50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

クモの姪とは若者はハチ・・・

2015-03-26 20:00:00 | 小説
クモの姪とは若者はハチという渾名でとおっていた。首都の育ちで幼ななじみどうしであり、
「私の身も心もチクチク刺すから、ハチ」と彼女がこの渾名をつけたのだった。旅行にでた日、城門への坂道をのぼりながら彼女は、花の蜜のような甘い声で呼ぶように、
「二人で旅にでてきて、よかった」
とハチの腕にすがりついてきた。

(つづく)