50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

雄吉はムキになる・・・

2014-12-15 20:20:04 | 小説
雄吉はムキになる。ファンシイになどと勧められて改装していた壁、床、天井、食卓などなどに取り囲まれ、英次を空気のように存在させているのである。その時に隣家の犬が吠えた。妙子が例のように苛立ったのだ。雄吉は日ごろから無信仰を譲らない態度を固めたい。
「親子の間柄を捨てているような、そんないい方は止せと・・・」
とまれ、ひょっとするとエゴじゃないと絶句するが、遅きに失した。
「ご自分で認めましたわ。いつもあなたは自分中心にしか考えてらっしゃらないから、ちょっとしたことで揚げ足を取る」
卓上に目を落とした気づかわしげな様子の妙子。
「つまりだな、英次はいつまでも私の息子だといっている」
話を飛躍させる雄吉に隙をみつけて、妙子はいう。不毛の対話と今朝もなりつつあり、
「それは私の子でもあるわ。いいえ、あなたはいつも逃げているように見える。理屈で、親子の間がどうにかなると思いますの。バカバカしい・・・」
と妙子が語尾が独りごとめかしている。食卓から出窓の方に顔を投げて、
「緑の市。すっかり忘れてましたわ。早く出かけて、形のよい鉢花を選ぼうと思っていたのに」
「団地の広場の?」

(つづく)