ラヂオデパートと私

ロックバンド“ラヂオデパート”におけるギタリストとしての津原泰水、その幾何学的な幻視と空耳。

サングラス

2009-10-15 10:21:00 | マルジナリア
 主催しているバンド“ラヂオデパート”の広報に始めたこのブログだが、不思議とと云うか矢張りと云うか、出版業界の裏話めいた事を書いた翌日のアクセスの方が圧倒的に多い。書くことが仕事の人間が、仕事の事を書いている訳で、此方としては面白くもなんともないのだが、文体実験には便利なので自由連想式に書いている。この文体というのは書き手と文章の距離感の事で、表面上の話ではない。

「サングラスのままでいいですか」と写真スタジオで訊いた。
 後に阿呆みたいなポストモダン・ホテルの硝子だけで出来た壁面にぶつかって壊してしまう、レイヴァンの度入りサングラスを僕は掛けていた。いつかこのブログに書いた、自動ドアに破壊された眼鏡とは別物だ。
 僕は大変に眼が悪い。生まれた瞬間から悪い。眼球が奥深いのだそうで、網膜に焦点を結ばない。赤ん坊のとき医師が母に「この子は視えなくなる」から覚悟して育てるようにと云ったとか。眼が悪いから失明するというのは短絡のようだが、疾患は疾患を呼ぶらしく、同様な眼球の持ち主だった父は、なんだかんだで片眼が完全に視えなかった。書道をやっているというのに残っている眼もろくに視えなくて、晩年は専ら篆刻(てんこく)に熱中していた。石印に鉄筆で字を彫る、謂わば極小の書道。
 僕が大した才能も無い癖に音楽に拘泥するのは、そういう父の姿を見て育ったからだろう。

 子供の頃の栄養不足で発育が不全だった戦中派と、自分が同じ道を辿るとは思っていないが、最近は老眼も進行しており何を見るにも難儀している。印象が悪いからと、以前は人前では普通の眼鏡と心掛けていた。今は無理をせず、ライヴでも待合せでもサングラスで失礼している。
 焦点が眼球の半ばにあり、網膜までにまた光が拡散してしまうからだろう、書店程度の照明でも眩しくて堪らない。だから書店には余り入らない。入っても、必要な物だけを買って逃げるように出ていく。

 さてと、CAPTAIN ROCKET(これが正しい表記らしい)のライヴが迫ってきた。渋谷屋根裏、10/18(日)の夜の部です。昼の部には出ませんので、お気を付けあれ。20時20分より四十分程度のステージとなる模様。
http://shibuya-yaneura.com/

 編成はドラム×3、リードベースと普通のベース、及び津原(グリセンターとテルミン)。前衛ぶったノイズユニット等ではないので、怖がらず御来場ください。Blue Man Groupの音楽性に近いかもしれない。顔色は普通です。