私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

【知日派】謝長廷・DPP総統候補、母校京大で講演

2007年12月17日 | 台湾

名古屋に行く用事があったので、帰路京都観光も兼ねて謝長廷・民進党総統候補の講演を聴いてきたのですが、鹿苑寺金閣や清水寺といったベタな観光地を改めて回るのもいいものです。とりわけ、下賀茂神社の糺の森や龍山寺の紅葉は格別でしたね。(しかし、冬の京都は予想以上に寒かった・・・・)

◆日台関係、より緊密に 総統選候補で謝氏、母校京大で講演(京都)
◆謝長廷・元行政院長が来日、京都大学で「日台関係強化の道」をテーマに講演(台湾週報)

  謝氏夫妻

 日本李登輝友の会に対抗??

 本日の〝戦利品〟(クラシック音楽ヲタク的行動?)

昨年11月、旅行中に台北市長選の演説中の謝長廷氏を見かけたことがあったのですが、京都で間近にみた氏はいささか疲れているようにも見え、冒頭生硬な感じでした。まぁ、〝アウェー〟では台湾でのそれみたいな、イケイケな雰囲気は難しいでしょうが、それでも次第に興に乗ってきたのか、「李登輝氏は京大出身の唯一の大統領ですが、来年は私も・・・・」「マスコミは中華料理屋でのバイト経験にしか関心がないようだが、〝テッパンヤキ〟だけではなく、(法)哲学も勉強したのです(苦笑)」「日本が台湾関係法のようなものを制定してくれれば、私が来年総統になっても日本に旅行に来られます(笑)」等とウィットに富んだ内容をさらっと言ってのけたのは氏の面目躍如たるところかと思いました。

講演そのものは30分程度で、謝氏はレセプションも早々に退席してしまいました(「おぃ、もう終わりかよ!」「おぃ、もう帰るのかよ!」と正直思った・・・・)が、会場で配られた<台湾維新>と記された二冊の冊子、ならびに『逆転勝利 謝長廷の生命美学』という書籍(サイン貰おうと1000円で購入)からは、氏の政治哲学や人となりが伺えて興味深いですね。

 『逆転勝利 謝長廷の生命美学』

謝氏は、明治維新の舞台となった京都が自らが提唱する<台湾維新>の源流にあると力説していましたが、これは前述した冊子によると、「国民党独裁政権によって鎖国的な思考様式が残っている台湾が、日本の明治維新にならって、政治・経済・文化・価値観などあらゆる側面で改革を断行し、台湾の周囲を囲む海洋を窓口として世界に向けて開かれた国を目指す」という<海洋立国構想>です。対中政策に関しても、「私としても開放を主張するが、台湾の利益は海に囲まれたことである。中国ばかりに目を向けると、後ろに広き大海原があることも忘れてしまう。海洋国家は世界へ開放すべきであり、中国は世界布石の一つに過ぎないし、中国だけをロックオンしてはいけない。対中問題において価格破壊戦みたいに開放を競うなら、最後の利益者は常に中国側にあるだろう」と記されていますが、大陸に向かうベクトルの(と、いうか大陸意識が抜けきれない)KMT(馬英九候補)vs海洋に向かうベクトルのDPP(謝長廷候補)というのが明確な対立軸の一つであると言えるでしょう。
行政院長辞職直後の謝氏は両岸直行の解禁等についても言及していましたし、柔軟で現実的な対中関係の構築に努めるものと思いますが、憲法改正(特に領土の規定の変更)と国号変更は、米中が黙認している現状維持ラインに逸脱するものであり、これらを過度に強調しすぎると、選挙戦中に波風が立つ可能性もあるかと思います。

明治維新→台湾維新といったインスピレーションに限らず、高雄市長時代の氏は、「盲導犬クィールの一生」に感動し、「高雄市視覚障害者盲導犬利用自治条例」を可決させたり、日本の「まちづくり」からヒントを得て、国や自治体は草の根の「まち」からボトムアップで建設すべきだという「コミュニティ主義」を掲げ、その理想が愛河の浄化として結実した(台湾人留学生によると、以前は近寄ることすら覚束なかったそうですし、高雄の宿のコンシェルジェも謝市長の業績は言ってたな)のだそうです。
つまり、謝氏は、「台湾優先」「文化優先」「環境優先」「弱勢優先」という自らの政治哲学を具現化するヒントの一部を日本から得た訳ですが、これは明治期の日本が、西洋の文化や制度に学んだ姿勢とも一脈相通じるものがあります。手本になるものがあれば、それを進んで取り入れる(当然、日本の悪しき部分も冷静に見ているでしょう。例えばハンセン病問題についても、日本の自称親台組織はまるで無視でしたが、人権派弁護士の謝氏は言いたいことがもっとあっただろうと・・・・)進取の精神に富むのが謝氏の真骨頂であり、【知日派】たる所以(日本統治の無条件肯定等ではなく、あくまで氏が手本にしているのは、戦後の先進国・日本である点に留意すべき)なのでしょう。
逆に石原都知事は、陳総統の市長時代の施策からヒントを得て、ディーゼル車規制条例を導入しましたが、このように互い学ぶべき点があれば取り入れ、相互協力し、刺激しあう両国関係が構築できればいうことはありません。謝氏はNGOといった非政府組織も絡めた若い世代への交流にも期待を表明していましたが、国家vs国家といった枠組みを超越した、既成概念にとらわれない新たな枠組みの志向も台湾の将来へ一石を投じる可能性を多分に秘めているのではないでしょうか。

「日本と台湾が、アジア、そして世界でもっとも進歩的な改革勢力になることこそが、私が京大で学んだ精神の体現である」と謝氏は講演を結びましたが、「進歩」という言葉を聞いた瞬間、期せずして謝氏が民主進歩党(DPP)の名づけ親だったことを思い出した次第です。

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3 コメント

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Unknown (ちゃいにーず)
2007-12-24 17:26:49
>謝長廷・民進党総統候補の講演を聴いてきた

思い立って行動できるのがうらやましいです。
ことしはいくつか聞いてみたいなと思う講演があったのですが、「どんな人が来るんだろうか」とか「居づらい雰囲気じゃなかろうか」とか、要らない心配(?)が先に立っちゃうんでうしょねぇ。
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新年快楽! (tsubamerailstar)
2008-01-04 00:45:18
>ちゃいにーず様

いやぁ、万事腰が重くなりました。
2月でまた一歳歳を取るかと思うと気が重いです。30歳も半ば過ぎると老け込むのでしょうか?(爆)
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『謝長廷先生は、韓國東洋大學榮譽博士』 (韓国の栄誉博士号)
2008-03-16 17:00:59
http://times.hinet.net/SpecialTopic/2008_vote/candidate.jsp
 2008 総統大選 新聞特輯

  民主進歩党 候選人

   總統候選人

    謝長廷先生

     學歴:

      成功高級中學初中部
      台北商業職業學校
      台灣大學法律系
      律師高等考試第1名
      日本京都大學法學碩士
      日本京都大學博士班課程 結業
      韓國東洋大學榮譽博士
      美國哈佛大學資深研究員
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