お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

併読のパワー:10人のゆかいなひっこし

2010-07-06 | about 英語の絵本

Anno's Counting House

おいしい日本食が、海外でよく知られているお寿司やてんぷらに限られないように、日本が世界に誇れる文化はお能や茶道や華道に限られません。これまでは広く世界に知られる機会がなかったけれど、ぜひ世界中の人に知ってほしい!という優れた文化が日本にはたくさんあります。日本のオリジナル絵本もそのひとつ。お話も絵もクリエイティブなことはもとより、装丁から印刷・製本まで本当に素晴らしく、作家・アーティストと生産技術の粋が見事にコラボレーションした完成度の高い美しい絵本ばかり。だから、もっとどんどん世界中に紹介されてほしい!と思っています。

最近のメディアの急激な進化で、今世紀デジタルコンテンツはぐんぐん加速がついて国境を超え、瞬時に世界中にいきわたるようになると思います。でも子どもの絵本だけは、デジタルだけでなく、やっぱり紙の絵本も捨てがたい。絵本、特に日本の絵本は紙で残ってほしいなぁ……と今からひとりひそかに悩んでいます。

今日ご紹介するのは安野光雅さんの絵本です。安野さんは言わずもがな、世界中で愛され、高く評価されている、まさに日本が世界に誇る絵本作家。絵本作家に贈られる数々の国際的な賞に輝き、さらに1984年には国際アンデルセン賞を受賞。なお、その後も83歳の今日まで盛んに作家活動を続けています。日本でも1988年に紫綬褒章を、2008年に菊池寛賞を受賞、島根県津和野街には安野光雅美術館も創設されました。

実は、安野さんがアーティストとして、絵本作家としての活動に専念するようになったのはかなり遅く、40歳を過ぎてからです。というのも、安野さんの青春時代は太平洋戦争一色。戦後もしばらくは生活に追われて展覧会に出品する作品を描く余裕もなかった由。でもひとたび作家活動に専念するようになってからは、次々とほとばしるように、たくさんの作品が生み出されました。

作品は淡くて優しい上品な色調で、細部まで丹念に描きこまれた水彩画。絵本はそういう『絵』で構成されていて、テキストは少ないか、時にはまったくない場合も。でも、安野さんの絵は、静かですが、決して無口ではなく、むしろ饒舌。文字での解説はあまり必要ない気がします。親子でいつまで眺めていても飽きないばかりか、それぞれのページの絵に触発されて親子の会話が引き出される、実に不思議な絵本です。

娘と私がとりわけ大好きだった絵本は「10人のゆかいなひっこし」です。
10人の子どもたち(小人たち?)が、一軒の家からもう一軒の別の家へと順に一人ずつお引っ越ししていく……だけのお話なのですが、これが実に楽しい。まずは家が両方とも可愛い! 子どもの大好きな大きな屋根の、屋根裏風の最上階を含む数階建ての家で、これも子どもが大好きなかわいい窓がいっぱいついています。家の中のたくさんの小部屋は、インテリアから小物まで実に丹念に描きこまれていて、これがまた、それぞれ個性的で可愛い!

ページをめくる楽しみは、そのたびに一人ずつこっちからあっちへお引っ越ししていく子どもたちを「あれ、こっちのこの窓に見えていたあの子がいなくなった……あの子はどこへいったかな?」ともう一軒の家の中で探し回ること。丹念で美しい『探し絵・隠し絵』は、何回繰り返して眺めても、その都度何かしら発見があり、飽きません。親子の会話も「あの子はどこへ行ったかな?」「あ、ここにいた!」にとどまらず、「この子のお洋服かわいいねぇ」、「この子のお部屋は散らかっているねぇ」、「あ、この子はお昼寝しちゃった」などなど無限大に広がること請け合いです。

安野さんの絵本はたくさん翻訳されていますので、作家名で検索してみてください。娘と私がそろって大好きだったもうひとつの絵本は「初めてであう数学の本」シリーズ(英語版は"Anno's Math Games")です。数学って美しいのね!と感動しました。このシリーズも、数学の話をする必要もないくらい、眺めるだけで十分楽しめます! お薦めです。



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