状態になりません。だから「フィルムを装填しないとシャッター切れません」と書かれている。つまり、以上の二つのことを手を使って再現しさえすれば、本体のシャッターが切れます。ただ、冬場は寒くて指が痛くなりますが。

さて、話を仕組みに絞ります。「2」の歯車の下についている突起が「2」とともに動きます。次の写真の丸で囲ってある突起がそれです。その突起に押されて、「α」を抑えていた「ω」が矢印の方向に動きます。この写真は動ききった状態です。これによって「α」がバネの力で矢印の方に動き、巻き上げノブに爪がはまり巻き上げられなくなる仕組みです。



後は、本体のシャッターを切ると、シャッターのレバーから出ている軸に「α」が押され次の写真の状態になり、その間に「ω」が「α」を抑えるところまで移動して、また一枚分巻き上げるまでノブが回るようになる。そういう仕組みになっています。






3.問題と対策

このflexaretⅣのセミオートマット機構が不具合を起こしやすいだろうと思うのは、構造上の問題があると見ているからです。以下、「3-1.フィルムを巻き上げて枚数表示は変わるのに、全く巻き上げノブが止まらずに巻き上げられてしまう」と「3-2.一枚目だけ巻き上げノブが止まらない」の二つにわけて問題と私のとった対策を提示します。


3-1.フィルムを巻き上げて枚数表示は変わるのに、全く巻き上げノブが止まらずに巻き上げられてしまう

先程、仕組みを説明した中で出てきた「α」の取り付けられ方が問題だと判断します。「α」はバネの力で動いています。しかし、このカウンター内部の地は滑らかではなく、また、「α」を止めるネジの「α」と接する部分は溝が無い状態にはなっているものの、寸法がギリギリになっています。



取り外す際に、きっとワッシャーが一つくらい入っているだろうと思っていたのですが何も入っていませんでした。つまり、摩擦係数が大きすぎて、この「α」が動かない。もしくは、必要な範囲まで動かない。これが、私のflexaretの巻き上げノブが止まるはずのところで止まらなくなる原因でした。この点については、ワッシャーを入れてもみてもよかったのですが、3-2で示す枚数表示の円盤との兼ね合いでワッシャーをいれるのは非現実的だと思います。油で対処しました。地の方にスピンドルオイルを塗って解決しました。「α」の周辺の部品の動きが悪ければ、そちらにも同じように対処すれば、当面は問題ないと思います。




3-2.一枚目だけ巻き上げノブが止まらない

これは枚数表示の円盤の構造と前述の「α」の部品との間の構造の問題だと判断しています。フィルムを装填し一枚目が準備されるまでに、前述の「2」の歯車は四回転しています。その度に巻き上げノブが止まらずに、一枚目まで回るのは、枚数表示の円盤の下にある、次の写真の矢印で示してある突起のためです。



この突起に「α」がぶつかるために、「α」が解放されても殆ど動けない。そのために、巻き上げノブが止まらないようになっています。さて、この写真の手前の方に突起が削られている部分があります。ここが、一枚目を準備した際に巻上げが出来なくなるために重要です。

正常に作動している状態では、次の写真のように、枚数表示の円盤の突起の削られている部分を、「α」の部品の爪が通過します。矢印でしめしてあるものが、この爪ですが、この位置まで来ます。



しかし、枚数表示盤の裏側の「α」の通過する部分がギリギリの広さになっているためか突起の削られている部分が荒削りなためか、「α」が枚数表示盤の裏側の何処かに触れます。そこで、摩擦が生じ次の写真の赤矢印で示した箇所のように、そこで引っかかります。そのため、緑矢印の箇所のように巻き上げノブを止めるところまで「α」が動きません。



これは、私の「α」の取り付けが不味かったのかもしれません。しかし、ちゃんとネジは締まるはずのところまで締めてます。その可能性は低いと思います。となれば、構造上の欠陥でしょう。解決策としては、いくつか考えられます。

a.「α」の動きが枚数表示盤との摩擦に負けないくらいまで速くなるようにする。
b.枚数表示盤の突起の削られているところを更に削る。
c.枚数表示盤と「α」との接触する箇所に潤滑油を塗る。

といったように。結局、私は、「c」を選びました。それによって、「α」の動きはかなりよくなりました。現在は、1枚目から12枚目まで正常に動作しています。ただ、出来れば、油は最終手段にしておきたかったなと考えています。確かに油を塗れば動くけれど、製造された当時の状態を知らない以上、油が今度どのような影響を及ぼすかはわからないので。油なら問題が生じても落とせばいいけれど、削るとなると再生不可能といった見方も出来るので、どう対処するかは、よく考えてから決めるとよいと思います。




さて、flexaretⅣ関連のレストア記事。今日までにかなりの量を書いてきました。今回の記事でひとまず、全て書きつくしたところです。記事の量も文字の数もかなり多くなってしまいました。これでは、当初の目的の一つ、つまり、同じようにして分解して失敗する人が一人でも減るように、少しでも、同じように分解した人に役立つようにといった目的を果たせそうにありません。量が多すぎて、目的の記事を探すだけで大変そうです。なので、次回、まとめを書こうと思います。「シャッターのこの部分には、この記事のここ」、「その問題には、あの記事のあの箇所」といった風にして見やすくするつもりです。


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1 コメント

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聞きたいことがあるのですが。 (ヤナ)
2016-12-15 12:19:59
こちらのサイトはまだ有効でしょうか?
ひとつ聞きたいことがありまして。
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