「流星燦華」
暑くなってまいりました…いやほんと暑いです…なんだこれ…。「北陸」といってるのに全然普通の気温だとおもいますよ!!
色々落書きが貯まってきたので。双子メイン。
ぴくのく参加する前にPFFK供養落書き
ぴくのく。理髪師と探偵
服
キスの日で何故かバリオスとあいこ。人参と角砂糖を取り換えるので間接ちゅーになるかもしれない。
うなじがかきたかった
アイコン用スチパンジグ
たまには版権、ヴォーティマーとシュラン
アンティーかいたけどヴォーティマーのほうがアンティーっぽくかけたという悲しみ
今週消費したもの
・神々の悪戯
作画の良いクソアニメですが作画が良すぎて見てしまうという…ミステリー…。「バルドル」ってキャラがイチオシです。
・バディ・コンプレックス
あの悪妙高きヴァルヴレイヴの後にサンライズが出していた、一期前のアニメ。
速水さんが出ているときいて一話だけ昔みたのですが、「レッツ・カップリング(男の子同士で)」「ナイスカップリング!(男の子同士で)」という発言の数々に心をへしおられて、見るのをやめた記憶があります。
ただ、ツイッターで「カイン大佐(ヴァルヴレイヴで私が死ぬほど愛してたキャラ)の無能具合」と「アルフリードさん(イチオシキャラ)の有能具合」を嫌味にならない感じで教えてもらって見てみたら…
見事に、ド嵌りしました。
アルフリードというキャラが、「部下からも慕われ、上司のミスをさりげなくカバーし、野心家だけどそれでいて良心を忘れない」という素晴らしいキャラで…。(最初この人が速水さん声だと思ってたんですが。)素晴らしい。
ヴァルヴレイヴの後に来てしまったせいで全然定評が付かず二期があるかどうかも判らないんですけど見たいなー。
ただカイン大佐は見た目で総てを補うなぁと年齢表造りながら思ったのも事実です。
イチオシCPはアルフリードさん×マルガレタさんという、ヘタレのくせに高飛車な美女キャラなんですが、バディコン自体の供給が少なくて全然満たされません…。
二次創作しようにもあと創作畑に長くい過ぎて、「IF」について考える能力が著しくおちているのか、「この二人はできてないやろ」と一度思ったらそれをひっくり返せず苦しい状態が…。アルマルください。
・ブレソル
エル姐のまさかの過去とキャラ崩壊。エル姉が戦っている姿をみてショックをうけていたハヅキが、「そう、女将は、いい人なんだ…」って呟いてからの最後の展開は…急といえば急でした。
エル姐が街娼だったころ、兵に追われて傷ついた男に出会う
↓
介抱したところ、目を覚ました男は「俺が眠ったら、兵に密告をしろ。俺の首には賞金がかかっているから、お前にやる。」と。「何故」と聞くエル姐に対し「惚れたんだ」との一言。
↓
勿論密告はせず、男は「迎えにくる」との言葉を残して姿を消す。しばらくしてからふらりと戻ってきた男との蜜月の後、「暗殺者(主人公)」の手によって男は殺される。
主人公をただ殺すだけでは復讐にならない、と、わざと主人公が人間らしい感情を取り戻してから友人を殺すあたり陰湿だと思う反面、「いい人である女将はなんのフラグだったのか!!」という突っ込みはあります…。このアニメ着地点どうしたいんだろう…。まぁいいか!
・地上のヴィーナス(サラ・デュナント)
ロレンツォ無きあとのフィレンツェの混乱の時代を、「芸術を愛した」一人の変わりものの女性を主人公として描いたもの。
んーーなんだろう面白かったんだけどなぁ…こう…なんていうか…「総てが家と修道院の中」で起きてることでしかなくて。
・悪魔の薔薇(タニス・リー)
この人の名前をあちこちで見ているんだけど、ちゃんとしたものを読んだことはない・・・。気がする。タニス・リーの短編集です。
「アン・ライス」と同系列といわれてますが、私のイメージだとそこまでエロくない…日本人にすると多分「篠田真由美」あたりだとおもいます。
なんというか、「短編」でしっかりとした「ファンタジー」を描いてくる人だなというイメージ。アラビアンナイトからいつの時代とも知れぬパリ、イスラムの聖地まで、幅広くしかも淡々としているので…キャラクターに感情移入させるわけではなく、ただただ「傍観者」という気持ちの良さに浸れます。
このくらいの短編書いてみたいんだけど、いつものキャラじゃ無理かなぁ。
追記は昔ちょっとだけ書いた小説の第一章です。真珠の話。
お方様がお子様を産みおとされたのは、丁度白んだ空から次の朝日が昇ってくるころでした。
前の晩から、それはそれはひどい苦しみようだったこともあり、私たち一同、祈る気持ちでまんじりともせずにいたものです。その思いは父君となられた方も同じだったのでしょう。知らせが届くや否やこちらにいらっしゃいました。産後いくばくもなく、疲れ切った女人に面会を求めるなどとご無体な、とも思いましたが―。一晩中お待ちの方を無碍に追い返すわけにはいかないでしょう、とお方様は心配する私たちを宥めるように微笑んで仰いました。
お方様は元々たいへんほっそりとしたお方でしたが、産み月が近くなるにつれからだはひどくお痩せになっておりました。出血は止まらないにも関わらず、月光のように白いお肌には血の管がくっきりと浮いておりましたので、御目通りの為に手首や首元にも白粉をはたいて差し上げなければなりませんでした。人ならざるお美しさの方でしたが、その時ばかりはこの世のものとも思えずに、私は震えながらお支度をお手伝いしたものです。元気な男の子でしたよ、とお伝えする声も、自分でも情けないほど小さなものでした。
「―ありがとう。」
誇らしさと、嬉しさと―何故か一抹の物悲しさを抱いて微笑まれたあのお方の笑顔が、今でも忘れられません。
それからほどなくして、荒々しい靴音が廊下をやってまいりました。静謐を旨とするこの祈りの塔に似つかわしくない乱雑さで、すぐ足音の主はわかります。
部屋に入られた彼の御方は、お方様がまだ床にいらっしゃるのに一瞬驚いたようでしたが、すぐに上機嫌に微笑まれて寝台に腰掛けられました。
「―男児だそうだな。よくやってくれた!」
「ありがとうございます…ですがまだ、息子の顔を見ておりません。」
「おお…そうだったな。」
乳母に抱かれた赤子は、酷く大人しい子で、ぱっちりとした目を見開いて辺りを見回しておりました。お方様は抱かせてください、と弱々しく手を伸ばされましたが、その手はお子様に届く前にはっしと捕えられてしまいました。
「これは褒美だ。」
捕えた手に口付け、細い指と腕にするりと装飾品を通しながら彼の御方は仰いました。それは真珠を連ねた大変豪華な首飾りと腕飾りでした。大小さまざまな珠が、まるで海の泡のように自由に連なっている様は女ならばだれでも溜息をついてしまうほど美しいものでしたし、大変よくお似合いでもありましたが、お方様の弱った腕にはひどく重たかったのか、まるで枷をかけられたかのようにその手はぱたりとシーツの上に落ちてしまいました。
「よく似合う…次は首を。」
勿論そんなことなど、喜びに溢れている彼の方は気付くことはなかったのでしょう。僅かに頭を垂れたお方様の首に、彼の方はお手づから首飾りをかけて差し上げておりましたが…私には何故かそれが酷く残酷な光景に見えたものです。
夜空の星は時折流れ、地上に落ちる。
海におちた星を貝が飲みこんだ時、それが真珠として残るのだと言う。
私が住んでいる村の近くは「星が落ちる海」として有名で、漁港であると同時に真珠がとれる漁村としても名を馳せていた。
私達の村はとても恵まれているのよ、と、遠くから越してきたお母さんは言う。砂浜と切り立った崖が同時に存在するこのあたりでは、魚も海草も豊富だし、気温の変化が激しいせいか海獣の肉は美味で、塩に漬けておけば珍味として都で高額に売れる。でも、貝を開いたとき稀にとることができる真珠の価値は―やっぱり他のものとは比較にならない。
漁師の父親が海獣と魚をとり、すばしこい弟はそれを手伝う。うちの家計はだいたいそれで賄えるので、家族のなかでの私の仕事はいつのまにか、貝を採ることが主になった。ゆらゆらと揺れる波のなかで、弟と父親が引く網を横目に、私は海草をかき分けてひたすら貝を探す。引き上げた貝の中から真珠がみつかることは珍しいけれど、見つかったその日はちょっとだけごちそうだ。
今日の海はとても温かく、どこまでも透明で、海の底まではっきりと見える。銀色の大きな魚がゆったりと脇をすり抜けていくけれども、私が追いかけようとした瞬間猛然と逃げ出してしまうのはわかりきっているので、捕まえようなんて思わない。海底に辿りついたら眼を凝らして、実際手で岩肌を触って貝をさがすが、海底に降りてからは時間との戦いだ。ひとつ、ふたつ、みっつ。真珠がはいっていなさそうだけれども、お夕飯用の巻貝もよっつ。腰に付けた網に入れると勢いよく地面を蹴って海面を目指す。そんなことを繰り返し、結局その日見つけられた貝はおよそ15個程度だった。お父さんと弟の方は、大きな海獣を仕留めたようで、三人でうんうん唸りながら網を引いてかえることになった。
家ではお母さんとお父さんが魚と獣をさばき、私と弟はその隣のテーブルで、貝を開く。ひとつめは外れ、ふたつめも外れ。
「わ!!!やった!!!でっかい!!!」
となりで弟が嬉しそうに叫び声をあげて、真珠を取り上げた。何故か得意顔で目の前に突きつけてくるそれを「わかったわよ!でもそれをとったのは!わ・た・し!!」と押しのけて次の貝にナイフを入れた。採ったのは私だからなんら思うところはない筈なのに、あそこまでドヤァ…とした顔をされると何故か腹が立つ。
「あ。」
自分でも間抜けな声が聞こえた。
ころん。零れ落ちた真珠は、ひとつながり。
それほど大きくはないけど、夜空の双子星が手をとりあったまま同じ貝に飲みこまれたようだった。白く淡い光沢の上に、明け方の空のヴェールをふわりと被せたような不思議な色合いで、片方にだけ金色の欠片がうっすら見えた。
「二つなのに…一つだ…」
「うわあ!!すっげーーー!!父さん!!母さん!!!ふたつある!!!」
ふたつがひとつだ、なんてあまりにも当然な私の発言とは対照的に、弟は大絶叫して立ち上がった。後から考えてみれば弟の発言もイマイチ的を得ていないものだったが、何事かと両親が手を拭きながらこちらにやってくる。机の上に置かれているひとつながりの真珠を見て、両親もぽかん、という表情になった。
結局その日は、あまりの出来事に御馳走どころではなく。家族総出で海の神様に、感謝の祈りを差し上げるだけで終わってしまった。あまりにも大事過ぎて、逆に何か不幸が起こるのではないかと母親などはそわそわしていたが、津波がくることもなく嵐がくることも、暫くは無く―。その数日後、大きな町への荷運びの時期が来た。
町への荷運びは、それぞれの家族から売り手として一人、荷物の番として村の若者の何割かが参加することになっている。ただ今回は偶々、真珠がたくさんとれた家が多かったのか、特別に「傭兵」という仕事の人が一人、きてくれることになっている。
今回はお父さんが荷物番兼売り手として出ていくはずだったが、出発の直前、お母さんが私も行ってように、という風に言いだした。
「いつものお店に、真珠を売りにいってきて。それから雑貨屋さんで買ってきてほしいものがいくつか。それからこれは…。」
お母さんがそっと小さな袋に真珠を二粒、入れて首にかけてくれた。私が見つけた双子真珠には絶対に及ばないけれど、でもよく晴れた日の雲のように真っ白で可愛らしいものだった。
「ティッカも年頃だからね。他の真珠が高く売れて、頼んだ買い物が全部きちんとできたら、この二つは好きなように使いなさい。年頃だからお洒落に…耳飾りにしてもらうといいわ。」
お洒落と言われてぴんとくるものはなかったけど、でも綺麗なものが手元にあるのは嬉しいことだ。売り物にする残りの真珠は、塩漬けの魚の樽に紛らわすようにして、馬車の奥へと詰め込んだ。
私達を守るために雇われた傭兵さんはナディールさんという名前の人だった。とても明るい目の色をしているせいか、いつも眩しそうに眉をしかめているけど、そんなに怖い人ではないだろうというのは、休憩中、馬にお昼ご飯の半分をとられて何とも言えない表情で、残りの半分を齧っているのを見たから。
そんな光景を見られてることに気付いたのか、傭兵さんは一瞬更に難しい顔になって会釈をしてきた。よかったら、と林の中でとってきた野いちごを渡すと、「どうも。」といってもくもくと食べる。なんだかその様がとても馬っぽくて、ちょっと笑ってしまった。
私が笑ったことでほっとしたのか、傭兵さんはぽつぽつと私の村での真珠採りについて色々と質問をしてきた。彼は元々、この村から遥か遠いところで真珠採りをさせられていた(していた、とはいわなかった)らしく、一粒を見つけるための苦労はなんとなく判っていると言うことだった。そう言えばなんで私が真珠を採っていると判ったのだろうと聞くと、
「お前の髪の色が、よく海焼けしてるな。とおもった。」
「!!!」
自分でもなんでそんなことをしたのかよく判らないけど、何故か私は慌てて髪を押えつけた。赤茶けた髪の色は私やこの村の人間にとっては慣れ親しんだ色だけれど、でも海に潜らない村長さんのところの娘さんや、市場の子達とは全く違う色をしているのは判る。
「そっか、みんな、そうだし、あ、あんまり考えたことなかった、かも。海焼けっていうんだ!そうなんだ!」妙に裏返った声で返答するが、ナディールさんはその言葉の途中でふっと厳しい顔になった。
「…急ごう。」
「えっはいっ!!」
お昼を食べていた村の一行をせきたてて、出立の準備をしてもらう。どうしたのかね?などとのんびり言いながらも、ナディールさんのただならぬ雰囲気になにか思うところがあったのか、皆はいそいそと準備をはじめてくれた。
うちの荷物は全部荷台の中だから、そもそもまとめる必要が無い。荷台に乗り込もうとして…一人、足りないということにそこで気付く。
さっきまで私と一緒に、荷台で番をしていた子がまだいない。もともとのんびりした子だからまだ支度をしているのかもしれないし、もしかしたらさっきの私とおなじように、おやつを探しに行っているのかもしれない。
「…んー…」
野イチゴがなっているのはあそこだよな、と思いながらがさりと茂みを潜り抜けた瞬間、その子と目があった。
「探し、た…」
「おや、お迎えか?友達思いだねぇ。」
急に腕を掴まれたかとおもうと、茂みの向こう側に引きずり込まれるニタニタとした笑みを浮かべた男達が、そこには武装して立っていた。
私達は広間に連れ出された。盗賊の数は30人そこら、キャラバンの人数よりは少し多い位だが、口笛を吹きながらぞろぞろと出ていく盗賊達からは、「こんな村の男達など皆殺しにできる」といった余裕がありありと見て取れた。
ぴかぴかに磨き抜かれた曲刀は、森の光の中でも蒼褪めたような、ぞっとする光を放っている。真昼の森なのにそこだけは死神の影が写り込んだようで、なんでだろう、この盗賊達は何人も人を殺しているに違いない…と感じた瞬間、こわくて涙が止まらなくなった。
「ほー、ナディール、やっぱテメーか。」
人質をとられて動けないのは村の人だけではなかった。村人を庇うように盗賊達に刃を向けてナディールさんは立っていたが、それでも人質がいることで切りかかりあぐねているのは間違いない。
「武器を捨てろ!!!!娘達がどうなってもいいのか!!」
「ひっ!!」
ぐいっと喉に冷たい金属の感触がぶつかった。堪え切れなくなった友達の泣き声を聞きながら、私はぐっと唇を噛み締める。
「娘たちを解放しろ…。条件はなんだ。」
さっき喋ってた時とは打って変わった、地を這うような声でナディールさんは尋ねる。震えあがるような声音だったが、盗賊は笑っただけだった。
「テメーは話相手じゃねぇよ!村長か、とにかく今回のキャラバンの責任者を出せ!!おめーはさっさと武器をおいて膝をつけ!!地面にキスしろ!」
手を上げたのは、お父さんだった。
ナディールさんはちらりとお父さんと目を合わせたが、怖い位の無表情になってそろりと曲刀を地面に置いた。走り寄った盗賊が三人がかりでその背中を押えつけて地面に引き倒し、さっき怒鳴った一人…多分これが盗賊の頭…がげらげら笑いながら刀の柄でナディールさんの頭を殴りつける。ガツンと嫌な音がした。
「久しいなぁ、んん?お前にはオレの息子が随分と世話になったなぁ?」
「し、るか…」
押えつける盗賊の手に力が籠る。盗賊の頭が腰に帯びていた木のこん棒を振り上げた。鈍い音がして、ナディールさんは動かなくなったが、盗賊達はゲラゲラ笑いながら二度、三度と、手にしていたこん棒が壊れるまで殴る蹴るを続けた。しんと静まり返った森の中、バカ笑いだけが延々と響く…。耳を塞ぎたかったがそれもできずに私はその光景を眺めていた。
「さて、お父様方。我々はですね、紳士的なお話をしに参りました。」
さんざ殴りつけて満足したのか、盗賊の頭は今までとは打って変わった慇懃というには軽やか過ぎる口調でお父さん達に向き直った。
「我々も紳士ですのでな、生きていくための御金を全部奪おうとは思いませんよ。持ち運びも面倒ですし磯臭ェから、魚や海草はいりません。ただ俺達にも、贅沢をする金が必要でしてね…だから、娘達の命が惜しけりゃ真珠を根こそぎ出せ!!!全部だ!!」
お父さんがぐっと奥歯を噛み締めるのが見えた。キャラバンのリーダーになるのは、その時運ぶ荷の価値がもっとも高い家の人だ。もしかしたらほんとうに、真珠を全部、渡してしまうのかもしれない!
そう思った瞬間、怖かったけれどもそれ以上に腹が立った。
「おとうさん!!!たすけて!!どうしていってくれないの!!真珠は双子真珠だけだって!!」
海と生きていくのは大変だ。私は海が好きだけれど、村の中には、酷い目にあって海に潜れないという子がいる。片足をなくしてしまったお爺さんがいる。海は決して優しいばかりじゃない。私達に与えるし、奪いもする。
だけど。
こんな、海に感謝することも知らず、海に潜ることも知らなそうな奴らに言うがまま、荷物を渡してしまったら。それこそ海に失礼なんじゃないかという気がする。私達が頑張ってきたものを、そっくりそのままとられるなんて絶対に許せない!!
「でもその真珠はものすごく価値のある双子の真珠よ!!!だから今回はこんなに大掛かりなの…私が首からさげてる袋の中に入ってるわ!!おねがい、たすけて!!怖いよお父さん!!」
口からべらべら出てきたのは真っ赤な嘘の数々。本物の真珠は肉と一緒に樽の中で、多分バレたら私は殺されてしまうんだろう。でも、こんな盗賊達のいいなりになるのは絶対に嫌だった。私の首にナイフを突き付けていた盗賊が小さな袋を引っ張り出すと中身を改めてにんまり笑った。「ほーぉ、これが件の双子の真珠か。確かに見事だなぁ。」
(残念それじゃないわ!!よく似てるように見えるでしょうけど!!)
私は内心舌を出しながらもいよいよ泣きわめく。命がけであることは間違いないから涙は本当に、夏の雨のように出てきた。助けておとうさん!!これはもうあげて!!死にたくない死にたくない!!まだお嫁にすらいってないのに!!最後の方は何をいっているか自分でもよく判らなかったが、盗賊達はげらげら笑っていた。本当にこの盗賊達はよく笑う…。
ひゅっ。
その笑い声をからかうように、突然風を切る音がした。何が起きているのかよく判らないまま、背後の男達が乱暴なわめき声をあげる。「やべぇ!!敵だ!!撤退だ!!」との怒声とともにぶつりと首から小袋が引きちぎられて、体が解放された。
気絶していたと思えたナディールさんが信じられない行動に出たのは次の瞬間だった。自分を押えつけていた盗賊達の力が緩んだのを見て一人を跳ね起きざま殴り倒し、呆けたような顔のもう一人に、胸がすく様なパンチを繰り出す。
拳が見事に盗賊の鼻柱に吸いこまれた。顔面を血だらけにして泡を噴いて倒れる盗賊は完全に気絶していた。そして最初に殴られた盗賊が酔ったようにふらふらしながら無様に逃げようとする所に後ろから組みついて、ぎりぎりと首を締めあげる。「ぐへ」と蛙のような声を上げて二人目が気絶した。地面に落ちた刃を拾い上げて投擲するが、それは逃げていく盗賊の脇をかすめて地面に落ちた。血のしみが点々と、草の上にまばらに落ちた。
「陛下の言う通り…見事な腕前だ。」
穏やかな声が、背後から聞こえた。思わず振り返った私は、一瞬戦か正義の神様が現れたのかとぽかんとなる。白い馬に乗ったそのひとは、今まで見たことがないほど綺麗な顔をしていて、月光のような朝霧のような、なんともいえない綺麗な色の髪をひとつにくくって仕立てのいい服に身を包んでいた。ナディールさんは膝をつき、私も思わずそれに倣ったが、自然とそうさせてしまう雰囲気があるひとだった。
「あ」
目線を下げた瞬間、足元にじわりと赤いものが這い寄ってきて、私は思わず後ずさる。地面に倒れた盗賊の躯から広がった血だまりに、先程の風を切る音を思い出す―。それは、どうやらその人が放った弓だったのだと気付いた。死体は一つではなかった。首を頭蓋を貫かれて倒れ伏す躯は6つ。どの矢にも、その人の髪によく似た銀色の鳥の羽が飾られていた。
「お褒めにあずかり光栄です。」
「二人を捕えたのなら、奴等の根城を探れるな…御苦労だった。街までは俺も同行しよう。…お前は少し休め。」
盗賊も怖かったが、死体の横で淡々としたやり取りをする二人も恐ろしく、私は気が付いたら意識を手放していた。
がたごとと荷馬車が揺れる。小刻みな振動に一瞬頭がぐらぐらと揺らぐが、荷台に腰掛けて不器用に包帯を巻く男性の姿が、「あれは終わったこと」なのだと告げてくる。起き上った私を見てほっとしたような表情を浮かべたナディールさんは、改めて見ると引きずられた麦袋みたいにボロボロだった。
「怖かったな。」
殴られたせいか赤くはれ上がった腕をぎこちなく持ち上げて、私の頭をぽんぽんと撫でてくれる人に、寧ろ怖かったのは死体の横で平然としていられる貴方達かもしれないです、とは言えず、私はとりあえず頷いた。
「………お前は偉かった。……あの状況下で、よく戦った。」
「だってものすごく腹が立ったんです。大変な思いをして。あの人たちだってちゃんと働けばいいんだわ!そしたら人の物をとるのがどれだけ悪いことだか、判るはず。」
「…そうだな。真珠採りは大変だ。」
ナディールさんは何かを懐かしむかのように、少し目を細めた。
「本当に、命がけだ。」
「…………」
懐かしいというだけではないな、と感じたのは、ひどく懐かしそうな目をしているにもかかわらず奥歯が鳴る鈍い音がしたからだった。私は少しだけ、「命がけ」の真珠採りについて考えた。暫く黙っていたあと、ナディールさんはまったく別のことを口にした。
「お前があそこであぁ言った御蔭で、盗賊達の注意を削げた。」
「……え。」
その口ぶりは、まるで助けが―あの人が来ることを知っていたかのようだった。多分それは私の表情に露骨にでていたらしい、続いた言葉はそれを肯定するものだった。
「…ああ、俺は傭兵じゃない。だが皆を安全に連れていって、連れて帰るのが今回の俺の仕事だっていうのはほんとだ。騙していたことを…怒るか。」
無言で首を横に振ると、それならよかった、とナディールさんは小さく息を吐いた。ぎくしゃくとした動きでまた包帯を巻きはじめるのを見かねて、やったげます、と申し出ると、「ありがとう」と包帯をこちらに託してくる。揺れる荷馬車の中できちんと包帯を巻くのは至難の業だったが、本人が巻くよりは幾分綺麗に巻きあがった。頭にできた大きなたんこぶと裂傷に薬を塗る間、ずっとナディールさんはじっとしていた。
「ところで、あの盗賊達は―。」
「捕えた二人は今、後ろの荷馬車を借りて閉じ込めている。街まで連れていって、そこで牢に入れる予定だ。…お前の荷を持ち出した奴は捕まえられなかった…。すまない。」
「いいんです。もっていかれたやつは、大きさが似てるだけのただの真珠だし。その分、他の奴をがんばって高く売ればきっと元はとれます。でもそうじゃなくて、あの―死んじゃった、ひとたち。あのままにしておいたら…」
「死んだ盗賊については、簡易葬儀と清めだけして置いてきた。死出の旅路に、迷うことはない。」
「え、本当ですか?だって誰がお清めを…。」
葬儀や清めができるのは、神殿の司祭様や巫女様だけだ。そんな短時間で、神殿から人を呼ぶなんてできるわけがないと思った瞬間、頭をよぎったのはあの、弓を携えた美しい人だった。
「あの、私達を助けてくれたあの人が?」
「ああ。武人だが司祭でもいらっしゃる。」
「武人なのに司祭…なんなんですかそれ…?」
ナディールさんは一瞬難しい顔をした。
「……たいへん身分の高い方だ…。だがお前達に名乗られるかどうかは…あの方が決めることだ。すまない。」
「謝んないで。さっきから謝ってばっかです。どう考えたって一番悪いのは盗賊だし、あの人は私達を助けてくれた人だし…それにナディールさんだって、人質が無ければ、あいつらなんて追っ払ってくれたでしょ?」
「…わかってもらえると助かる。」
突拍子もない返答に、私は一瞬何を言われているのか判らなかった。
「えっほんとに!?本気でいってる!?それ!?」
「それくらいできないならば、今回派遣されなかった。」
「え!」
「そもそも、人質がなければ村の男達も戦った筈だ。人数自体は然程多くない―まず、間違いなく、負けない。」
「えー!!」
じゃあこのピンチは私達のせいだって言うんですか!詰め寄るとナディールさんはぎょっとした顔になっていやちがう。そういう意味じゃない、と慌てて手を振って否定する。その時あまりにも勢いよく振って傷に響いたのかナディールさんはまたしても唸る派目になり、主に私の一方的な大騒ぎを聞きつけてやってきた村の男性がそれ聞いて大爆笑し―。
そのあとの道中は、とても賑やかなものになった。
暑くなってまいりました…いやほんと暑いです…なんだこれ…。「北陸」といってるのに全然普通の気温だとおもいますよ!!
色々落書きが貯まってきたので。双子メイン。
ぴくのく参加する前にPFFK供養落書き
ぴくのく。理髪師と探偵
服
キスの日で何故かバリオスとあいこ。人参と角砂糖を取り換えるので間接ちゅーになるかもしれない。
うなじがかきたかった
アイコン用スチパンジグ
たまには版権、ヴォーティマーとシュラン
アンティーかいたけどヴォーティマーのほうがアンティーっぽくかけたという悲しみ
今週消費したもの
・神々の悪戯
作画の良いクソアニメですが作画が良すぎて見てしまうという…ミステリー…。「バルドル」ってキャラがイチオシです。
・バディ・コンプレックス
あの悪妙高きヴァルヴレイヴの後にサンライズが出していた、一期前のアニメ。
速水さんが出ているときいて一話だけ昔みたのですが、「レッツ・カップリング(男の子同士で)」「ナイスカップリング!(男の子同士で)」という発言の数々に心をへしおられて、見るのをやめた記憶があります。
ただ、ツイッターで「カイン大佐(ヴァルヴレイヴで私が死ぬほど愛してたキャラ)の無能具合」と「アルフリードさん(イチオシキャラ)の有能具合」を嫌味にならない感じで教えてもらって見てみたら…
見事に、ド嵌りしました。
アルフリードというキャラが、「部下からも慕われ、上司のミスをさりげなくカバーし、野心家だけどそれでいて良心を忘れない」という素晴らしいキャラで…。(最初この人が速水さん声だと思ってたんですが。)素晴らしい。
ヴァルヴレイヴの後に来てしまったせいで全然定評が付かず二期があるかどうかも判らないんですけど見たいなー。
ただカイン大佐は見た目で総てを補うなぁと年齢表造りながら思ったのも事実です。
イチオシCPはアルフリードさん×マルガレタさんという、ヘタレのくせに高飛車な美女キャラなんですが、バディコン自体の供給が少なくて全然満たされません…。
二次創作しようにもあと創作畑に長くい過ぎて、「IF」について考える能力が著しくおちているのか、「この二人はできてないやろ」と一度思ったらそれをひっくり返せず苦しい状態が…。アルマルください。
・ブレソル
エル姐のまさかの過去とキャラ崩壊。エル姉が戦っている姿をみてショックをうけていたハヅキが、「そう、女将は、いい人なんだ…」って呟いてからの最後の展開は…急といえば急でした。
エル姐が街娼だったころ、兵に追われて傷ついた男に出会う
↓
介抱したところ、目を覚ました男は「俺が眠ったら、兵に密告をしろ。俺の首には賞金がかかっているから、お前にやる。」と。「何故」と聞くエル姐に対し「惚れたんだ」との一言。
↓
勿論密告はせず、男は「迎えにくる」との言葉を残して姿を消す。しばらくしてからふらりと戻ってきた男との蜜月の後、「暗殺者(主人公)」の手によって男は殺される。
主人公をただ殺すだけでは復讐にならない、と、わざと主人公が人間らしい感情を取り戻してから友人を殺すあたり陰湿だと思う反面、「いい人である女将はなんのフラグだったのか!!」という突っ込みはあります…。このアニメ着地点どうしたいんだろう…。まぁいいか!
・地上のヴィーナス(サラ・デュナント)
ロレンツォ無きあとのフィレンツェの混乱の時代を、「芸術を愛した」一人の変わりものの女性を主人公として描いたもの。
んーーなんだろう面白かったんだけどなぁ…こう…なんていうか…「総てが家と修道院の中」で起きてることでしかなくて。
・悪魔の薔薇(タニス・リー)
この人の名前をあちこちで見ているんだけど、ちゃんとしたものを読んだことはない・・・。気がする。タニス・リーの短編集です。
「アン・ライス」と同系列といわれてますが、私のイメージだとそこまでエロくない…日本人にすると多分「篠田真由美」あたりだとおもいます。
なんというか、「短編」でしっかりとした「ファンタジー」を描いてくる人だなというイメージ。アラビアンナイトからいつの時代とも知れぬパリ、イスラムの聖地まで、幅広くしかも淡々としているので…キャラクターに感情移入させるわけではなく、ただただ「傍観者」という気持ちの良さに浸れます。
このくらいの短編書いてみたいんだけど、いつものキャラじゃ無理かなぁ。
追記は昔ちょっとだけ書いた小説の第一章です。真珠の話。
お方様がお子様を産みおとされたのは、丁度白んだ空から次の朝日が昇ってくるころでした。
前の晩から、それはそれはひどい苦しみようだったこともあり、私たち一同、祈る気持ちでまんじりともせずにいたものです。その思いは父君となられた方も同じだったのでしょう。知らせが届くや否やこちらにいらっしゃいました。産後いくばくもなく、疲れ切った女人に面会を求めるなどとご無体な、とも思いましたが―。一晩中お待ちの方を無碍に追い返すわけにはいかないでしょう、とお方様は心配する私たちを宥めるように微笑んで仰いました。
お方様は元々たいへんほっそりとしたお方でしたが、産み月が近くなるにつれからだはひどくお痩せになっておりました。出血は止まらないにも関わらず、月光のように白いお肌には血の管がくっきりと浮いておりましたので、御目通りの為に手首や首元にも白粉をはたいて差し上げなければなりませんでした。人ならざるお美しさの方でしたが、その時ばかりはこの世のものとも思えずに、私は震えながらお支度をお手伝いしたものです。元気な男の子でしたよ、とお伝えする声も、自分でも情けないほど小さなものでした。
「―ありがとう。」
誇らしさと、嬉しさと―何故か一抹の物悲しさを抱いて微笑まれたあのお方の笑顔が、今でも忘れられません。
それからほどなくして、荒々しい靴音が廊下をやってまいりました。静謐を旨とするこの祈りの塔に似つかわしくない乱雑さで、すぐ足音の主はわかります。
部屋に入られた彼の御方は、お方様がまだ床にいらっしゃるのに一瞬驚いたようでしたが、すぐに上機嫌に微笑まれて寝台に腰掛けられました。
「―男児だそうだな。よくやってくれた!」
「ありがとうございます…ですがまだ、息子の顔を見ておりません。」
「おお…そうだったな。」
乳母に抱かれた赤子は、酷く大人しい子で、ぱっちりとした目を見開いて辺りを見回しておりました。お方様は抱かせてください、と弱々しく手を伸ばされましたが、その手はお子様に届く前にはっしと捕えられてしまいました。
「これは褒美だ。」
捕えた手に口付け、細い指と腕にするりと装飾品を通しながら彼の御方は仰いました。それは真珠を連ねた大変豪華な首飾りと腕飾りでした。大小さまざまな珠が、まるで海の泡のように自由に連なっている様は女ならばだれでも溜息をついてしまうほど美しいものでしたし、大変よくお似合いでもありましたが、お方様の弱った腕にはひどく重たかったのか、まるで枷をかけられたかのようにその手はぱたりとシーツの上に落ちてしまいました。
「よく似合う…次は首を。」
勿論そんなことなど、喜びに溢れている彼の方は気付くことはなかったのでしょう。僅かに頭を垂れたお方様の首に、彼の方はお手づから首飾りをかけて差し上げておりましたが…私には何故かそれが酷く残酷な光景に見えたものです。
夜空の星は時折流れ、地上に落ちる。
海におちた星を貝が飲みこんだ時、それが真珠として残るのだと言う。
私が住んでいる村の近くは「星が落ちる海」として有名で、漁港であると同時に真珠がとれる漁村としても名を馳せていた。
私達の村はとても恵まれているのよ、と、遠くから越してきたお母さんは言う。砂浜と切り立った崖が同時に存在するこのあたりでは、魚も海草も豊富だし、気温の変化が激しいせいか海獣の肉は美味で、塩に漬けておけば珍味として都で高額に売れる。でも、貝を開いたとき稀にとることができる真珠の価値は―やっぱり他のものとは比較にならない。
漁師の父親が海獣と魚をとり、すばしこい弟はそれを手伝う。うちの家計はだいたいそれで賄えるので、家族のなかでの私の仕事はいつのまにか、貝を採ることが主になった。ゆらゆらと揺れる波のなかで、弟と父親が引く網を横目に、私は海草をかき分けてひたすら貝を探す。引き上げた貝の中から真珠がみつかることは珍しいけれど、見つかったその日はちょっとだけごちそうだ。
今日の海はとても温かく、どこまでも透明で、海の底まではっきりと見える。銀色の大きな魚がゆったりと脇をすり抜けていくけれども、私が追いかけようとした瞬間猛然と逃げ出してしまうのはわかりきっているので、捕まえようなんて思わない。海底に辿りついたら眼を凝らして、実際手で岩肌を触って貝をさがすが、海底に降りてからは時間との戦いだ。ひとつ、ふたつ、みっつ。真珠がはいっていなさそうだけれども、お夕飯用の巻貝もよっつ。腰に付けた網に入れると勢いよく地面を蹴って海面を目指す。そんなことを繰り返し、結局その日見つけられた貝はおよそ15個程度だった。お父さんと弟の方は、大きな海獣を仕留めたようで、三人でうんうん唸りながら網を引いてかえることになった。
家ではお母さんとお父さんが魚と獣をさばき、私と弟はその隣のテーブルで、貝を開く。ひとつめは外れ、ふたつめも外れ。
「わ!!!やった!!!でっかい!!!」
となりで弟が嬉しそうに叫び声をあげて、真珠を取り上げた。何故か得意顔で目の前に突きつけてくるそれを「わかったわよ!でもそれをとったのは!わ・た・し!!」と押しのけて次の貝にナイフを入れた。採ったのは私だからなんら思うところはない筈なのに、あそこまでドヤァ…とした顔をされると何故か腹が立つ。
「あ。」
自分でも間抜けな声が聞こえた。
ころん。零れ落ちた真珠は、ひとつながり。
それほど大きくはないけど、夜空の双子星が手をとりあったまま同じ貝に飲みこまれたようだった。白く淡い光沢の上に、明け方の空のヴェールをふわりと被せたような不思議な色合いで、片方にだけ金色の欠片がうっすら見えた。
「二つなのに…一つだ…」
「うわあ!!すっげーーー!!父さん!!母さん!!!ふたつある!!!」
ふたつがひとつだ、なんてあまりにも当然な私の発言とは対照的に、弟は大絶叫して立ち上がった。後から考えてみれば弟の発言もイマイチ的を得ていないものだったが、何事かと両親が手を拭きながらこちらにやってくる。机の上に置かれているひとつながりの真珠を見て、両親もぽかん、という表情になった。
結局その日は、あまりの出来事に御馳走どころではなく。家族総出で海の神様に、感謝の祈りを差し上げるだけで終わってしまった。あまりにも大事過ぎて、逆に何か不幸が起こるのではないかと母親などはそわそわしていたが、津波がくることもなく嵐がくることも、暫くは無く―。その数日後、大きな町への荷運びの時期が来た。
町への荷運びは、それぞれの家族から売り手として一人、荷物の番として村の若者の何割かが参加することになっている。ただ今回は偶々、真珠がたくさんとれた家が多かったのか、特別に「傭兵」という仕事の人が一人、きてくれることになっている。
今回はお父さんが荷物番兼売り手として出ていくはずだったが、出発の直前、お母さんが私も行ってように、という風に言いだした。
「いつものお店に、真珠を売りにいってきて。それから雑貨屋さんで買ってきてほしいものがいくつか。それからこれは…。」
お母さんがそっと小さな袋に真珠を二粒、入れて首にかけてくれた。私が見つけた双子真珠には絶対に及ばないけれど、でもよく晴れた日の雲のように真っ白で可愛らしいものだった。
「ティッカも年頃だからね。他の真珠が高く売れて、頼んだ買い物が全部きちんとできたら、この二つは好きなように使いなさい。年頃だからお洒落に…耳飾りにしてもらうといいわ。」
お洒落と言われてぴんとくるものはなかったけど、でも綺麗なものが手元にあるのは嬉しいことだ。売り物にする残りの真珠は、塩漬けの魚の樽に紛らわすようにして、馬車の奥へと詰め込んだ。
私達を守るために雇われた傭兵さんはナディールさんという名前の人だった。とても明るい目の色をしているせいか、いつも眩しそうに眉をしかめているけど、そんなに怖い人ではないだろうというのは、休憩中、馬にお昼ご飯の半分をとられて何とも言えない表情で、残りの半分を齧っているのを見たから。
そんな光景を見られてることに気付いたのか、傭兵さんは一瞬更に難しい顔になって会釈をしてきた。よかったら、と林の中でとってきた野いちごを渡すと、「どうも。」といってもくもくと食べる。なんだかその様がとても馬っぽくて、ちょっと笑ってしまった。
私が笑ったことでほっとしたのか、傭兵さんはぽつぽつと私の村での真珠採りについて色々と質問をしてきた。彼は元々、この村から遥か遠いところで真珠採りをさせられていた(していた、とはいわなかった)らしく、一粒を見つけるための苦労はなんとなく判っていると言うことだった。そう言えばなんで私が真珠を採っていると判ったのだろうと聞くと、
「お前の髪の色が、よく海焼けしてるな。とおもった。」
「!!!」
自分でもなんでそんなことをしたのかよく判らないけど、何故か私は慌てて髪を押えつけた。赤茶けた髪の色は私やこの村の人間にとっては慣れ親しんだ色だけれど、でも海に潜らない村長さんのところの娘さんや、市場の子達とは全く違う色をしているのは判る。
「そっか、みんな、そうだし、あ、あんまり考えたことなかった、かも。海焼けっていうんだ!そうなんだ!」妙に裏返った声で返答するが、ナディールさんはその言葉の途中でふっと厳しい顔になった。
「…急ごう。」
「えっはいっ!!」
お昼を食べていた村の一行をせきたてて、出立の準備をしてもらう。どうしたのかね?などとのんびり言いながらも、ナディールさんのただならぬ雰囲気になにか思うところがあったのか、皆はいそいそと準備をはじめてくれた。
うちの荷物は全部荷台の中だから、そもそもまとめる必要が無い。荷台に乗り込もうとして…一人、足りないということにそこで気付く。
さっきまで私と一緒に、荷台で番をしていた子がまだいない。もともとのんびりした子だからまだ支度をしているのかもしれないし、もしかしたらさっきの私とおなじように、おやつを探しに行っているのかもしれない。
「…んー…」
野イチゴがなっているのはあそこだよな、と思いながらがさりと茂みを潜り抜けた瞬間、その子と目があった。
「探し、た…」
「おや、お迎えか?友達思いだねぇ。」
急に腕を掴まれたかとおもうと、茂みの向こう側に引きずり込まれるニタニタとした笑みを浮かべた男達が、そこには武装して立っていた。
私達は広間に連れ出された。盗賊の数は30人そこら、キャラバンの人数よりは少し多い位だが、口笛を吹きながらぞろぞろと出ていく盗賊達からは、「こんな村の男達など皆殺しにできる」といった余裕がありありと見て取れた。
ぴかぴかに磨き抜かれた曲刀は、森の光の中でも蒼褪めたような、ぞっとする光を放っている。真昼の森なのにそこだけは死神の影が写り込んだようで、なんでだろう、この盗賊達は何人も人を殺しているに違いない…と感じた瞬間、こわくて涙が止まらなくなった。
「ほー、ナディール、やっぱテメーか。」
人質をとられて動けないのは村の人だけではなかった。村人を庇うように盗賊達に刃を向けてナディールさんは立っていたが、それでも人質がいることで切りかかりあぐねているのは間違いない。
「武器を捨てろ!!!!娘達がどうなってもいいのか!!」
「ひっ!!」
ぐいっと喉に冷たい金属の感触がぶつかった。堪え切れなくなった友達の泣き声を聞きながら、私はぐっと唇を噛み締める。
「娘たちを解放しろ…。条件はなんだ。」
さっき喋ってた時とは打って変わった、地を這うような声でナディールさんは尋ねる。震えあがるような声音だったが、盗賊は笑っただけだった。
「テメーは話相手じゃねぇよ!村長か、とにかく今回のキャラバンの責任者を出せ!!おめーはさっさと武器をおいて膝をつけ!!地面にキスしろ!」
手を上げたのは、お父さんだった。
ナディールさんはちらりとお父さんと目を合わせたが、怖い位の無表情になってそろりと曲刀を地面に置いた。走り寄った盗賊が三人がかりでその背中を押えつけて地面に引き倒し、さっき怒鳴った一人…多分これが盗賊の頭…がげらげら笑いながら刀の柄でナディールさんの頭を殴りつける。ガツンと嫌な音がした。
「久しいなぁ、んん?お前にはオレの息子が随分と世話になったなぁ?」
「し、るか…」
押えつける盗賊の手に力が籠る。盗賊の頭が腰に帯びていた木のこん棒を振り上げた。鈍い音がして、ナディールさんは動かなくなったが、盗賊達はゲラゲラ笑いながら二度、三度と、手にしていたこん棒が壊れるまで殴る蹴るを続けた。しんと静まり返った森の中、バカ笑いだけが延々と響く…。耳を塞ぎたかったがそれもできずに私はその光景を眺めていた。
「さて、お父様方。我々はですね、紳士的なお話をしに参りました。」
さんざ殴りつけて満足したのか、盗賊の頭は今までとは打って変わった慇懃というには軽やか過ぎる口調でお父さん達に向き直った。
「我々も紳士ですのでな、生きていくための御金を全部奪おうとは思いませんよ。持ち運びも面倒ですし磯臭ェから、魚や海草はいりません。ただ俺達にも、贅沢をする金が必要でしてね…だから、娘達の命が惜しけりゃ真珠を根こそぎ出せ!!!全部だ!!」
お父さんがぐっと奥歯を噛み締めるのが見えた。キャラバンのリーダーになるのは、その時運ぶ荷の価値がもっとも高い家の人だ。もしかしたらほんとうに、真珠を全部、渡してしまうのかもしれない!
そう思った瞬間、怖かったけれどもそれ以上に腹が立った。
「おとうさん!!!たすけて!!どうしていってくれないの!!真珠は双子真珠だけだって!!」
海と生きていくのは大変だ。私は海が好きだけれど、村の中には、酷い目にあって海に潜れないという子がいる。片足をなくしてしまったお爺さんがいる。海は決して優しいばかりじゃない。私達に与えるし、奪いもする。
だけど。
こんな、海に感謝することも知らず、海に潜ることも知らなそうな奴らに言うがまま、荷物を渡してしまったら。それこそ海に失礼なんじゃないかという気がする。私達が頑張ってきたものを、そっくりそのままとられるなんて絶対に許せない!!
「でもその真珠はものすごく価値のある双子の真珠よ!!!だから今回はこんなに大掛かりなの…私が首からさげてる袋の中に入ってるわ!!おねがい、たすけて!!怖いよお父さん!!」
口からべらべら出てきたのは真っ赤な嘘の数々。本物の真珠は肉と一緒に樽の中で、多分バレたら私は殺されてしまうんだろう。でも、こんな盗賊達のいいなりになるのは絶対に嫌だった。私の首にナイフを突き付けていた盗賊が小さな袋を引っ張り出すと中身を改めてにんまり笑った。「ほーぉ、これが件の双子の真珠か。確かに見事だなぁ。」
(残念それじゃないわ!!よく似てるように見えるでしょうけど!!)
私は内心舌を出しながらもいよいよ泣きわめく。命がけであることは間違いないから涙は本当に、夏の雨のように出てきた。助けておとうさん!!これはもうあげて!!死にたくない死にたくない!!まだお嫁にすらいってないのに!!最後の方は何をいっているか自分でもよく判らなかったが、盗賊達はげらげら笑っていた。本当にこの盗賊達はよく笑う…。
ひゅっ。
その笑い声をからかうように、突然風を切る音がした。何が起きているのかよく判らないまま、背後の男達が乱暴なわめき声をあげる。「やべぇ!!敵だ!!撤退だ!!」との怒声とともにぶつりと首から小袋が引きちぎられて、体が解放された。
気絶していたと思えたナディールさんが信じられない行動に出たのは次の瞬間だった。自分を押えつけていた盗賊達の力が緩んだのを見て一人を跳ね起きざま殴り倒し、呆けたような顔のもう一人に、胸がすく様なパンチを繰り出す。
拳が見事に盗賊の鼻柱に吸いこまれた。顔面を血だらけにして泡を噴いて倒れる盗賊は完全に気絶していた。そして最初に殴られた盗賊が酔ったようにふらふらしながら無様に逃げようとする所に後ろから組みついて、ぎりぎりと首を締めあげる。「ぐへ」と蛙のような声を上げて二人目が気絶した。地面に落ちた刃を拾い上げて投擲するが、それは逃げていく盗賊の脇をかすめて地面に落ちた。血のしみが点々と、草の上にまばらに落ちた。
「陛下の言う通り…見事な腕前だ。」
穏やかな声が、背後から聞こえた。思わず振り返った私は、一瞬戦か正義の神様が現れたのかとぽかんとなる。白い馬に乗ったそのひとは、今まで見たことがないほど綺麗な顔をしていて、月光のような朝霧のような、なんともいえない綺麗な色の髪をひとつにくくって仕立てのいい服に身を包んでいた。ナディールさんは膝をつき、私も思わずそれに倣ったが、自然とそうさせてしまう雰囲気があるひとだった。
「あ」
目線を下げた瞬間、足元にじわりと赤いものが這い寄ってきて、私は思わず後ずさる。地面に倒れた盗賊の躯から広がった血だまりに、先程の風を切る音を思い出す―。それは、どうやらその人が放った弓だったのだと気付いた。死体は一つではなかった。首を頭蓋を貫かれて倒れ伏す躯は6つ。どの矢にも、その人の髪によく似た銀色の鳥の羽が飾られていた。
「お褒めにあずかり光栄です。」
「二人を捕えたのなら、奴等の根城を探れるな…御苦労だった。街までは俺も同行しよう。…お前は少し休め。」
盗賊も怖かったが、死体の横で淡々としたやり取りをする二人も恐ろしく、私は気が付いたら意識を手放していた。
がたごとと荷馬車が揺れる。小刻みな振動に一瞬頭がぐらぐらと揺らぐが、荷台に腰掛けて不器用に包帯を巻く男性の姿が、「あれは終わったこと」なのだと告げてくる。起き上った私を見てほっとしたような表情を浮かべたナディールさんは、改めて見ると引きずられた麦袋みたいにボロボロだった。
「怖かったな。」
殴られたせいか赤くはれ上がった腕をぎこちなく持ち上げて、私の頭をぽんぽんと撫でてくれる人に、寧ろ怖かったのは死体の横で平然としていられる貴方達かもしれないです、とは言えず、私はとりあえず頷いた。
「………お前は偉かった。……あの状況下で、よく戦った。」
「だってものすごく腹が立ったんです。大変な思いをして。あの人たちだってちゃんと働けばいいんだわ!そしたら人の物をとるのがどれだけ悪いことだか、判るはず。」
「…そうだな。真珠採りは大変だ。」
ナディールさんは何かを懐かしむかのように、少し目を細めた。
「本当に、命がけだ。」
「…………」
懐かしいというだけではないな、と感じたのは、ひどく懐かしそうな目をしているにもかかわらず奥歯が鳴る鈍い音がしたからだった。私は少しだけ、「命がけ」の真珠採りについて考えた。暫く黙っていたあと、ナディールさんはまったく別のことを口にした。
「お前があそこであぁ言った御蔭で、盗賊達の注意を削げた。」
「……え。」
その口ぶりは、まるで助けが―あの人が来ることを知っていたかのようだった。多分それは私の表情に露骨にでていたらしい、続いた言葉はそれを肯定するものだった。
「…ああ、俺は傭兵じゃない。だが皆を安全に連れていって、連れて帰るのが今回の俺の仕事だっていうのはほんとだ。騙していたことを…怒るか。」
無言で首を横に振ると、それならよかった、とナディールさんは小さく息を吐いた。ぎくしゃくとした動きでまた包帯を巻きはじめるのを見かねて、やったげます、と申し出ると、「ありがとう」と包帯をこちらに託してくる。揺れる荷馬車の中できちんと包帯を巻くのは至難の業だったが、本人が巻くよりは幾分綺麗に巻きあがった。頭にできた大きなたんこぶと裂傷に薬を塗る間、ずっとナディールさんはじっとしていた。
「ところで、あの盗賊達は―。」
「捕えた二人は今、後ろの荷馬車を借りて閉じ込めている。街まで連れていって、そこで牢に入れる予定だ。…お前の荷を持ち出した奴は捕まえられなかった…。すまない。」
「いいんです。もっていかれたやつは、大きさが似てるだけのただの真珠だし。その分、他の奴をがんばって高く売ればきっと元はとれます。でもそうじゃなくて、あの―死んじゃった、ひとたち。あのままにしておいたら…」
「死んだ盗賊については、簡易葬儀と清めだけして置いてきた。死出の旅路に、迷うことはない。」
「え、本当ですか?だって誰がお清めを…。」
葬儀や清めができるのは、神殿の司祭様や巫女様だけだ。そんな短時間で、神殿から人を呼ぶなんてできるわけがないと思った瞬間、頭をよぎったのはあの、弓を携えた美しい人だった。
「あの、私達を助けてくれたあの人が?」
「ああ。武人だが司祭でもいらっしゃる。」
「武人なのに司祭…なんなんですかそれ…?」
ナディールさんは一瞬難しい顔をした。
「……たいへん身分の高い方だ…。だがお前達に名乗られるかどうかは…あの方が決めることだ。すまない。」
「謝んないで。さっきから謝ってばっかです。どう考えたって一番悪いのは盗賊だし、あの人は私達を助けてくれた人だし…それにナディールさんだって、人質が無ければ、あいつらなんて追っ払ってくれたでしょ?」
「…わかってもらえると助かる。」
突拍子もない返答に、私は一瞬何を言われているのか判らなかった。
「えっほんとに!?本気でいってる!?それ!?」
「それくらいできないならば、今回派遣されなかった。」
「え!」
「そもそも、人質がなければ村の男達も戦った筈だ。人数自体は然程多くない―まず、間違いなく、負けない。」
「えー!!」
じゃあこのピンチは私達のせいだって言うんですか!詰め寄るとナディールさんはぎょっとした顔になっていやちがう。そういう意味じゃない、と慌てて手を振って否定する。その時あまりにも勢いよく振って傷に響いたのかナディールさんはまたしても唸る派目になり、主に私の一方的な大騒ぎを聞きつけてやってきた村の男性がそれ聞いて大爆笑し―。
そのあとの道中は、とても賑やかなものになった。