【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

税務署用と銀行用

2019-07-09 15:00:00 | 決算書・試算表
「銀行に提出する決算書を作ってほしいんですよ。私は、税金をごまかすつもりはありません。実際、今まで税務調査でも大した問題は指摘されませんでした。問題は銀行からの融資なんです。決算書が原因で融資を断わられることが多くて困っています。今の税理士さんにこのあたりの相談をしても適切な対応をしてくれません。引き続き今の税理士さんには税務署との対応はお願いするとして、銀行用の決算書を作ってくれる人を探しているんです。公認会計士さんならできるんでしょ!?」

このような絶句してしまう相談をしてくる人がいます。本当はそのまま無言で立ち去りたいですが、それもできませんので根気よく説明をします。

◆儲かっている会社は決算書がどうであれ金融機関が群がってくる

節税対策が必要なほど儲かっている会社であれば、「勘定科目は間違いだらけで訳が分からない」「節税対策をしたことから一時的に赤字になっている」といった状態であっても金融機関は喜んで融資をします。金融機関にはわかるのです。決算書が不正確・不明瞭であっても大勢に影響はないのです。

節税対策が必要な会社は税務署のことだけを考えて決算書を作成すればよいのです。税務署は勘定科目の名称や配列には無頓着で、「仮払金と立替金」「未払金と未払費用」「短期借入金と長期借入金」「営業利益と経常利益」といったことには寛大です。これらは税額には影響しないからです。

◆ボーダーライン近辺の会社が金融機関に提出する決算書は正確かつ明瞭でなければならない

金融機関は、融資できるか否かのボーダーライン近辺の会社については決算書を慎重に検討します。融資をして不良債権化することを恐れるからです。「不可解な勘定科目」「流動と固定の区分」「営業利益と経常利益の関係」「年度や月次での比較」など、疑問点が解決できるまでとことん検討します。不正確に不明瞭は許されません。

◆税務署用と銀行用の2種類の決算書が存在するのではない

税務署用の決算書に対して銀行用の決算書が存在するのではありません。税務署に決算書を提出する段階から、金融機関を意識して決算書を作成しておかなければなりません。税務署は決算書の体裁(様式、勘定科目)には寛大ですが、金融機関は厳格ですので、税務署の緩い基準で決算書を作成していてはいけないのです。

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★いったんは融資をあきらめてリストラをする

「融資さえ受けられたら逆転できる!」「決算書をもう少し工夫して書けば」「そうすればみんなに恩返しもできる」というお気持ちはわかります。しかし、金融機関が融資をしてくれないのは「資金繰りが悪い」「利益率が低い」「売上が減り続けている」といった根本的問題を抱えているからです。このことは決算書以外からも判断できるのです。

経理担当者や会計事務所を替えても結果は同じです。むしろ、経理体制が変わることによる混乱と疲弊という損失が生じます。

リストラをしてください。早ければ半年もすれば成果は現れます。次回の決算書にリストラの成果が表れていれば融資を受けることも可能です。

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