ラヂオデパートと私

ロックバンド“ラヂオデパート”におけるギタリストとしての津原泰水、その幾何学的な幻視と空耳。

夢か?

2007-12-23 00:59:44 | 録音
 Mac miniと、Logic Pro 8を含むLogic Studioを一気に購入。しかも銀座。漸く大人になった気分だが、もっともディスプレイは弟から貰った。即ち、音楽の道具と執筆の道具を分離させたのである。
 いかしたリズムを奏ではじめていたパワーブックのハードディスクも、ついでとばかりに交換。相変わらずOSXとLogic Pro 7は入っているが、音楽に対しては緊急用と位置づけている(執筆は未だ、専らOS9)。と云おうか、余程の事態でなければロジックプロ7には触れないような気がする。それほどロジックプロ8の進化は凄まじかった。
 Vision、Studio Visionという、いかにもMacらしいソフトウェアからDTMに入門して、録音物をグラフィック同様に扱えることに驚嘆し、その瞬間「いつか大きなスタジオでレコーディングして――」という夢想が、良くも悪くも吹き飛んでしまった過去がある。だからロジックプロ7の、機材裏の配線を覗きこんでいるようなユーザー・インターフェイスには馴染めなかった。同8のインターフェイスは、在りし日のスタジオヴィジョンとほぼ同等である。マニュアル要らず。にも拘わらずマニュアルブックも出色の出来。
 音色も7よりふくよかな気がするのだが、これはパソコンの違いかもしれない。

〈きっと食べてね〉制作に則して記すと、ミキコ、ビアンコによる生ギターと歌だけの仮演奏に、奥野のドラムを重ね、僕が思い付きの間奏をリッケンバッカーで入れ、太朗がうちにやってきてベースを入れ――というところまではパワーブック+ロジックプロ7でおこなった。
 そこでマックミニを導入。更に大人というか焼糞というか、StealthPlugなるエレキ用インターフェイスを、やっと利用できる日が来たぜとこれも購入。バンドルされているアンプシミュレイターAmpliTube 2 Liveで遊んでいたら、案件だったリズムギターの音が簡単に決まり、ほんの短時間で録れてしまった。
 ギタリストとして、人として、尻上がりの進歩を遂げた二〇〇七年であったと独りむせび泣いた。僕は演奏する時だけは決して酒を飲まない。いきおい演奏可能な時間は限られている。リズムギターといっても割に凝ったことをやるので、勢いよく録りきるのは結構難儀なのだ。
 大概、機材を並べケーブルを繋ぎ、マイクやアンプの、これという位置や音量を探しているうちに日が暮れる。暮れたら飲まねばならない。セッティングには触れぬようにして、録りは翌日にまわす。翌日その場所に行くと犬が滅茶苦茶にしている。
 今はなにか思いついたら、その五分後には試し録りしている。夢のようだ。夢か?

 機材面より実は、ヌートリアスを始めてビアンコくんとやり取りするようになったことが、より大きく作用しているとも感じる。彼には編輯者のようなところがあって、特に催促してくるとかではないのだが、じゃあこういう手順で、とおおまかなスケジュールを決めてくれる。すると僕のなかに〆切が生じる。
 ギターの音決めにしても、後でビアンコくんが駄目だと感じれば、変えてしまうか弾き直しを要請してくるだろうから、逆に自由闊達に弾いてしまえばいいのだと気楽でいられる。頭のなかで鳴っている音を弾けばいい。

忙中閑あり

2007-12-22 23:56:17 | 録音
 やっと閑あり。
 ブログ本来の趣旨に鑑みるに、ご報告すべき事項がたんとある。

 録音環境が大きく変わった。まずドラム録り。KORGのD888というレコーダーをバンドで購入し、録音スタジオではなく練習スタジオで自由に録れるようになった。同時録音トラックが限られるしマイクも特別なものは用意されていないから、当然品位は劣るのだが、高いスタジオ代に怯えながら演奏する必要がないのは、一切自腹のアマチュアには嬉しい。
 以前も中古の前身機で似たようなことはしていたのだが、パソコンとの連携に難があり苦心を強いられていた。アナログ機材を扱うようにトラックごとにMacに録りなおし、トラック間のタイミングのずれは耳を頼りに補正する必要があった。この作業に辟易して、金も無いのに「これからは金で解決する」等と嘯いていたのだ。
 D888はパソコンとUSBで繋がって、ハードディスクが自動的にスレイヴされる。さっき録音してきた物がそのままMacの書類になってくれる訳で、この簡便さといったらない。高級機ではかねてから当然の仕様だったけれど、学生鞄程度のサイズの民生機で、この恩恵に浴せるのは有り難い。

 ヌートリアス〈きっと食べてね〉のドラムはこれで録った。スタジオにはShureのSM58しかなく、仕方なくそればかりを六本並べた。Mac上で再構成すると、なかなか迫力のある音像が得られた。
 どの機材は仕様が何ビットの何ヘルツだから使える使えないといった話が好きな人がいるけれど、はっきり云うぞ。大差ない。上手い演奏が下手に録れる機材も、その逆も世の中には存在しない。D888も然り。
 価格が落ち着いて今や「安いほう」のマイクであるSM58も、じつに優秀な設計だと今にして感じる。むろんアンビエントくらいは別の、高音に強いマイクで録ったほうが後の処理が楽だが、かといって高級マイクである必要は感じない。商品に高級低級はあるが、音に高いも安いもない。要するに、ちゃんと録れていれば宜しい。一万円くらいのステレオマイクでも試してみようと思っている。

 酷使してきたパワーブックG4に老いを感じはじめたこともあり、自宅での録音環境も一新した。これは別項に記す。