50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

「公園をぐるぐるする・・・

2014-12-27 20:26:06 | 小説
「公園をぐるぐるするのが、仕事ってわけか。作業服を明日から着てくることだ、そうしたら手伝わしてやるがどうだ・・・」
「・・・」
「英次くんが好きな毛虫も、それに若い娘に一目惚れされぬとも限らんし、親孝行ができるというもんだし、その上名札が生きてくる。先生のいうことを聞くもんだよ、英次くん。だが待てよ、仲間の意見を聞いて見ないことにゃ」
と山田は駆けて行く英次を目に捕えている。「おおい。おじさんは何もからかうつもりじゃなかった、それだけは覚えておくんだよ」リュックが見る見る遠くなる英次に向け、緑濃くなりつつ明るい道いっぱいに家族連れや、老人や若者がこちらにくると皆英次をふり向くのに構わず、彼の良心のようにそう投げかけた。
そして英次は、その山田が今は頭の外に捨てられ、
「それは仕事だからね、嫌なことがある。パパがいったけな。つらい」
つらいと息が弾むのを噴水の側で静めることにしたのである。残りのバナナをリュックから取り出し、むしゃくしゃと食っていたのだ。冷たさが喉に渡った。しゃあしゃあ、と噴水みたいと思った。
「あの、これ貰っていただけません」
と老女の声を聞いている。

(つづく)