宇宙時間 ソラノトキ

風樹晶・かざきしょう

勝手に趣味ブログ
のんびりしようよ

リーフ 37

2008-10-13 10:01:23 | 小説 リーフ
「おかげさまで、何とかね。で、あいつは?」
「あそこ」
 レムが指差した先で、やっぱり腕を突き出したまま、がさごそ動き回っている。 それにしても、布を引き裂きあれだけの力を使いながら、部屋の入ってこようとしない。 
 一体、どういうことなのか? と首をひねるレムの耳に
「れも、一体何らったの。いまのは?」
 という、若干ラリっているようなカルの声が届いた。
「そんな事、あたしに聞かれても・・・・」
 言いかけて気が付いた。テーブルから落ちた酒の瓶が割れていたのだ。
 部屋中に漂う、強い酒の匂い。 
 その匂いに酔いそうになりながら、レムがちらりと隣を見る。と、案の定、赤い顔でほわほわ状態になったカルがいた。
「あれ、レムちゃん。なんか、へんなの聞こえるよぉ」
 ほやほや状態のまま、入り口を指差すカル。その方向にレムが目をやると・・・・、いた。
 裂けた布の向こう。元は、人だったもの。
 カルが言った“へんなの”は、そこから聞こえてきていた。
 はじめは、か細い笛のような音に聞こえたが、それが段々はっきりするにつれて、言葉として聞こえるようになった。それは・・・。
 熱い。 痛い。 苦しい。 ・ ・ ・ ・ ・。 
 重なる声、押し寄せる言葉。そして、
     ぼ う   っっっ 
 いきなり、テーブルが火を吹いた。
 驚いたレムが、ベッドに尻餅を付く。と、今度はそのベッドが、火を吹き上げた。
 床から、壁から、部屋のいたるところから火が吹き上がる。
 きぃ ぇ へへへへ ・ ・ ・ ・
 かん高い、あざ笑うような人のものとは思えない気色悪い声。の、ようなもの。 何なの、何なの一体? 一瞬、思考が停止したレムだが、燃え盛る室内を見まわし、酒精・アルコールに火がついたら大変と消火呪文を唱えようとした時、
 ばさ っ
 白い粉が宙を舞った。と、僅かに火の勢いが弱まる。
 ばさ っ     ばさっ
 更に白い粉が撒き散らされる。
 それは、レムの頭の上にも降り注ぎ、なめてみるとしょっぱい。 ・・・塩、であった。
 カルが抱えている袋から、塩を四方八方に撒き散らしているのである。
 どういう効果があるのか、塩を撒き散らすごとに火の勢いが弱まっていく。それでも、一ヶ所だけ火が燃え続けているところがあった。
 入り口の裂けた布のところである。
 すかさずカルが、塩を一掴み叩きつける。
 ぐ わ ぅ ご げ ぇ ぉ ぉ ぉ
 やはり、何とも表現のし様のない(とにかく凄まじいとしかいいようのない)声を上げ、それが、僅かに萎(しぼ)んで白い煙を吹き上げる。
 その時、レムの頭の中で何かが弾けた。
コメント
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