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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

個人事業者(事業主)の廃業手続

2020-02-13 19:15:00 | 廃業、会社清算
個人事業者(事業主)の廃業手続は会社と比べて非常に簡単です。「会社」という得体のしれない存在の後始末(消滅手続)が無用だからです。

個人事業者は事業を始めるとき、「誰にも相談せず」、「どの役所にも手続をしないで」、「いつの間にか事業を始めていた」という人がほとんどです。廃業するときもこれと同じことがいえます。

◆営業を停止する

廃業をするからにはどこかで営業を停止しなければなりません。売るのをやめるので、仕入もストップしなければなりません。従業員は解雇して、事務所・店舗・工場・倉庫は引き払わなければなりません。これで、外見上は幕が引かれたことになります。

あとは、事業をしていない「一個人」として事業をしていたころの「後始末」をします。

◆売上代金を回収する

掛売りをしている場合には、営業停止時に未入金部分が残るのでこれを回収しなければなりません。営業を停止したからといってこの分の請求ができないということはありません。

◆在庫や設備の処分

在庫や設備は処分します。売却できる場合には売却し、できない場合には廃棄します。在庫や設備の処分は必ずしなければならないわけではありません。在庫や設備の置き場所があるのであれば放置しておいてもかまいません。

◆仕入や給与の支払い

営業終了時に支払いが済んでいない仕入代金や給与を支払います。営業を停止したからといって支払いが免除されるわけではありません。

◆私生活用に転用できるもの

店舗や事務所、車両や備品などで私生活用に転用できるものがあればそのまま転用することができます。商品が生活用に消費できる物(食料品、衣料品、衣料品など)であれば消費してもかまいません。

◆残った借金

借金が残った場合は大変です。事業用の借入金であっても、廃業したからといって免除されるわけではなく、利息の支払いと元金の返済はいままでどおり続けなければなりません。それが無理な場合は、返済期間の延長や利息のみの支払いにしてもらいます。それでも無理な場合には破産をするしかありません。また、借金を残して死亡した場合には、家族などの相続人が返済しなければなりません。

◆最後の確定申告

個人事業者の廃業手続で、唯一役所が関わってくるのが所得税の確定申告です。廃業した年についても、翌年の3月15日までに確定申告をしなければなりません。例えば、令和元年9月末に廃業した場合には、平成31年1月1日から令和元年9月末までの事業所得を確定申告しなければなりません。また、廃業届も提出しておく必要があります。消費税の課税事業者である場合には消費税の申告も必要です。

なお、自己所有の事業用土地建物や車両を売却した場合には、事業所得ではなく譲渡所得となり、事業所得とは異なる申告方法になるので注意が必要です。また、この売却が廃業した翌年以降になる場合も申告は必要です。

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★廃業後の屋号と看板
廃業後は、もう屋号を使用してはいけません。また、看板も下げなければなりません。ただし、廃業処理が長引く場合には、屋号については「以前その屋号を使用していたこと」、看板については「廃業事務手続のための拠点であることを明らかにするため」であれば使用してもいいと思います。

★廃業後の事業用預金口座
個人事業者は氏名に屋号を付した名義の預金口座を開設していることが通常ですが、廃業後はこれを解約したほうがいいです。ただし、廃業処理に関する入出金がなくなるまでは解約しなくてもよいです。廃業すれば事業用預金口座は不要です。それに、いつまでも事業用預金口座に入出金があると、税務署に「本当は廃業していないのでは」と疑われます。

★長期間休業する場合の税務手続(廃業と同じ扱い)
個人事業者が長期間休業して、年間を通して事業所得が生じなくなれば、廃業したということになります。もし、活動を再開する場合には、あらためて開業届を提出しなければなりません。一方、会社は事業をすることだけが目的ですので、法務局で登記されているかぎり(解散登記をしていない場合)長期間休業しても以前の姿のまま営業を再開できます。

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