ワインは(あてっこするのではなく)純粋に楽しむべきもの
中川: 僕はブラインドテイスティングはあまりやりたくないけれど、以前やってみたことがあるんです。そういう時、僕の顔をみると皆が「カリフォルニアだ」と思うので、わざとフランスワインをだしてみるんです。すると、フランスワインなのに「カリフォルニアだ」と答える人が圧倒的に多いですね。
内藤: でも実はフランスだという(笑)先入観ですよね。
白と赤がわからないくらいですからね。やはり眼をつぶって飲むとそれだけ情報量が減るので、わからないということなんですね。
中川: 人間の感覚って、けっこうそういうものですよね(笑)
内藤: グラスや温度、食事との相性、どういう環境で味わうか?によっても変わってくるわけですよね。
中川: 極端な話、30種類のワインの中に1つグレープジュースを入れてブラインドテイスティングをしても、それがジュースだとわからずに点数をつけ、「このワイン、意外と軽いね」などとコメントする人も多いですよね。実際アメリカで試しにやってみたところ、かなり大勢のワイン愛好家が見抜けず、点数をつけましたからね。
内藤: 見抜けないんですね。それもワインの素人ではなくプロフェッショナルの会で?
中川: そうですね。よくワインを飲んでいる方々の会ですね。その程度なんです。
内藤: その程度ですか・・・
中川: だから僕はワインはあてっこするべきでなく、純粋に楽しむべきだと思っています。
ロマネコンティも、紙コップやお茶碗で飲んだら全く美味しくないでしょ?
内藤: 本当にそうですよね。僕は昔、プラスチックのコップで「これがロマネコンティだから」と飲ませてもらったことがあるのですが、「えっ これがそうなの?」と思いました(笑)
中川: だいたい皆、ロマネコンティを飲んでがっかりするんですよ(笑)
内藤: 要するに値段が異常に割高ということですかね?
中川: 今は、カリフォルニアワインでロマネコンティより値段で上をいくものもありますね。もし30万円で買えるロマネコンティがあったら、それはニセモノと思っていいでしょうね。
内藤: (笑)やはりロマネコンティにもニセモノがあるんですね。
中川: 本物の5倍程度の量のニセモノがでまわっているといわれますよね。
内藤: ニセモノというのは、空瓶につめるんですか?それともニセモノのエチケットをつくってはるとか?
中川: ニセモノのエチケットはいくらでもつくれますからね。貨幣とは違って罪は軽いですから、偽造がしやすい。
内藤: なるほど。ではだまされないためにはどうすればいいのでしょう?
中川: ワインは「信用」以外にないですね。ワインオークションも最近はニセモノがはびこっているので、気をつけた方がいいというのは、よく聞きます。
内藤: 「誰がもっていたか」というのが大切なんですね?
中川: 「どこからでたか」ということですね。
内藤: それか自分でプリムール(ワインの先物買いのこと)を買って、持っているか?ということですかね。時間がかかりそうですが・・・
中川: 30年くらい前からワインをもっている人は、今大儲けしていますね。
内藤: そうなんですね。
中川: 日本は買ったワインを売ることができないんですよ。
内藤: セカンドマーケットがないということですね?
中川: そう、セカンドマーケットがないんです。僕の知人で、40年前に大量にワインを買った人がいるんです。
彼はニューヨークと香港でワインビジネスをやっているのですが、後からそれを売って、笑いがとまらない程、儲かったみたいですね。
内藤: 売るルートがあるということですね?
中川: そうなんです。いくらでも売るルートがあるんです。彼は一時ワインを20万本くらいもっていて、今は8万本くらいですかね。もう年なので、ワインを買うのはやめて、売ってしまいましたね。
内藤: それはビジネスというより趣味ですか?
中川: いや、ビジネスですね。欲しいワインがある時は、彼に頼むと用意してくれるんです。
内藤: すごい話ですね。
中川: 彼から買ったワインで一番すごかったのが、1992年物で売り出し価格が1本50ドルのもの。
そのワインの20本しかないマグナムのうちの1本を買ったんです。僕が買った時が30万円。それが3・4年で450万円ぐらいまで価値が上がりましたね。
残念ながら、僕は(お金にかえることはなく)すべて飲んでしまいましたが(笑)
内藤: 豪快ですね(笑)