私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

「新・台湾の主張(その5)」~往来100万人時代の日台関係

2005年08月04日 | 台湾

中国の無秩序反日暴動や、竹島問題等での日韓関係の悪化等で、ある程度は予想されたことでしたが、上半期、日本から台湾を訪れた旅客は前年比44%増の54万7000人にのぼり、日本からの訪台者が初めて年間100万人を突破する勢いなのだそうです。
SARSの影響を巻き返すべく企画された「台湾観光年2004」も、不幸にして韓流ブームと競合し不発の感もあっただけに、台湾側の捲土重来に期す思いは並々ならぬものがあったのでしょう。台湾側は更なる追撃体制として、日本人渡航客を対象に「総額5000万円の豪華賞品が当たる! 台湾へ行こう!キャンペーン」を9月から行うようです。何だかペナントレース終盤の逃げ切りを図ろうとする球団監督の〝ニンジン作戦〟を彷彿とさせますが・・・・

 さて、先日の質疑応答の席では日華関係についても記者から質問が寄せられたようです。仏フィガロ誌の記者からは、
「質問八 もしも明日、台中間で問題が発生した場合には、日本はどちらの味方をするでしょうか。言葉を変えますと、日本は安全保障において信頼できるパートナーだと思われますか」
という中々鋭い質問がなされたようですが、総統府のプレスリリース(英文)には、さらにこの後に、〝Please answer by yes or no.〟という言葉も入っています。これに対する陳総統の回答の一部の日本語訳が不正確なので、総統府のプレスリリース(英文)を引用いたしますと、
[Taiwan is Japan's best friend, and we are sure that Japan is also Taiwan's best partner. Taiwan and Japan are each other's best ally in terms of values, economics, democracy, and security.]
(台湾は日本の親友であり、同じく日本にとっても台湾はベストパートナーであると確信しています。台日両国は価値観、経済関係、民主主義、安全保障の点において互いに最高の同盟国です)
安全保障に掛かる部分は、〝partner〟でなく、〝ally〟(同盟国)という表現がなされているのには大変驚かされました。事実上「日本は安全保障面において信頼できるパートナーです」と肯定的な回答をしたということです。
陳総統の日本への秋波は、7月7日の〝抗戦〟60周年の談話の辺りから気にはなっていたのですが、まず米国を志向し、「ある越えられない壁」に突き当たり、然る後に日本へという一連の流れは、これまた李登輝前総統と同じ動きで大変興味深く思えます。日本では大変ファンの多い李登輝前総統ですが、彼が日本へ積極的なメッセージを送り出したのは総統退任後のことです。両者共に、基本的に日本は米国に連動して動くという判断だったのでしょう。
陳総統は、(1)台湾のWHOのオブザーバー参加への支持、(2)万博期間中の査証免除措置、(3)中国の「反国家分裂法」に対する懸念表明、(4)EUの対中武器禁輸措置解除への反対表明、(5)「2+2」における台湾海峡の共通戦略目標化という五点を挙げて日本への謝意を述べています。
万博期間の台湾からの渡航客に対する査証免除措置は、特例法案で恒久化の運びとなりました。このところ、台湾人観光客のチャーター便というのが日本の地方空港のトレンドとなっています。私も春節初日の中正国際機場で「札幌」「函館」「釧路」「帯広」・・・・といった行き先表示を見て、一体ここはどこの国の空港だと驚いた記憶がありますが、生産年齢人口が減少し、少子高齢化が進展していく中においては、観光資源を軸とする交流圏の拡大は不可欠な要素の一つです。「正論」の八月号で、台北駐日経済文化代表処許世楷代表婦人が、『(万博期間中の)ノービザのことで、台湾人が私たちにお礼をいうんです。「本当にありがとうございました。私たち、ノービザで来ました」って。ビザというのは、そんなに手続きが難しいわけじゃないのに、なぜこんなにお礼をいうのだろうと考えました。そして、気づいたのです。台湾人は、日本人が自分たちを他の国の人たちと同じように扱ってくれたのが嬉しいのです』と述べていますが、査証免除の恒久化が日本の親愛の証として台湾側に受け取って貰えることを期待したいと思います。
もっとも、陳総統も言及しているように、日華間には漁業権を巡る問題等も存在するわけですが29日に東京で行われた漁業会議に於いては、連絡体制や協議の堅密化等、具体的な進展は見られたようです。同盟国の米国とも経済・通商等で種々利害が衝突する局面がありますし、肝心なのは共通の価値観で理性的に話し合う素地の有無という点でしょう。この点においても民主主義という共通の価値観の存在は大変重要であり、日中や日韓間との交渉ごと等との相違がもっとも際立つ部分ではないでしょうか。
陳総統は、「一時的に合意に達することができなかったとしても、今回できなければ次回があり、次回がだめならばその次があります」と述べていますが、両岸交渉の件でも粘り強く努力する姿勢を強調していました。台湾人は牛によく例えられるそうですが、未来志向で前向きな努力を重ねようという「台湾之子」の姿勢には感銘を覚えた次第です。

往来100万人時代という一つの節目を迎え、両国間の交流の更なる深化と「台日の両国民が手を携え、協力していくこと」が期待されますが、陳総統は最後に日本人に向けて「中国を恐れるな」と述べています。週刊文春誌での対談でも同じことを言っていたのですが、英国のチェンバレン首相がナチス・ドイツに行ったような宥和外交、日本で言うなら媚中土下座外交が功を奏する余地がないのはこれまでの歴史で散々証明されたことです。
ライス国務長官は、今年三月の上智大学における講演の中で、日米同盟を二国間の枠を超えて民主主義の普及等の共通課題について活用していく「戦略的開発同盟」という考えを提唱しました。長官は中国も経済のグローバル化の中にある以上、民主化への潮流は不可避であるいう考えも示しましたが、米国が台湾海峡政策に関して積極的な関与へと軸足を移しつつある中、同盟の相手国たる日本も、単に米国に追随して動くのではなく、極東地域の安定に如何に寄与していくかという積極的かつ具体的な提案を提示すべき段階に差し掛かっていると言えるのではないでしょうか。

※写真・・・・29日、台北駐日経済文化代表処での第15回台日漁業会談

奥の壁に掛かっているのは、国父・孫文の肖像画でしょうか。


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1 コメント

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Unknown (masa)
2005-08-05 01:28:59
初めまして。最近陳総統の発言に感心することが多いです。隣の三国からいつも程度の低い発言しか聞こえてこないので、余計そう感じるのかもしれません。民進党が国民党に負けないことを願っています。
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