宇宙時間 ソラノトキ

風樹晶・かざきしょう

勝手に趣味ブログ
のんびりしようよ

みらーじゅ 21

2008-11-30 09:48:30 | 小説 ミラージュ
 藁の中を探すと、チョウカの荷物と血の付いた切れ端が残っていた。
 荷物の中にある一つ。チョウカが大事そうに抱えていた袋。これなら・・・・。
 グルラディーヌが自分の中から布を取り出すと、血の付いた布を織り込み真ん中で結ぶ。そして、それをその袋の上に置き『探索』の術を施す。
 しばらくして、グルラディーヌが結んだ布を手に取り、宙に放り投げた。
 それは、地面に落ちる前にふわりと浮き上がり結び目から両脇から伸びた部分で羽ばたきを始めた。
「どうする、行く? それとも、少し休んでからにする?」
 グルラディーヌがそれを指差し、二人の顔を交互に見比べた。
「どうせ行くなら、日が暮れる前の方がいいな」
 そう言うレトに
「そうですわね。逆に夜になってから向こうが出てくるのを待つという方法もございますけど」
 とんでもない事をあっさりと言ってのけるグリシーヌ。
「そうね。今から出かけて、向こうに着く前に夜になったら、間違いなく仕掛けてくるでしょうね」
 更にグリシーヌに輪を掛けたことを言うグルラディーヌ。
 レトはと言えば、あまりのことにコメントできない。それでも、
「そんじゃ、行くか?」
 レトが、藁の中から立ち上がった。
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みらーじゅ 20

2008-11-29 16:06:57 | 小説 ミラージュ
三人それぞれ、しばらく小屋の周りを探してみたのであるが、全くそれらしき姿は見つからない。
 嫌な予感がする。
 三人そろって小屋に戻った。
「どうする?」
 めちゃくちゃになった小屋の中で、藁に埋もれて座り込む。
「どうするって言われても・・・」
 グルラディーヌが困惑したように呟く。
「逃げてもいいぞ。多分、チョウカをさらったのは、あいつだ。あの怪物を使ったんだろう。でなけりゃ、そう簡単に引き上げたりしねえだろう」
 そう言われれば、あの鳴き声。
 グリシーヌは、鳴き声と共に怪物が一斉に小屋から離れたのを思い出した。
 もしかしたら、あれが合図だった・・・?
「でも、逃げても、多分、また追って来ると思う」
 そう言うグルラディーヌに、二人の目が集中した。
「さっき、森の中で木偶に襲われた。多分、あいつが送ってきたのだと思う。取りあえず、全部倒したけど、かなりしつこい性格なんじゃないかと思う」
 それって、狙った獲物は逃がさない。って感じ?   だったら
「攻撃は、最大の防御。と申しますわ。こちらから行ってみましょうか」
 おっとりとした口調で、グリシーヌがとんでもない事を言い出した。
「おい、嬢ちゃん。行ってみましょうって、そんな簡単に・・・・。それに、どこへ行こうってんだ?」
 爆弾発言に、思わず大声を出すレト。それに対して、
「それでしたら、大丈夫ですわ。ね、妹姫」
 にっこり笑って、グルラディーヌに話を振る。
「う~ん。何か、チョウカの物があればね」
 身近なものがいい。出来れば、いつも持ち歩いている物とか、身に付けている物。あるいは、思い入れの強いもの。
 それが、持ち主へ導いてくれる。
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みらーじゅ 19

2008-11-26 21:41:31 | 小説 ミラージュ
 めちゃくちゃに飛ぶ怪物が、壁に激突する。
 ぎゃー  ぎぎゃえー   
 外で、上空を飛んでいた怪物が鳴く。
 狂ったように飛んでいた怪物たちが、小屋を離れ、上空へ戻っていく。
 小屋の中を飛び回る怪物も、その声を聞いて慌てたように穴の開いた屋根や戸口から飛び出していった。
 それと入れ替わるようにグルラディーヌが小屋に飛び込んで来る。
「姉姫、無事? チョウカは?」
 小屋を覗き込んだグルラディーヌの視線が一点で止まった。
 そこには、姉・グリシーヌの上に覆いかぶさるレトの姿が・・・・。
「おう、そっちは、無事だったか?」
 小屋の入り口に立ち尽くすグルラディーヌの姿に気づいたレトが体を起こす。
「はぁ、まいった」
 のん気な声でグリシーヌを助け起こした。
「妹姫、無事でしたの?」
「え?  ん、まぁ・・・」
 あいまいな返事をして、ずたぼろになった小屋の内部を見回す。
「チョウカ は?」
 グルラディーヌの言葉にグリシーヌとレトが顔を見合わせた。
 チョウカが、いない。
 まさか。
 もう一度、丹念に小屋の中を探したが、その姿はなかった。
 三人そろって小屋の外を探すが、やはりその姿を見つける事は出来なかった。
 考えられる事は、二つ。怪物から逃げるために自力で小屋を出た。もう一つは、怪物にさらわれた。
 どちらにしても、あの怪我ではそのままにしておいたら、かなりヤバイ状態である。
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みらーじゅ 18

2008-11-24 19:32:24 | 小説 ミラージュ
 グリシーヌ達がいる小屋では、パニックの嵐に見舞われていた。
 熊とコウモリを足して割ったような怪物が、屋根を突き破って乱入して来たのである。
 ばさささ・・
「どうすんだよ、これ」
 どごっ
「そんなこと、聞かないでくださいます?」
 ざすっ
「別に、あんたに聞いてる訳じゃねぇー」
 ざんっっっ
「チキショー、きりがねぇー」
 やけくそ状態でレトが叫ぶ。
 と、その時、
 どおぉ・・・んっっっ
 まるでレトの声に反応したかのように、小屋の外で爆音が響き、辺りが震えた。
「妹姫」
 黒い群れの向こうに見える赤い髪。さっきの爆音も、グルラディーヌの放った術の一撃である。
 ぎぎぇぇぇつ   ぎょーっぐ
 表の怪物が奇声を上げる。
 ぎぎやー  ぎゃっぐ   ぐるる
 それに答えるように、怪物が小屋の中をめちゃくちゃに飛び回る。
 この狭い小屋の中を熊並みの物体が飛び回ったのである。
「きゃっ」
 怪物の翼に弾き飛ばされそうになるグリシーヌを抱えて、床に伏せるレト。その上を怪物の爪が薙いでゆく。さらに、
 どっごーん   でしっ  
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朝の白月

2008-11-23 09:01:05 | 月のある風景
今朝、東の空に白い月が浮かんでいました。

画像だけを見ると、どこの田舎だ と思われるでしょうが、我が家の2階の窓から撮ったものです。

手がぶれて、月の形がわかりませんが右上の白い点がそれです。

デジカメ、頑張って買うぞ。
… いつになるか分からないけど。


   2008/11/23  撮影
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みらーじゅ 17

2008-11-21 21:30:24 | 小説 ミラージュ
 闇が、走るブルラディーヌを襲う。
 あたり一面黒い霧が立ち込め、全てを覆い隠す。
『明球輪』
 ただの霧であれば、十分な筈の明かりも、闇の霧に光を吸い取られてしまい、何の役にも立たない。
 グルラディーヌは、焦っていた。少し前、血の匂いを嗅いだ様な気がしたのである。
 とっさに頭に浮かんだのは、姉のグシシーヌとチョウカの事。レトは、・・・・あいつなら多少何事があっても大丈夫だろうと放っておく。そこへ、この霧である。
 偶然にしては、出来すぎではないか。
 しかし、この霧では、動くのもはばかられる。とは、いうものの・・・・。
 しばらく考え込んだ後、ある術を試してみることにした。
『爆烈旋風』
 これは、物質だけではなく霊的なものにまで作用を及ぼす為、これが自然現象でなく何らかの術によって作られた霧であっても、効果を及ぼす・・・はず。
 ごうっ
 周りの草木を揺るがして、グルラディーヌを中心に風が舞う。
 しばらくして、風がおさまると、闇の霧も消え去っていた。
 それでも、悪い予感は、消えない。それどころか血の臭いが更に濃くなったような気がするのである。
 クルラディーヌは、急ぎ小屋に向かい走り出した。
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根性松

2008-11-20 20:53:40 | 植物
この斜面に生えている松

途中で おいしょお という感じで上を向いている形に感動して、バス停から降りてそこまで戻って、携帯電話を取り出し撮ってしまいました。

勝手に  根性松   と名づけました。


   2008/11/20  撮影
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みらーじゅ 16

2008-11-20 20:06:00 | 小説 ミラージュ
 時間は少し戻って、グルラディーヌが人形たちと森の中を走り回っていた頃、グリシーヌ達も空からの奇襲攻撃を受けていた。
「昨夜、襲われたのもこういうのですの?」
 体に似合わないごつい剣を軽々と振り回しながら、グリシーヌが叫ぶ。
「いや、でかさはこんなもんだが、こいつらじゃねぇ。昨夜のは、もっとまともな鳥だった」
 グリシーヌの剣より優に五割ほど大きい剣をぶん回しながら、レトが叫び返す。
 出来る事なら森に駆け込んで相手の翼を封じたかったが、チョウカがいる。この怪我では、走るどころか歩くのもやっとだろう。
 それにしても、レトが言っていた様に空を飛ぶものは、厄介である。
 攻撃が頭の上から降り注ぐのだ。しかも、自分が危ないとなると、急上昇してこちらの手の届かないところへ逃げてしまう。
 とりあえず今は、小屋があるから何とか持ちこたえられているのだが、それも、時間の問題だろう。
 グリシーヌは、小屋の周りを見回した。
 あたりに転がっているのは、いくつかの黒い羽根を持った巨大な塊。グリシーヌとレトが倒した空からの襲撃者である。が、そいつらは、後から後から湧いてくる。これでは、いくら倒してもきりがない。しかも・・・。
 どうっっん
 小屋が・・・。
 べきっ
 かなり
 ばきききき・・・。
 やばい状態に
 ばべきしぃっっ
 屋根から風が吹き込むのと、レトが大声を上げるのは、全く同時だった。
「うそだろぉ」
 グリシーヌが振り返ると、天井から複数の襲撃者がなだれ込んで来るところだった。
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並木道

2008-11-20 10:56:10 | 通勤路
近所の並木道です。

いまは、はらはらと(風があるとばらばらと)落ち葉を降らせていますが、落ちる葉がなくなり真冬を過ぎると、丸坊主に剪定されてしまいます。

それでも春になると、新芽が伸び、夏には緑の葉を茂らせます。


   2008/11/20  撮影
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みらーじゅ 15

2008-11-18 21:18:52 | 小説 ミラージュ
 びしり
 拳よりはるかに硬い筈の石にひびが入り、ばらばらに砕け落ちる。更に、残りのもう1体。
 グルラディーヌの手の中で、石は砂のように崩れ、倒れた人形も木の根にぶつかりばらばらに壊れた。
 それを見たクルラディーヌ。大きく息を吐き、人形たちが動かなくなたのを確認すると、慌てたように森の外に駆け出した。

 が、グルラディーヌがその場から去り、足音すら聞こえなくなった頃、壊れきっていない石の一つが輝きを取り戻し、人形をそこに残したまま、空高く舞い上がったのである。
 勿論、グルラディヌは、その事に気づいてはいない。

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みらーじゅ 14

2008-11-17 21:36:40 | 小説 ミラージュ
 狙うのは、人形の胸元で光を放つ石。
 多分、これで、人形の動きをコントロールしているのだろう。まぁ、生き物でない分、気配が掴みにくいが、動きはそれほど早くないのが救いと言えば、救いである。
 ぎしがし と、人形が近付いて来る音がする。
 木の陰から飛び出し、音のするほうに向け術を放つ。
『爆振弾』
 光る石ごと人形が砕け散る。
 あと、4体。
 息つく暇もなく、後から迫る人形に術を叩きつける。
『風裂刀』
 その勢いのまま、もう一発。
『爆振弾』
 びくん と、動きを止めた次の瞬間、ばらばらに弾け飛んだ。
 あと、2体。
『霊魔封結』
 自らの両手に術を掛ける。そして、同時に襲ってくる2体のうち一体を頭を低くして避け、もう一体の胸元に拳を突き出した。
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みらーじゅ 13

2008-11-16 20:54:46 | 小説 ミラージュ
 その頃、グルラディーヌはと言うと、薬草を探しに分け入った森の中で幾体もの木偶人形に襲われていた。
 ひゅるり と、飛んで来る攻撃をかわし、木の陰に隠れる。
 ・・・ったく、きりがない。
 グルラディーヌが、舌打ちをする。
 はじめに襲われた時に比べれば、かなり数は減っている。さっきも一体倒したのだが、まだ、5体も残っている。いい加減、嫌気が差してきた。
 出来る事なら、全部まとめてなぎ払ってしまいたいところだが、なんせここは森の中。
 下手な術を使えば、倒れた木の下敷きになってしまう恐れがある。やはり、地道に一体一体倒していくより他なさそうだ。
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みらーじゅ 12

2008-11-16 13:00:11 | 小説 ミラージュ
「あの嬢ちゃんは、魔犬を倒したと言っていた。魔犬なんて、そんじょそこらの武器なんかじゃとても仕留められるもんじゃねぇ。それに、こいつの出血まで止めちまった。しかも、お前さんは、全く驚く様子すら見せねぇ。少なくとも、そこらへんにいるお嬢さんじゃねぇって事は、分かるけどな」
 今までの能天気そうな感じと違い、鋭い口調でグリシーヌに問いかけるレト。それに対しグルラディーヌは、少し肩をすくめ、
「何者、と言われましても・・・。確かに、あの子は、魔術を扱えますわ。魔道士と言う程ではありませんけど。でもそれは、知り合いに魔術を扱える方がいらしたからで、その方に術を教わった事がある。と、それだけの事ですわ。だって、あの子が術を使うところを幾度も見ていますもの、驚かなくてもおかしくはありませんでしょう?」
 一つ一つ説明するように話していく。
「うぅ・・・ん。ま、あの赤毛のお嬢さんの事は、分かった。あんたの言うことを信じることにして、だ。で、あんたは? 姿に似合わず立派な剣を持っている様だが・・・」
 レトの視線がグリシーヌの腰に帯びた剣に注がれる。そこには、羽織っている上着から剣の柄が顔を出していた。
「別におかしいことでは、ないでしょう。こうして旅をしている以上、自分の身を守るために剣を持っていたとしても」
 澄ました顔でそういうグリシーヌであるが、ここで納得してしまうのは、剣について何も知らない者だけであろう。
 剣というものは、大抵が金属で作られている。したがって、剣が大きければ大きいほど重くなるのである。しかも、短剣はともかく(といっては、怒られるだろうが)剣ともなれば、扱い方もそれなりに難しくなる。下手な者では、剣を振り回すどころか剣に振り回されるのがおちである。それなのに、彼女が持っているのは、短剣ではなく剣なのである。
世間一般的に言う“ソード”である。これはどう見ても、一見華奢そうなお嬢様の持つ代物ではない。しかし、グリシーヌは
「そのうちこの剣を使えるということを、お見せしますわね」
 と、くすくす笑うばかりである。
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みらーじゅ 11

2008-11-15 07:52:00 | 小説 ミラージュ
「取敢えず、消毒して化膿止めを塗っておきますわね」
 荷物の中から薬を取り出し、テキパキと手当てをするグリシーヌ。そして、
「妹姫、お願いできますかしら?」
 と、後ろに控えるグルラディーヌを振り返った。それに頷き、傷口に手を当てて何事かを唱える。と、じくじくと傷口から滲み出ていた血が止まった。しかし、傷口が完全にふさがる前に手をそこから離してしまう。
「妹姫、治しませんの?」
 少々咎める様な口調のグリシーヌに、グルラディーヌが首を振って答える。
「この体力じゃ、傷治すまで持たないよ。それより私、薬草探してくる。多分、森の中にあると思う」
 フードを被り、雨の中に出て行こうとするグルラディーヌに向かって、グリシーヌが声をかける。
「気をつけて。それで、もし、薬草が見つからないようなら深入りする前にお戻りなさいな」
 その言葉に一つ手を振り、雨の中に飛び出していくグルラディーヌ。その姿をしばらくの間、見送っていたグリシーヌであったが
「あんたら、一体、なんだ?」
 という、レトの言葉に振り返った。
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みらーじゅ 10

2008-11-14 10:01:03 | 小説 ミラージュ
 昨夜、魔犬に追われ、散々な思いをした二人が顔を見合わせた。その時、
「おい、チョウカ。どうした?」
 レトの慌てる声が聞こえた。
 その声につられて視線を移すと、チョウカが真っ青な顔で藁の山に凭れ掛かっている。
「どうしたの?」
 グルラディーヌの問いに、レトが首を振る。
「ちょっと、見せて頂いてよろしい?」
 側によるグリシーヌに、レトが場所を空けた。
 脈を診てみる。かなり、弱い。それに、体温が、低くなっている。触れている手が冷たい。熱はないが、体力が随分落ちているようだ。
 雨に濡れたせいだろうか?
 その様子を心配そうに見ていたグルラディーヌが、ぽつり と、口を開いた。
「なんか、血の臭いがするんだけど」
 一瞬の沈黙の後、レトが思い出したように手を打った。
「そういやこいつ、怪我してたんだ」
 って、今頃、思い出さないでよ。
 グルラディーヌは、一発、突っ込みを入れようかと思ったが、この状態では、それどころではない。
「怪我って、どこ?」
 グルラディーヌの勢いに押されるように
「左足の膝の下んとこだ」
 と、チョウカの靴を脱がし、ズボンの裾を持ち上げた。
 多分、応急処置をする時に切り裂いたのだろう。裾が膝まで避けている。が、本当に、傷口に布を巻き傷の上を結わえただけの応急処置しかされていない。とはいうものの、こちらも大した薬がある訳じゃない。
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