私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

対日関係でご指導・ご鞭撻を:馬英九次期代表

2008年03月28日 | 台湾

ROC外交部が25日に「馬英九の台湾でも対日関係が後退することはない」という声明を発表していましたが、亜東関係協会ではなく、外交部が発信源というのも、近年の対日重視姿勢の表れですね。
72年の日華断交は、前年の国連脱退より衝撃的だったと述解する関係者もいたようですが、かように危機に瀕した日華関係(これに比べると頭が馬英九に変わるだけですからねぇ・・・・)を支えたキーマンの証言は、意外と少ないのが残念なところです。対日外交に生涯を費やした最後の駐日参事官の林金茎氏もその一人ですが、氏の著書『梅と桜 戦後の日華関係』(サンケイ出版)は復刊に値する内容だと思います。

◆Ma seeks advice on visit to Lee(Taipei Times)
◆Ex-president Lee meets with future president Ma(Taiwan News)
◆李登輝前台湾総統 「中台統一懸念」を一蹴 日本の人脈を次期政権に生かす(FujiSankei Business i)
◆Bush urges Hu to reach out to Taiwan(Taipei Times)
◆Taiwan-Japan relations will not take step backwards: MOFA(Taiwan News)

<Ma, who took a box of Japanese apples and four of his own books as gifts, thanked Lee for his encouragement and promised to pay more visits to his former boss. Ma said he had expressed his gratitude to Lee for the compliments he made during an interview with Japan's Sankei Shimbun that described him as "self-righteous, but also modern," and said that he would seek more advice from Lee in the future, especially on the nation's relations with Japan.>
(日本産のリンゴ一箱と自身の著書4冊を手土産に携えた馬氏は、李氏の激励に謝意を示すとともに、かつての上司を訪問する機会はこれからもあるだろうという見解を示した。李氏が日本の産経新聞とのインタビューで、「独善的な部分もあるが、現代的な感性も兼ね備えている」と馬氏を評したことに対する謝意を表明したと述べるとともに、特に対日関係についての多くの助言を今後も李氏に求めていきたいという考えを示した)

<When Lee was the Chinese Nationalist Party (KMT) chairman he campaigned for Ma when he ran for Taipei mayor against President Chen Shui-bian (陳水扁) in 1998. At the election eve party, Lee held Ma's hand high and called him a "new Taiwanese." That open endorsement was seen as a major factor behind Ma's victory.>
(李氏が中國國民党(KMT)の主席を務めていた1998年に、陳水扁総統の対立候補として馬氏が台北市長選に立候補した際、李氏は馬氏の選挙応援を行った。投票日前日のパーティーで、李氏は馬氏の手を持ち上げ、馬氏を「新台湾人」と称した。李氏が公然と馬氏を支持したことは、馬氏の勝利の背景をなす大きな要因であったという見方であった)

馬氏が李氏と台北市長選以来10年ぶりの「手打ち」──日本産のりんごを手土産にというのが意味深に映りますが、台湾では結構なお値段ですよね。普通のりんごはかごに無造作に盛られていますが、日本産は箱に詰められ店の奥にうやうやしく鎮座している感じで。
先の総統選で、「選挙監視部隊」として派遣された第七艦隊の空母がどこからやってきたのか、という点は馬氏も承知していたようです。日本メディアとの会見では、「日米同盟が地域の安定に果たす役割」について高く評価する姿勢を見せていましたが、この辺は伝統的に国府の対日外交の急所でもありますので、尖閣の領有権で無用に日本側を刺激する動きは手控える(領有権そのものは主張するでしょう)かもしれません。

馬氏は、国民党の抗日戦勝利で、植民地支配に抵抗していた台湾も光復を果たした、という史観の持ち主であり、2年前のワシントンポスト紙とのインタビュー(記事)では、

<Taiwanese who revel in the Japanese colonial years "are still brainwashed," Ma said. "It was not a just war, and Taiwan could have done better" without the citizens who now recall that period with fondness.>
(日本植民地時代の追憶に耽っている台湾人は「未だに洗脳が解けていない」のです、と馬氏は言う。「あれは正義の戦争などではありませんでしたし、愛着を込めて日本時代を回想しているような連中抜きでも台湾は首尾よくやれたはずです」)

と述べていました。李氏は、馬氏が忌み嫌う「未だに洗脳が解けていない」老人の一人ではないかと思うのですが、我が国でも、自社さ政権で首相の座についた村山氏が、党の見解を大転換させ、自衛隊の存在を容認したようなこともありました。
あまり意地悪く突っ込まずに、中共がよく言うところの「その言動を見て、その言動を聞く」という姿勢でしばらく様子見ですかね・・・・

<However, his unpredictable character has always been a feature of Lee's political position. In a recent interview with Japanese media Lee paid lots of compliments to Ma.>
(しかしながら、この予期しがたい特質こそが、李氏の一貫した政治姿勢でもある。先日行われた日本のメディアとのインタビューにおいて、李氏は馬氏へのお世辞に余念がなかった)

馬氏と対談した李氏について、Taiwan News紙はこのように冷ややかに評していますが、まぁ、李氏は「したたかな隣人」の代表的存在ですし、その対日パイプが活かされるのであれば、日本にとっても悪い話ではないでしょう。李氏は日本人の歓心を買うツボは心得ていますから、歴史認識等の持論を振りかざして、日本の世論を刺激することを控えるようにといった助言を行うのではないでしょうか。
KMTが下野したこの八年で、台北側は林金茎氏や辜振甫氏、日本側は山中貞則氏や椎名素夫氏といった、国府と日本の関係を支えた要人の多くが鬼籍に入りました。
山中氏のように、蒋介石総統の〝以徳報怨〟に恩義を感じる自民党議員が、国府台湾を支持するような空気も様変わりしましたが、新たに政権の座についたKMTは、かつてのような自民党一辺倒の関係構築ではなく、基本的には〝全方位外交〟を志向するように思います。(実際、福田首相と共に自民党終了、の可能性も高いわけで・・・・)

馬氏は日米を訪問する意向も表明していましたが、 「(有力政治家など)誰に会えるかが問題。日本側の状況を見て判断する」(日経)とのこと。逆に言えば、「有力政治家に会えなければ、わざわざ訪日しない」ということ(選挙に勝ったとたん、いきなりエラそうなやっちゃなぁ・・・・)ですが、誰が相手するのだったら氏も満足するのやら・・・・(ずばり、小泉前首相との会談を希望している気が。小泉氏は台湾には興味ないでしょうけどね)
どうせだったら、中国の胡錦濤国家主席の訪日に合わせて、東京で歴史的会談というのはどうでしょう?ブッシュ大統領も胡氏との電話会談で、中台の対話を促し、胡氏自身も「九二共識」に基づいて対話を行う意思がある旨回答していました。
国際社会は誰も反対しない話でしょうし、胡錦濤国家主席は来るなといっても来るのでしょう。だったら、東京という舞台で、二つの中国の指導者による歴史的会談のお膳立てをしてやろうという野心を持つ外交官は誰かいないのでしょうか?

胡錦濤:「一つの中国」=中華人民共和国→<一国両制統一中国>
馬英九:「一つの中国」=中華民國→<三民主義統一中国>


──両者の主張には相当な隔たりがあるとは思いますが。

   



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10 コメント

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Unknown (蘆洲人)
2008-03-28 19:53:41
こんばんは。

そういえばこの間「TVBS」の「抗日戦争秘史」を見たんですが、蒋介石は元々賠償請求をする気満々で、日本でも担当者との協議中机を叩いて恫喝したそうですが、米ソ冷戦を見据えて日本を反共拠点として利用しようとしていたアメリカに「うちも賠償放棄するからオマエも放棄しろ」と言われてしぶしぶ賠償請求放棄したそうです。
これはモロ外省系の「TVBS」製作の番組なんで信頼できるのではないかと思います。
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当然な考えでしょう (高雄人的横)
2008-03-28 22:11:41
一政治家のままなら、従来通りの反日スタンスでも問題なかったのでしょうが、「総統」ですからねぇ。。馬ちゃん。
馬ちゃん的には、日本の総理経験者で党内に力のある人物、或いはそれに近い重鎮との会談をしたいところでしょう。

とは言え、自民・民主共、小物ばかりですしね(汗)

台湾の重要性を理解している大物政治家・・・
誰も居ないような。。血筋が良いが阿部・麻生は微妙。
やはり小泉か。。森はどうかなぁ。
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先総統 蒋公 (tsubamerailstar)
2008-03-28 22:54:03
>蘆洲人様

>しぶしぶ賠償請求放棄したそうです。

これは別のまぁ客観的な文献でも目にしました。結果的に国府が日本に恩を売るような形でプロパガンダとして活用したんですよね。その他天皇制云々とか大陸からの引き揚げ等も含めて、日本側には相当な効果だったのは間違いない。
満州利権ズブズブでA級戦犯での訴追を逃れた岸が、蒋べったりだったのがそのいい例ですよ。

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森、麻生あたりでしょうね (tsubamerailstar)
2008-03-28 22:56:12
>高雄人的横様

落としどころは森前首相あたりでしょう。この人は国府ベタベタな方ですから。安倍辺りはもう賞味期限切れ、逆に安倍の方が乗ってきたりして。(爆)
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Unknown (yosiaki)
2008-03-29 00:02:01
選挙結果といい、このパンダ写真といい、中国に向かって一直線って感じもしますね。日本は台湾に冷たかったのであんまりどうこうは言えないんでしょうけど。
ウリナラ新酋長みたいに、台湾の新大統領もしばらくはおとなしいのでしょうか?李登輝さんがうまくおさえてくれるといいですけどね。
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どうだろ? (tsubamerailstar)
2008-03-29 18:33:07
>yosiaki様

国民党ももう60年近くになりますからね。台湾化したというシーンが多かったんじゃないかと思いますよ。だからこそ投票したって人もいたんじゃないでしょうか。

李登輝氏の謝氏支持表明はあくまで「個人的な投票行動」と限定していて、謝氏への投票を呼びかけたりしなかった点がまぁ、流石だわな、という気もしました。
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Unknown (宜蘭人)
2008-03-30 03:33:33
こんばんは。

全然記事の趣旨から外れておりますが、選挙を終えて留学先のアメリカに帰る馬英九の娘が中華航空の特別待遇要請(アップグレード&行列無しのVIP待遇)を拒否して、イパーン人と同様に行列に並んでエコノミー席チェックインしたり、馬夫人は次期ファーストレディにも関わらず普通にバス通勤したり、今のところ「庶民派」アピールには成功しておりますね。

陳水扁ファミリーの失敗(特権享受)の教訓をきっちり生かしているあたり馬陣営にはなかなかの策士が付いているものと思われます。
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馬英九氏のご令嬢 (tsubamerailstar)
2008-03-30 16:36:11
>宜蘭人様

馬英九氏の娘って前ヒロスエに似てるとマスコミが話題にしてましたよね。この前花蓮の例のワンタン屋でこの一家が猛烈な勢いでワンタン食ってるとこ見て、なるほど、という気も。今となっては「早大中退、バツイチ子持ちの元アイドル」に似ていると言われてもほめ言葉でも何でも無いわけですが・・・・(爆)

そういえば、馬氏は新幹線も人民席に乗ってましたな。同じ便でニアミスした謝氏は6号車付近に立っていたからG車でしょう。

本人の能力は大したことないでしょうから、色々ブレーンは付けないといかんでしょうね。

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Unknown (宜蘭人)
2008-04-02 02:28:10
こんばんは。

>本人の能力は大したことないでしょうから、色々ブレーンは付けないといかんでしょうね。

別に「総統」だからといって全ての実務をこなさなければならないというわけでなし、ブレーンが優秀ならそれで国は回るんではないでしょうか?

駄目なら次の選挙で落選するだけですからね。台湾の場合下手に理屈をこねるよりはある意味泥臭い生活感覚で総統を決めるところがあるじゃないですか?
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会社も然りか・・・・ (tsubamerailstar)
2008-04-02 14:06:48
>宜蘭人様

外交と経済でしょうかね。李登輝時代に比べてASEAN関係は後退してる感がありますし、その辺はKMTの方が人材はいるような。

本人は本人で、前も記しましたがホントに福建省のミサイルを撤去させたらノーベル賞もんでしょう。中秋節以降に両岸直行チャーターの定期化の話まとめればそれなりだとは思います。

まぁ、言ってみれば「新卒採用」でなく、「経験者採用」であるわけで、この点はハンナラ党に政権交代した韓国と似ている面もあるでしょう。その意味では、対中面も含め、ハネムーン期間は意外と短いんじゃないかとは思います。


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