【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

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特定口座年間取引報告書の見方

2022-09-24 11:00:00 | 相続・贈与、資産運用、節税
株式投資をしている人の大部分が特定口座を開設していますが、「特定口座年間取引報告書」についてはあまり知らない人が多いです。特定口座であれば確定申告をする必要はありませんが、確定申告をすれば税金が還付される、譲渡損失が繰越せる、複数の特定口座で損益通算できるケースがあります。この判断をするにはまずは特定口座年間取引報告書の見方を知る必要があります。

【ご注意】下記は特定口座で「源泉徴収あり」を選択している場合の説明です。

◆特定口座年間取引報告書がなければ確定申告はできない(証券会社は必ず発行する)

「取引している証券会社は特定口座年間取引報告書を発行してくれない!」という人がいますが、特定口座を開設していればその証券会社(銀行も含む。以下同じ)は必ず特定口座年間取引報告書を発行してくれます。ネット証券の場合にはサイトからダウンロードできます。ネット証券でなければ郵送してくれます。

どの証券会社であっても「名称」は特定口座年間取引報告書です。「様式」も同じです。証券会社が提供するこれ以外の取引状況の数値や自身で計算した数値はこれと異なっていることがありますので確定申告に用いることができません。

◆特定口座年間取引報告書は税務署に提出されます

特定口座の年間の取引状況は、証券会社から税務署に報告する義務があります(譲渡益や配当の額と関係なく報告されます)。それが「特定口座年間取引報告書」にほかなりません。特定口座年間取引報告書は、証券会社が顧客サービスのために作成するのではありません。

◆確定申告は特定口座年間取引報告書の記載に従って行う

特定口座の年間の取引状況は特定口座年間取引報告書を通して税務署に報告されていますので、確定申告をするにあたっては特定口座年間取引報告書のとおり確定申告書も記載しなければなりません。確定申告書で特定口座年間取引報告書と異なる数値を記載してしまうと税務署から連絡がありその修正を求められます。

◆特定口座年間取引報告書の内容

「譲渡に係る年間損益計算及び源泉徴収税額」と「配当等の額及び源泉徴収税額等」に分かれます。前者は売却益とそれに伴って源泉徴収された税額です。後者は配当とそれを受け取る際に源泉徴収された税額です。

◆譲渡に係る年間損益計算及び源泉徴収税額

これは年間(受渡日ベースで1月1日から12月31日まで)の個々の譲渡を積み上げた金額です。譲渡益と譲渡損がある場合にはプラス・マイナスされます。「譲渡の対価」「取得費」「差引金額」、それぞれを確定申告書の所定の箇所にそのまま転記しなければなりません。

上記の税額は国税(所得税)と地方税(住民税)に分けて記載されています。これも確定申告書の所定の箇所にそのまま転記しなければなりませんが、国税はともかくとして、地方税については確定申告における税額には直接に影響しないことから(確定申告は国税である所得税に関する手続であることから)記載を忘れがちです。この記載を忘れると、地方税の計算において源泉徴収された税額が反映されなくなりますので注意が必要です。

◆配当等の額及び源泉徴収税額等

この部分は項目が多いことから大変複雑ですが、途中は読み飛ばして合計額である「差引金額」と「納付税額」を見れば年間の配当合計額と徴収された税額がわかります。税額が国税(所得税)と地方税(住民税)に分けて記載されているのは譲渡と同じです。

◆譲渡損失の場合

譲渡損失の場合は記載が異なってきます。譲渡の部分は税額が記載されません。譲渡損失は配当と相殺されることから、配当部分の差引金額の上部に譲渡損失が記載され、配当から減額する形式になっています。

「譲渡損失>配当」の場合には配当から徴収された全額が還付されます。「譲渡損失<配当」の場合には譲渡損失相当額が還付されます。

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