私の「認識台湾」

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台湾経済界、国民党に接近――対中交流で関係改善、政権復帰にらむ。

2005年01月10日 | 記事
2006/05/22, 日本経済新聞 朝刊

 【台北=山田周平】台湾の経済界が中国との交流拡大に積極的な最大野党・国民党との関係改善に動き始めた。国民党が主導する中国との交流活動への参加企業が増える一方、台湾独立志向を強める陳水扁政権とは総統府顧問を退くなどの形で距離を置く経営者が目立ってきた。陳政権下では対中ビジネス環境の改善が困難と判断し、二〇〇八年の次期総統選で政権復帰する勢いの国民党に再接近している。

 「台湾企業が中国大陸でいかに力を発揮するかが関心事です」。国民党の江丙坤副主席は十日、台北市内のホテルで約二百人を前にあいさつした。台湾の電機二十六社で構成する「華聚産業共同標準推動基金会」が中国側団体と共催したフォーラムの開会式だ。
 二日間の議論を経て、携帯電話用半導体の共同開発などで合意。〇五年六月に発足した基金会の発起人であり、現在は会長(董事長)を務める江氏は「陳政権は中国と対話できていないので国民党が代行した」と語る。
 国民党が四月中旬、中国共産党と北京市で開いた「経済貿易フォーラム」には、EMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手の鴻海精密工業など台湾の約五十社が参加。参加企業の売上高の合計は、台湾の域内総生産(GDP)の四八%に相当するという。
 陳政権の与党・民進党幹部は「フォーラムでの議論は実際の経済効果が薄いものばかり」と冷ややか。だが、民進党支持とみられていた企業や経営者が堂々と参加したことには落胆を隠さない。
 典型例が運輸大手の長栄(エバーグリーン)グループ。創業者である張栄発総裁の三男、張国政副総裁を派遣した。
 張総裁はかつては李登輝・国民党政権の支持者として知られた。しかし、二〇〇〇年の総統選では他の経営者とともに「国政顧問団」を結成し、海事法の顧問弁護士として契約した縁のある陳総統の当選を後押しした。
 張総裁は陳総統が再選された〇四年時点ですでに距離を置いていたが、三月に台北市の国民党本部ビルを二十三億台湾ドル(約七十八億円)で購入すると決定。財政難の国民党を資金支援したとみられ、三男の国共フォーラム派遣で完全に国民党支持に戻った。
 戴勝通・中小企業協会理事長の国共フォーラム参加も痛手とされる。戴氏が経営する帽子メーカーは中国への投資集中を警戒する陳政権の意向に従い、台湾が外交関係を持つハイチに〇三年、工場を建設した優等生だったからだ。
 かつて国民党一色だった経済界の支持は〇〇年の政権交代で民進党にも流れたが、陳政権の求心力低下とともに揺り戻している形。〇五年五月にはパソコン大手、宏碁(エイサー)創業者の施振栄氏が総統府国策顧問、辜濂松中国信託金融控股董事長が総統府資政(上級顧問)を退いている。

<陳政権、求心力低下進む>

 二十日で発足から六年を過ぎた陳水扁政権は求心力の低下が著しい。有力紙、中国時報の十八日付の世論調査では、陳総統の政治運営に「満足」との回答が二七・七%に対し「不満」は五四・四%。世新大学の調査でも同様の傾向が出ている。
 直接の原因は四月以降、陳総統の親族や側近に不明朗な株取引や金券受け取りの疑惑が相次ぎ浮上していること。現時点ではインサイダー取引や収賄として立件された事例は無いが、国民党の金権体質を批判してきた民進党だけにイメージ悪化は避けられない。
 経済界には台湾独立を志向する陳政権下では、中国との実務関係の拡大が進まないことへの不満が募る。長栄グループは中台間の空運・海運の直行便解禁で中国と合意できないことに業を煮やしたとみられる。
 一方の国民党は、二〇〇五年八月に就任した馬英九主席(台北市長)の人気が依然高く、〇八年の政権復帰が視野に入ってきた。
 〇五年四月の国共トップ会談で中国共産党とパイプを築いたことも、経済界はプラス評価している。

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