「おかげさまで、何とかね。で、あいつは?」
「あそこ」
レムが指差した先で、やっぱり腕を突き出したまま、がさごそ動き回っている。 それにしても、布を引き裂きあれだけの力を使いながら、部屋の入ってこようとしない。
一体、どういうことなのか? と首をひねるレムの耳に
「れも、一体何らったの。いまのは?」
という、若干ラリっているようなカルの声が届いた。
「そんな事、あたしに聞かれても・・・・」
言いかけて気が付いた。テーブルから落ちた酒の瓶が割れていたのだ。
部屋中に漂う、強い酒の匂い。
その匂いに酔いそうになりながら、レムがちらりと隣を見る。と、案の定、赤い顔でほわほわ状態になったカルがいた。
「あれ、レムちゃん。なんか、へんなの聞こえるよぉ」
ほやほや状態のまま、入り口を指差すカル。その方向にレムが目をやると・・・・、いた。
裂けた布の向こう。元は、人だったもの。
カルが言った“へんなの”は、そこから聞こえてきていた。
はじめは、か細い笛のような音に聞こえたが、それが段々はっきりするにつれて、言葉として聞こえるようになった。それは・・・。
熱い。 痛い。 苦しい。 ・ ・ ・ ・ ・。
重なる声、押し寄せる言葉。そして、
ぼ う っっっ
いきなり、テーブルが火を吹いた。
驚いたレムが、ベッドに尻餅を付く。と、今度はそのベッドが、火を吹き上げた。
床から、壁から、部屋のいたるところから火が吹き上がる。
きぃ ぇ へへへへ ・ ・ ・ ・
かん高い、あざ笑うような人のものとは思えない気色悪い声。の、ようなもの。 何なの、何なの一体? 一瞬、思考が停止したレムだが、燃え盛る室内を見まわし、酒精・アルコールに火がついたら大変と消火呪文を唱えようとした時、
ばさ っ
白い粉が宙を舞った。と、僅かに火の勢いが弱まる。
ばさ っ ばさっ
更に白い粉が撒き散らされる。
それは、レムの頭の上にも降り注ぎ、なめてみるとしょっぱい。 ・・・塩、であった。
カルが抱えている袋から、塩を四方八方に撒き散らしているのである。
どういう効果があるのか、塩を撒き散らすごとに火の勢いが弱まっていく。それでも、一ヶ所だけ火が燃え続けているところがあった。
入り口の裂けた布のところである。
すかさずカルが、塩を一掴み叩きつける。
ぐ わ ぅ ご げ ぇ ぉ ぉ ぉ
やはり、何とも表現のし様のない(とにかく凄まじいとしかいいようのない)声を上げ、それが、僅かに萎(しぼ)んで白い煙を吹き上げる。
その時、レムの頭の中で何かが弾けた。
「あそこ」
レムが指差した先で、やっぱり腕を突き出したまま、がさごそ動き回っている。 それにしても、布を引き裂きあれだけの力を使いながら、部屋の入ってこようとしない。
一体、どういうことなのか? と首をひねるレムの耳に
「れも、一体何らったの。いまのは?」
という、若干ラリっているようなカルの声が届いた。
「そんな事、あたしに聞かれても・・・・」
言いかけて気が付いた。テーブルから落ちた酒の瓶が割れていたのだ。
部屋中に漂う、強い酒の匂い。
その匂いに酔いそうになりながら、レムがちらりと隣を見る。と、案の定、赤い顔でほわほわ状態になったカルがいた。
「あれ、レムちゃん。なんか、へんなの聞こえるよぉ」
ほやほや状態のまま、入り口を指差すカル。その方向にレムが目をやると・・・・、いた。
裂けた布の向こう。元は、人だったもの。
カルが言った“へんなの”は、そこから聞こえてきていた。
はじめは、か細い笛のような音に聞こえたが、それが段々はっきりするにつれて、言葉として聞こえるようになった。それは・・・。
熱い。 痛い。 苦しい。 ・ ・ ・ ・ ・。
重なる声、押し寄せる言葉。そして、
ぼ う っっっ
いきなり、テーブルが火を吹いた。
驚いたレムが、ベッドに尻餅を付く。と、今度はそのベッドが、火を吹き上げた。
床から、壁から、部屋のいたるところから火が吹き上がる。
きぃ ぇ へへへへ ・ ・ ・ ・
かん高い、あざ笑うような人のものとは思えない気色悪い声。の、ようなもの。 何なの、何なの一体? 一瞬、思考が停止したレムだが、燃え盛る室内を見まわし、酒精・アルコールに火がついたら大変と消火呪文を唱えようとした時、
ばさ っ
白い粉が宙を舞った。と、僅かに火の勢いが弱まる。
ばさ っ ばさっ
更に白い粉が撒き散らされる。
それは、レムの頭の上にも降り注ぎ、なめてみるとしょっぱい。 ・・・塩、であった。
カルが抱えている袋から、塩を四方八方に撒き散らしているのである。
どういう効果があるのか、塩を撒き散らすごとに火の勢いが弱まっていく。それでも、一ヶ所だけ火が燃え続けているところがあった。
入り口の裂けた布のところである。
すかさずカルが、塩を一掴み叩きつける。
ぐ わ ぅ ご げ ぇ ぉ ぉ ぉ
やはり、何とも表現のし様のない(とにかく凄まじいとしかいいようのない)声を上げ、それが、僅かに萎(しぼ)んで白い煙を吹き上げる。
その時、レムの頭の中で何かが弾けた。