水でセシウム分離 除染土壌戻せる 産学連携技術開発 (01月05日)
バイオマス(生物由来資源)関連の研究開発を行うCDMコンサルティングと東京工業大学、(財)原子力研究バックエンド推進センターは共同で、水を使って土壌から放射性セシウムを分離する技術を開発した。堆肥や稲わらなどにも適し、分離後は土壌を農地に戻すことができる。
この技術は、土壌に水を加え専用容器内で温度200~330度、圧力2~4メガパスカル(20~40気圧)で一定時間保つのがポイント。この状態で水は、強い酸と同様の分解作用を持ち、土壌から放射性セシウムを引き離す。水に溶けた放射性セシウムは顔料のプルシアンブルー(紺青)を使って吸着。水は環境中に放出できる。放射性セシウムを吸着した沈殿物は放射性廃棄物として処理する。
福島県飯舘村の農地土壌で試験したところ、放射性セシウム濃度が1キロ当たり3万ベクレルの土壌から98%以上を分離し、600ベクレル以下にすることができたという。内閣府の除染モデル実証事業に参加。1月には、同村内に設置した実証プラントでさらに効果を確認する。
コストはプラントを動かす電気または重油代が土壌1トン当たり500円、吸着剤の紺青が同2000~3000円掛かる。土壌は5センチ剥ぎ取ると10アールで50トンほどになる。またプラントの建設費用は処理能力が1日5トン規模で2、3億円、同300トン規模で18億円程度。施工メーカーによって実際の価格は変わる。
堆肥や稲わら、剪定(せんてい)枝、下水汚泥、焼却灰などにも使え、応用範囲は広い。3者は技術の利用を希望する事業者に技術指導や特許ライセンスを供与する。研究を統括するCDMコンサルティングの早藤茂人社長は「農業分野で利用してもらってこそ価値ある技術。牛ふん堆肥の循環利用のサイクルを元に戻して畜産の再建にも貢献できる」と話している。
農地の除染で土壌を剥ぎ取る場合、取り除いた土壌の処理が課題になっている。土壌から放射性セシウムを分離する技術には酸を使う方法があるが、酸性の溶液からどう分離するかなどの問題が解決されていない。
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