50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

老人と婦人の混成団体が・・・

2014-12-28 21:28:57 | 小説
老人と婦人の混成団体が連休の旅行中の、帰途で城址に立ち寄ったものらしく、疲労と倦怠を英次の周辺に漂わせる。噴水に憩う英次には邪魔なのだ。迷惑だった上に、四角い包みはその視界をさえぎっていた。その旅行者らは英次のリュックから見て、同じ旅行者の気易さのようなものを無意識に抱いたのだろう。それで英次のところに群れたばかりであるが、その中にも一人異種めく老女はいて、英次にある哀れを覚えていたのであった。疲労が滲む声そのものにも、英次は直情に虫好かないものだから、
「物をみだりに受け取るな」
とふと浮かんだことをいった。妙子の口調そのまま叫ぶように。怯む老女の細い腕が引っこみ、側の者らは潮のように引きさがって、老女を着物ごと誰かが抱きかかえるとその団体は散って行ったものだった。母のいいつけの効能に、英次が信頼を厚くする結果を残した、それだけで一人の老女を囲う旅行者の群れは去った。
彼らと互いに絆を確かめあうなどは、とても無理な話、所詮根なし草でしかなかった彼らが消えた後、英次はまたベンチに根を張るふうに落ち着いた。今度は、父雄吉の言葉が浮かんだ、オオム返しに吐いた。

(つづく)