「ほら、もうすぐグレンに着くわよ」
レムが道の向こうにある大きな門を指差して、カルを振り返った。
「あそこで旅券見せて門の中に入れば、グレン市よ」
地元ではない人がこういう大きな都市に入るには、犯罪防止のための身分証明書が必要となる。例外的にある一定料金を支払う、あるいは緊急事態の場合、旅券がなくても出入りが可能な場合もあるが、レムとしては、その必要もないのに出費を増やしたくないので、正規の方法で入場するつもりだった。
しかし、門が開く時間は決められている為、たとえ身分証明書や旅券を持っていたとしても、門が閉まっている間はよほどの理由がない限り出入りが出来ない事になっている。
とは、いうものの、レムが前に来た時は、もっと早い時間に門が開いたと記憶していたのだが・・・・。
「とりあえず、そこらで一休みしましょうか」
レムは、そう言ってグレン市に来るたび立ち寄る軽食屋に入っていった。
門の前には、開門待ち・順番待ちの旅人をターゲットにしています、といった感じの店が商店街のごとくずらりと並んでいる。
実際、大変なのだ。やっとたどり着いた先で閉門になっていたりすると。特に、ここのような宿屋などがないような場合、野宿するしかない。
「ねぇ、前からここの開門てこんなに遅かったけ?」
空席を見つけたレムが、顔見知りの店員に声をかける。すると、
「あ、その事ですが、ついこの間、市内で火事騒ぎがありましてね。しばらくの間、閉門を早めて開門を遅らせているんですよ」
お陰で、お客が増えましたがね・・・。と店員が笑いながら教えてくれた。
「火事騒ぎ・・・て、放火?」
「いや、まだ、分からないんですよ。いま、お役人が調べているところです。一区切りつけば、開門時間も元に戻るとおもいますよ」
「そう、ありがとう。それじゃ、お茶と何か軽いもの二人分お願いね」
店員がテーブルから離れた後、レムが荷物の中から便箋とペンを取り出す。
「どうすんの、それ?」
興味心身にテーブルに身を乗り出してくるカルに
「今のうちに、魔道士協会の支部長に手紙書いておこうと思って」
ペン軸で頭をつつきながら答える。
こういうのって、書き始めが難しいのよね。
あーでもないこーでもない と、レムが頭をひねっているところに注文したお茶と軽食が運ばれてきた。
「あわてなくていいわよ」
猫舌でいつも熱いのを口に入れてぴーぴー言うカルに声をかけ、手紙を書き進める。
それくらい市内に入ってからでも十分ではないかと思うだろうが、レムとしては、グレン市に入ったら速効で長期滞在の出来る宿を探し、今日のうちに協会に出向いてカルの資格試験と、グレン市滞在中の魔導士としての活動許可の申請を済ませてしまいたかったのだ。
いつものようなちょっとした旅の途中であれば、その地元の支部に顔を出して挨拶すれば済んでしまうのだが、今回は支部長に面接願いを出すのだ。それなりに筋を通さなければならないのである。
・・・・・面倒くさいけど。と言うのが、レムの本音ではあるが。
マリーヌも、カルは間違いなく自分の弟子であるという内容の書付を持たせてくれた上に、前もって協会に推薦状まで送ってくれている。それでも、すぐに面会がかなうわけではないのだが。
手紙(兼申請書)を書き終わり、やっとお茶を飲むと、すでにぬるくなってしまっていた。
カルにとっては、ちょうど良いかもしれない。
お茶を飲んで、一息ついたレム、
「カル、旅券の用意しておいて。そこの門通る時見せるからね」
と、声をかけ、荷物を担ぎなおした。
勿論、この出費もレム持ちである。
以前、カルの買い物で代金立て替えた時、レムが冗談に“後でこの代金返してね。出世払いでいいから”とふざけて言ってみたところ、カルがまじめな顔で“出世、しなかったらどうすんの?”と困っていたことがあった。その時は、真面目なのかふざけているのかと悩んだレムだったが、後に、単にボケているだけだった、と判明した。
レムが道の向こうにある大きな門を指差して、カルを振り返った。
「あそこで旅券見せて門の中に入れば、グレン市よ」
地元ではない人がこういう大きな都市に入るには、犯罪防止のための身分証明書が必要となる。例外的にある一定料金を支払う、あるいは緊急事態の場合、旅券がなくても出入りが可能な場合もあるが、レムとしては、その必要もないのに出費を増やしたくないので、正規の方法で入場するつもりだった。
しかし、門が開く時間は決められている為、たとえ身分証明書や旅券を持っていたとしても、門が閉まっている間はよほどの理由がない限り出入りが出来ない事になっている。
とは、いうものの、レムが前に来た時は、もっと早い時間に門が開いたと記憶していたのだが・・・・。
「とりあえず、そこらで一休みしましょうか」
レムは、そう言ってグレン市に来るたび立ち寄る軽食屋に入っていった。
門の前には、開門待ち・順番待ちの旅人をターゲットにしています、といった感じの店が商店街のごとくずらりと並んでいる。
実際、大変なのだ。やっとたどり着いた先で閉門になっていたりすると。特に、ここのような宿屋などがないような場合、野宿するしかない。
「ねぇ、前からここの開門てこんなに遅かったけ?」
空席を見つけたレムが、顔見知りの店員に声をかける。すると、
「あ、その事ですが、ついこの間、市内で火事騒ぎがありましてね。しばらくの間、閉門を早めて開門を遅らせているんですよ」
お陰で、お客が増えましたがね・・・。と店員が笑いながら教えてくれた。
「火事騒ぎ・・・て、放火?」
「いや、まだ、分からないんですよ。いま、お役人が調べているところです。一区切りつけば、開門時間も元に戻るとおもいますよ」
「そう、ありがとう。それじゃ、お茶と何か軽いもの二人分お願いね」
店員がテーブルから離れた後、レムが荷物の中から便箋とペンを取り出す。
「どうすんの、それ?」
興味心身にテーブルに身を乗り出してくるカルに
「今のうちに、魔道士協会の支部長に手紙書いておこうと思って」
ペン軸で頭をつつきながら答える。
こういうのって、書き始めが難しいのよね。
あーでもないこーでもない と、レムが頭をひねっているところに注文したお茶と軽食が運ばれてきた。
「あわてなくていいわよ」
猫舌でいつも熱いのを口に入れてぴーぴー言うカルに声をかけ、手紙を書き進める。
それくらい市内に入ってからでも十分ではないかと思うだろうが、レムとしては、グレン市に入ったら速効で長期滞在の出来る宿を探し、今日のうちに協会に出向いてカルの資格試験と、グレン市滞在中の魔導士としての活動許可の申請を済ませてしまいたかったのだ。
いつものようなちょっとした旅の途中であれば、その地元の支部に顔を出して挨拶すれば済んでしまうのだが、今回は支部長に面接願いを出すのだ。それなりに筋を通さなければならないのである。
・・・・・面倒くさいけど。と言うのが、レムの本音ではあるが。
マリーヌも、カルは間違いなく自分の弟子であるという内容の書付を持たせてくれた上に、前もって協会に推薦状まで送ってくれている。それでも、すぐに面会がかなうわけではないのだが。
手紙(兼申請書)を書き終わり、やっとお茶を飲むと、すでにぬるくなってしまっていた。
カルにとっては、ちょうど良いかもしれない。
お茶を飲んで、一息ついたレム、
「カル、旅券の用意しておいて。そこの門通る時見せるからね」
と、声をかけ、荷物を担ぎなおした。
勿論、この出費もレム持ちである。
以前、カルの買い物で代金立て替えた時、レムが冗談に“後でこの代金返してね。出世払いでいいから”とふざけて言ってみたところ、カルがまじめな顔で“出世、しなかったらどうすんの?”と困っていたことがあった。その時は、真面目なのかふざけているのかと悩んだレムだったが、後に、単にボケているだけだった、と判明した。