私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

「新・台湾の主張(その6)」~国防意識と未来への展望

2005年08月05日 | 台湾
「台湾は毎日が13デイズ(Thirteen DAYS)」・・・・キューバ危機をテーマにした米国のパニック映画を例に引き、対岸から700基ものミサイルを向けられている台湾の現状を端的に説明しているのも、これまた演説巧者・陳水扁の面目躍如たるところです。
中国が制定した「反国家分裂法」に対しては、台湾国内で「反併呑」のデモが行われたり、政府も欧米にその不当さを訴える使節団を派遣したりしていたようですが、「それは中国の国内問題なのではないか?」という冷淡な反応を示す国もあったのかもしれません。陳総統は、今回の質疑応答で「反国家分裂法」を楯に軍拡を推進する中国に対して以下のように言及しています。
[We hope that the world, while pursuing such universal values as democracy, freedom, human rights, and peace, will not adopt a double standard. For example, in the Korean Peninsula, the nuclear threat from North Korea has caught the world's attention, which has led to the Six-Party Talks. When it comes to China's military threat, however, the world just turns a blind eye or, as with the minority of European Union countries, even proposes lifting the arms embargo on China. I think this very much indicates a double standard.] (我々は、世界が民主主義、自由、人権と平和のといった普遍的価値を追求する傍らで、二重標準(ダブルスタンダード)を採用しないことを望みます。例えば、朝鮮半島における北朝鮮からの核の脅威は世界の注意を引き、六カ国協議へと至りました。ところが、世界は中国の軍事的脅威に関しては、まさに見て見ぬふりをするか、欧州連合の中には中国への武器禁輸措置を解除しようと提案する国さえあります。これは二重標準(ダブルスタンダード)に他なりません)
折しも朝鮮半島で行われている「六カ国協議」と比較、対照する形で、「これは二重基準(ダブルスタンダードではないのか)」と鋭い問題提起を世界へ投げかけています。まさにぐうの音もでない正論であり、世界はこの陳総統の主張には反論できないでしょう。
日本のマスコミでこの件について言及しているのは日経位です(「中国ビジネス」のコーナーに記事があるのが脱力ですが・・・・)が、中国が建国以来ジェノサイド(大量殺戮)の連鎖が絶えることなく、〝台湾攻撃予告法〟まで制定している悪辣極まりない国家であるという正確な現状認識に立った報道を心がけて欲しいものです。ニクソン訪中の際に北京に入れてもらうべく、中国に不利益な報道をしないという言論人の魂を売り渡すような愚挙を各社が強行したのが諸悪の根源でもあるのですが、「もはやそんなのはクソ食らえ!」と反旗を翻すマスコミがあれば、かえって国民の支持を得られるのではないでしょうかね。

陳総統は、翌27日台中での大規模軍事演習を視察した際に、テロ事件に見舞われたにも関わらず、冷静な日常生活を続ける市民の姿について、
「こうした姿は英国政府が国民に要求したものではなく、英国国民が日頃から強い自己防衛の信念を確立しているからであり、このためテロ攻撃は予期した効果をあげなかったのだ。このことはまたテロリストの攻撃を受ける可能性がある世界中の国と都市に、全国民が敵に対抗する強い意志をもつことだけが、敵に対抗する武器なのだということを知らしめた」
と言及しています。2月には「全民国防教育法」が立法化されたそうですが、陳総統は全国民の国防知識と国防意識のあり方の重要性を軍での講演で説いています。26日のネット講演では、「平和と民主主義と自由は決して天から降ってくるものではなく、それらの多くは衝突や独裁政治の危険と隣り合わせになっている」とも述べていましたが、これなどもスイス政府の「民間防衛」と全く同じ見解です。台湾で同著が売ってあるのかどうなのかは存じませんが、陳総統の国防意識はスイス政府のそれとほぼ同じ考えに立っているものと思われます。
以前もふと思ったことなのですが、陳総統、そして台湾は最終的には「太平洋のスイス」を志向したいのではないでしょうか。現時点では台湾海峡を巡る米中のpower politicsという要因から抜本的な体制変革は難しいでしょうが、台湾の地勢的なポジショニングを鑑みても、永世中立国的な方向を目指すのは将来的には実現の余地はあるでしょう。
日本人になったり、中国人になったりと、外的要因に翻弄され続けた過去の歴史からも、台湾がそういう方向性を志向するのはきわめて自然なことなのかもしれません。

※写真・・・・総統府で東京に向けインターネット講演を行う陳総統(手前は呂秀蓮副総統)

陳水扁総統は8月2日、参議院議員の衛藤征士郎氏と会見し、日本政府が台湾からの観光客に対するノービザ措置の恒久化を可決しようとしていることに対しては、「それが実現すれば、両国の良好な関係を象徴するだけでなく、台湾の二千三百万国民に対する重視を示すものとなり、私は非常に感動している」と表明したそうです。

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1 コメント

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TBありがとうございました (喜多龍之介)
2005-08-05 15:20:14
コメントもありがとうございました<(_ _)>。



つい昨日かそこらの記事書かれていて笑ってしまったことが

ありますが、それは、中国は当初、中露合同軍事演習を、

台湾の目の前でやりたいと主張しまくっていたとか…。



しかし、片割れのロシアとはいえ、どこから見ても中国が悪い

と見做される台湾恫喝の片棒を担いだとみられてはこれ災難

とばかりに断固として拒否したんだそうです(大笑)。



どちらもどちらですから、ここでロシアをほめるつもりもありませんが、

これが真実ですよね。



足を引っ張り合い、恨みからしか物を考えられない国というのは

結局こういうところが限界なのでしょう。
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