「え・・・・と。どうも、お久しぶりです」
そう言って、その人物が ぺこり と、頭を下げる。そして、胸元に下げてある五芒星のメダルを外し、レムの手に握らせた。
銀色のメダルは、レムがはじめて手にした時と同じように、ずっしりと重い。
「カル?」
「これ、欲しいって言ってたでしょ」
そう言って、カルは黙り込んだ。胸元に揺れているのは大騒ぎの元であった緑色の小さな玉・香珠。
「本当は、先生ともちゃんと会って挨拶しなきゃいけないんだろうけど、人を待たせてるから」
ちらり と、カルが振り返った視線の先にいるのは、カルがライキと呼んだあの彼だった。
「それじゃ、こんな慌しくて本当、悪いんだけど。レムちゃんにもラウルさんにも色々お世話になって、色んなの教えてもらって・・・・」
「いいわよ、いちいちそんな事気にしなくても。そのかわり、出世払いって事にしておいてあげるから」
まだ続きそうなカルの台詞を一方的に切り上げた。レムとしては、湿っぽいことやぐじぐじするのは、苦手なのだ。
「待ってるんでしょ。マリーヌには、ラウルに伝えてもらうから。だから、玉の力なんか借りなくても平気なように、今度会うときまでにしっかり勉強しておきなさいね。基本的な事は、きっちり教えたつもりだから、分かった?」
レムの言い放った言葉に、カルは驚いたように目を見開いた。
「マリーヌが言ってたのよ。カルは、風の玉・香珠の主、香樹だろうって。・・・・そう?」
その台詞に、こっくりと頷くカル。
「本当に、ありがとう。ラウルさんも・・・・」
「うん」
ラウルシャインが言葉すくなに頷く。
「さぁて、と」
言いながら、カルの肩に手をかけ体の向きを半回転させる。
「それじゃ、あたしも行くわね。マリーヌによろしく」
そう言って、レムは、カルの肩を押すように玄関を出た。
カルは、一度振り向いて大きく頭を下げると、待っていたライキに走り寄った。
「カルっ」
手にしていたメダルを、カルに向かって投げる。
驚いた顔でレムが投げたメダルを受け取るカル。次の瞬間、それが笑みに変わり、そして、大きく手を振ると、何かを投げ返してきた。
こつん こん
受け取り損ねたそれは、レムの頭に当たって地面に転がる。慌てて拾い上げて顔を上げると、カルは、風に溶け入るように姿を消してしまっていた。
あ、結局、カルって、何者だったのだろう? あんまりびっくりして、聞くの忘れた。だけど・・・。
レムは、手の中にある小さな水晶玉を見ながら、思った。
多分、また、どこかで会うこともあるかもしれない。と。
※
風樹です。
ようやく、たどり着きました。最終回です。
それほど、長い話ではない筈でした。それが、50章まで続いてしまうとは。
書いた本人も驚きです。
でも、第一作目、完成バンザイ。
地味ですが、自分に花を贈ります、・・・・と言っても自宅のコスモスですが。
また、いつか新たな話に挑戦していきたいと思います。
今まで読んでくださった方、本当にありがとございます。
そう言って、その人物が ぺこり と、頭を下げる。そして、胸元に下げてある五芒星のメダルを外し、レムの手に握らせた。
銀色のメダルは、レムがはじめて手にした時と同じように、ずっしりと重い。
「カル?」
「これ、欲しいって言ってたでしょ」
そう言って、カルは黙り込んだ。胸元に揺れているのは大騒ぎの元であった緑色の小さな玉・香珠。
「本当は、先生ともちゃんと会って挨拶しなきゃいけないんだろうけど、人を待たせてるから」
ちらり と、カルが振り返った視線の先にいるのは、カルがライキと呼んだあの彼だった。
「それじゃ、こんな慌しくて本当、悪いんだけど。レムちゃんにもラウルさんにも色々お世話になって、色んなの教えてもらって・・・・」
「いいわよ、いちいちそんな事気にしなくても。そのかわり、出世払いって事にしておいてあげるから」
まだ続きそうなカルの台詞を一方的に切り上げた。レムとしては、湿っぽいことやぐじぐじするのは、苦手なのだ。
「待ってるんでしょ。マリーヌには、ラウルに伝えてもらうから。だから、玉の力なんか借りなくても平気なように、今度会うときまでにしっかり勉強しておきなさいね。基本的な事は、きっちり教えたつもりだから、分かった?」
レムの言い放った言葉に、カルは驚いたように目を見開いた。
「マリーヌが言ってたのよ。カルは、風の玉・香珠の主、香樹だろうって。・・・・そう?」
その台詞に、こっくりと頷くカル。
「本当に、ありがとう。ラウルさんも・・・・」
「うん」
ラウルシャインが言葉すくなに頷く。
「さぁて、と」
言いながら、カルの肩に手をかけ体の向きを半回転させる。
「それじゃ、あたしも行くわね。マリーヌによろしく」
そう言って、レムは、カルの肩を押すように玄関を出た。
カルは、一度振り向いて大きく頭を下げると、待っていたライキに走り寄った。
「カルっ」
手にしていたメダルを、カルに向かって投げる。
驚いた顔でレムが投げたメダルを受け取るカル。次の瞬間、それが笑みに変わり、そして、大きく手を振ると、何かを投げ返してきた。
こつん こん
受け取り損ねたそれは、レムの頭に当たって地面に転がる。慌てて拾い上げて顔を上げると、カルは、風に溶け入るように姿を消してしまっていた。
あ、結局、カルって、何者だったのだろう? あんまりびっくりして、聞くの忘れた。だけど・・・。
レムは、手の中にある小さな水晶玉を見ながら、思った。
多分、また、どこかで会うこともあるかもしれない。と。
※
風樹です。
ようやく、たどり着きました。最終回です。
それほど、長い話ではない筈でした。それが、50章まで続いてしまうとは。
書いた本人も驚きです。
でも、第一作目、完成バンザイ。
地味ですが、自分に花を贈ります、・・・・と言っても自宅のコスモスですが。
また、いつか新たな話に挑戦していきたいと思います。
今まで読んでくださった方、本当にありがとございます。