私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

シーパワーとランドパワーの交錯~日本へ秋波の台湾与党

2005年07月15日 | 台湾
渇水対策本部もめでたく解散され、九州北部の梅雨明けも秒読みとなった今日この頃ですが、東京で日台漁業交渉が行われる頃が関東の梅雨明けでしょうか。

◆日台漁業交渉で「尖閣」棚上げ方針、台湾秘書長が表明(読売)

日本側の取締りに対し、尖閣諸島及び彭佳嶼の海域に宜蘭県の漁船100隻が集結し抗議活動を行ったことに端を発する両国間の漁業争議ですが、今月下旬に東京で漁業交渉が行われる運びとなりました。台湾側は予想通り「尖閣」の領有権問題を突っ張らず、漁業問題のみに争点を絞ってきましたが、游錫コン(ユウ・シャクコン)総統府秘書長は、読売新聞のインタビューに対し、「(尖閣の)領有権問題を漁業と絡めると、他国(中国)が介入して複雑になる」とその理由を述べていますが、実利面での成果重視と台湾の主権を意識した発言です。また、同氏は「抗日戦争勝利60周年」に関連して、
「日本は台湾の大切なパートナーだ。中国のような非理性的な(反日)民族感情が高まることを望んでいない」
「終戦という言葉が適切で、歴史問題で隣国同士がいがみあうことは地域の平和にマイナス。未来に目を向けるべきだ」
と日本との関係に配慮するコメントをしているのですが、陳総統からも同様の発言が種々見受けられるのが興味深く思えます。

◆「今はパートナー」台湾総統、抗日戦談話で対日配慮 (読売)
◆台湾:陳総統、日本に配慮し異例の抗日勝利声明文(毎日)
◆陳水扁総統が「同心十七号演習」を視察、抗戦勝利60周年に言及(台湾週報)

やはり「(日台は)はパートナー」「抗戦」というキーワードが目立ちます。〝中華民國〟総統として、〝中華民國〟軍の演習を視察した際の挨拶の中でも、「7月7日は盧溝橋事件の記念日であり、今年は『抗戦勝利60周年』に当たる」と述べているのは極めて異例な気もしますが、「抗日勝利」を殊更に鼓舞して、与党批判と両岸接近という対立軸を打ち立てる野党筋を牽制したいという現政権の思惑の表れといえるでしょう。先日「様々な局面に垣間見えるような台湾社会内部の〝分裂〟」と述べましたが、台湾政界内部のランドパワー(大陸)へ向かうベクトルとシーパワー(海洋)へ向かうベクトルの交錯がこの件からも垣間見えるようです。

漁業交渉に絡めて、現政権が日本へ秋波を送っている側面も注目に値します。先月の一触即発の尖閣漁業危機の頃は、国防部、陳政権、国民党(王金平氏)、三者三様の思惑が交錯していました。漁民の反発に応え、漁民への権益をするという大義名分(国民党の王金平氏個人は自身の国民党代表選へのアピールも)で国民党など野党議員は陳水扁政権に海軍の出動を強く求めました。それに対して国防部は渋々付き合った訳ですが、国防部は視察の目的に関しては、「台湾漁船と日本水産庁の巡視船が衝突した海域を視察し、漁民の操業権利について干渉を受けない立場を示すため」とコメントしていました。
もっとも国防部は単にフリゲートを派遣しただけでなく、F-16戦闘機も配備した通常演習の体裁を取りましたが、これは対中牽制の意味合いと国防部としてのプレゼンスを示す目的だったと思われます。国防部が要求している軍備調達のための特別予算案に反対しているのが他ならぬ野党であるという事情で付き合わざるを得なかった。陳政権も「漁民の権利保護」を持ち出されてはむやみに反対もできないし、前述した特別予算の絡みから、それに反対している野党筋にもある程度迎合し、黙認せざるを得ない。この間陳総統が沈黙を保っていたのはそうした事情があったのではないでしょうか。
外交部は、「軍艦の視察は台湾の領海範囲内であり、日本側と衝突が発生することはない。視察の挙行は台日の漁業会談に影響はない」とコメントしていましたが、水面下では日華両国の「政府レベル」でのすり合わせが行われていたのは間違いないでしょう。この演習に関して海自や海保が無反応だったのがその何よりの証拠だと思います。そして、最終的には、「総統府秘書長」の名で漁業交渉に関するコメントを発しているように、台湾側は「政府間交渉」に持ち込んだ、という見せ方をするに至ったわけです。
「台湾が軍艦を派遣してきた」点に関しては、ブロガーの間でもかなりの反発する声が上がっていました。その現象だけを捉えればちょっと穏便でない事態で当然の反応なのですが、その間沈黙を守っていた陳総統が、「抗日戦争60周年」という絶妙のタイミングで日本に向けてメッセージを送りました。当然中国とのコントラストは際立ちますし、軍艦派遣のフォローとしても実に効果的でした。これには舌をまいたな、というのが私の感想です。
つい最近までの国民党は、〝反共必勝〟の同士として日本との結びつきが強かったわけですが、大陸反攻がキーワードのランドパワー志向から、親中・国共合作路線の模索と、藍色陣営の大陸光復への手段が変質してきている点を見逃すべきではありません。親中反日路線は日本にとっての国益とは相容れないものでしょう。現在の日本にとっての「敵の敵の味方」は台湾の緑色陣営なのです。

「雨降って地固まる」ではありませんが、日本側は今回の漁業交渉を契機に、台湾の現与党とも関係を深め、台湾海峡を巡る安全保障等に関しても水面下で話せる素地を醸成しておくべきであり、そういう認識に立って交渉の場に臨むのを期待したいところです。

※写真・・・・MRT淡水駅

この先は台湾海峡。海峡の「沈黙」は保たれるのか・・・・


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
同感です (肉球)
2005-07-17 01:33:43
いつもお世話になっております!



暑さに参ってしまって、カビの生えまくってる頭がますます回転しなくなってきている今日この頃です爆



*「雨降って地固まる」ではありませんが、日*本側は今回の漁業交渉を契機に、台湾の現*与党とも関係を深め、台湾海峡を巡る安全*保障等に関しても水面下で話せる素地を醸*成しておくべきであり、そういう認識に立って*交渉の場に臨むのを期待したいところです。



同感です。

国民党はねぇ。。。

組む相手では無くなったと思います。

日本の政治家も現実と未来を考えて、価値観を共有できる未来志向のよりよい相手を選んで機会を上手くとらえて連携を深めていってほしいですね。



台湾とは、互いを尊重しあえる関係を維持しているという点でかなり安心感はありますね。

韓国なんて。。。。ひどいもんだ。怒

何が友情年やっちゅうねん。



島根の漁民達は困ってるんだぞ!あんたらの一方的な不法占拠で。。。



現実を見据えた未来志向の国か、後ろしか見てない思考停止国かは大きな差ですね汗
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今年は「日本におけるドイツ年」です! (tsubamerailstar)
2005-07-18 11:42:26
肉球様いつも有り難う御座います!



>韓国なんて。。。。ひどいもんだ。怒

何が友情年やっちゅうねん



『マンガ嫌韓流』、大ブレイクの兆しですね。まぁ、みんな捏造・歪曲の寒流には辟易しているのでしょう。

と、いうより私の頭の中では、今年は「日本におけるドイツ年」、ドイツのオーケストラ、オペラの日本強襲に備えて、如何にチケットを確保し、かつ財布の中身の防衛に努めるかということしか考えていませんね。(爆)



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確かにドイツ年のはずが・・・ (肉球)
2005-07-20 00:43:03
毎度こんばんわです!



頭の中のカビもますます増殖し暑さに参ってる私ですが

myマシンまでも唐突にイカれてしまいました泣

焦げ臭い匂いを発しながら。。。(何故??)



なので借り物から投稿しております。

西日本BBSの方にもお邪魔させていただこうと思って

携帯からアクセスしてみましたが、あちらのBBSは

携帯からはみれないのですね??



2005年は日本におけるドイツ年のはず。

でも、ドイツのこと、取り上げてるのあまり聞かないですねぇ。

(私が知らないだけなのですか?)

何故か既に終わってる落ち目な寒流のことばっかな気がする。

メディアは、何に気を使ってるんかな?

来年のワールドカップだってドイツで開催なんだしさ。。。

もっとドイツのこと取り上げても良いのでは?と思います。



「マンガ嫌韓流」、アマゾンでぶっちぎり一位らしいですね?

韓国メディア及び政府が、

予想通りに大いに噛み付いてくれたらおもろいのにな~。

(教科書採択の件みたいに笑)

「うわ、自分ら反日を当たり前に娯楽としてやっとるクセに

日本が苦言言うたぐらいで何言うとるん!」

心狭いな~、と突っ込みを入れてやりましょう。



財布の中身の防衛は、難しい課題ですね!

私のもまるで工作員が潜んでいるかのように、いつの間にか

自覚が無いままに軽~くなってしまっておりまする爆



ほんまボケてるわ。。。私









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騒いでいるのはクラシックオタクだけ? (tsubamerailstar)
2005-07-20 18:07:12
肉球様いつも有り難うございます!



「日本におけるドイツ年」で大騒ぎしているのはクラヲタだけかもしれません。(爆)



>携帯からはみれないのですね??



あれ、見れますよぉ。しかし肉球様色々大変そうですね。何か文体にもそこはかとなく疲労の色が・・・・仕事は適度にサボりましょう。(爆)

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