お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

絵本とアート

2010-10-04 | with バイリンガル育児


新学期、新年度で駆け回る9月は毎年たちまち過ぎてしまい、いつも、あっという間に10月になります。月が変わったことは、八百屋さんの店先がパアッと明るいオレンジ色になるのでわかります。オレンジ色と言えば、そう、ハロウィーンのかぼちゃ。わが家の近所の八百屋さんにもかぼちゃが山積みになりました。例年通り、大きいかぼちゃは店先にごろごろと無造作に並べられ、小さめのかぼちゃは干し草やトウモロコシで飾りつけたワゴンに山積みにされています。形も色もとりどりでそれぞれに表情のあるかぼちゃたちにはいつまで眺めていても飽きない不思議な魅力があり、まさにアメリカの秋の風物詩

……というわけで、このブログでは10月はいつもハロウィーンを意識して絵本を選んできました。でも改めて言うまでもなく、秋はいろいろな形容詞が似会う季節です。なかでも相性が良いのはアート。そこで今年は、ハロウィーンとともに、アートをテーマに何冊かの絵本を選んでみることにしました。

考えてみると、絵本は赤ちゃんが生まれて初めて目にするアートではないでしょうか。お母さんが読み聞かせてくれる絵本を一緒に眺めている時には、語彙も実体験も少ない子どもたち、また識字どころか発語以前の赤ちゃんは、まさに文字ではなく「絵」を見ているのですものね。ところがこれまで、『絵本』は『本』の赤ちゃん版/子ども版という扱いで、『本』として「テキスト」や「お話」に優先の観があり、「絵」はどちらかと言うと”挿絵”あるいは”イラスト”として副次的なものとして扱われてきたように思われます。

でも実は、アーティストが「挿絵」画家の立場を超えて自由に描き、創作した絵本には独特の伸びやかな味があります。たとえばクリケット・ジョンソン(Crickett Johnson)は、1945年の初版以来いまだに売れ続けている人気絵本"The Carrot Seed"の挿絵画家として知られていますが、その後1955年に、彼自身が出版した絵本"Harold and the Purple Crayon"でブレイクし、多数の絵本を刊行しました。"The Carrot Seed"と"Harold and the Purple Crayon"を読み比べてみると、いかにもお話先行型の"The Carrot Seed"に対して、主人公のハロルドが自由に描いていく絵がそのままストーリーになっていく"Harold and the Purple Crayon"には、なるほどア―ティストにはこういう仕事ができるのか・・・と思わず納得してしまう説得力があります。

このブログに何度も登場している"No David!"もしかり。全編、どのページもテキストは(イラストには登場しない)お母さんの一言だけ。でも、見開きページいっぱいに描き出されたデイビッドの「絵」が状況を、事情を語りつくしてあまりあります。この絵本、作者にしてアーティストのデイビット・シャノン(David Shannon)が、まだ幼くて"No"と "David"の2語しか文字が書けなかった時に描いた絵本が下敷きになっているそうですが、さもありなん、言葉がなくても絵だけで十分に饒舌な絵本です。

安野光雅さんも言葉のない絵だけの絵本で高い評価を得ている作家です。「10人の愉快な引っ越し」、「旅の絵本」など数え上げればきりがありません。日本の写真家である姉崎一馬さんの「はるにれ」も素晴らしい作品だと思います。

素晴らしいアーティストである絵本作家はほかにもたくさんいます。ところが、これらの作家たちの作品をアートとして評価しようという動きは最近ようやく始まったばかりの観があります。まとまった評論としては、最近出されたディリス・エバンス(Dilys Evans)の"Show and Tell : Exploring the Fine Art of Children’s Book Illustration"があります。

ディリスは、永年、絵本画家たるアーティストたちのエージェントを務めてきたアートディレクター。"Show and Tell ... "は、絵本の「絵」がいかに「言葉」以上に子どもたちの感情に訴え、いかに深い影響を子どもたちに与えるかを説き、子どもたちが人生で最初に出会うアートとしての絵本の「絵」の質がいかに重要であるかを説得力もって語っています。

絵本作家として知られるアーティスト自身が自らのアーティストとしての活動をまとめた本もあります。「はらぺこあおむし」他のポップで愉しい絵本の作家として日本でも大人気のエリック・カール(Eric Carl)による"The Art of Eric Carle by Eric Carle"がそれ。

あんなに明るい作品ばかり書いているエリックが、実は第二次世界大戦当時のドイツで少年時代を過ごしたこと。彼の挿絵画家としての最初の仕事は料理本のイラストだったこと。担当編集者が彼の才能を見込んで絵本作家に転じるようすすめたこと。アメリカの印刷技術では彼の絵が十分に美しく絵本にできなかったために最初の絵本(1, 2, 3, to the Zoo)はなんと日本で製作されたこと‥‥などなど、ファン必読のエピソードや写真が満載です。

アートの秋。お手元の絵本もあらためてご鑑賞ください。




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1 コメント

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Unknown (iiu)
2010-10-04 16:23:47
応援しています。心が熱くなる文章ですね!
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