「反日総統」への心配は無用：馬英九次期代表

辛亥革命百周年と中華民國百年の双十節は期せずして馬英九KMT政権の手に委ねられることになりますね。林金茎氏の著書によると、フジテレビは鹿内社長（当時）の大号令のもと、民國七十年の双十節を台北から衛星生中継したのだそうですが、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートの生中継すらまだ行われていなかった時代に蒋介石総統への追慕からここまでやるとは何とも凄い試みで・・・・

◆【台湾次期総統　馬英九は語る】（上）ダライ・ラマ側と対話　まず評価（産経）
◆【馬英九は語る】（中）中国、武力行使は困難（産経）
◆【馬英九は語る】（下）さらに日本と若者の交流を （産経）
◆馬英九氏、八田技師の慰霊祭に（産経）

日中首脳会談を伝える産経１面の傍らに、「もう一つの中国」の次期指導者の単独会見が掲載されていましたが、５月20日の就任前の訪日（訪米の意向が本命で訪日は観測気球だと思いますが）が叶わなかったことへの代替措置であり、要するに『私はよき「知日派」でありたいと願っている。日本との友好関係を保ってこそ（台湾は）正常な状態なのであり、「反日総統」が現れたなどと心配しないでほしい』がその趣旨なのでしょう。

やはり日本側の馬氏に対する警戒感は根深いと改めて思いましたのが、關渡への総統府移転構想を報じた記事です。「移転となれば日本時代をめぐる歴史論争を引き起こす可能性もある」(時事)といったあたりにそれがにじみ出ていますが、この件に関しては呂秀蓮・現副総統も賛意を示していますし、「外来政権支配の象徴」（皇居の方を向き、上から見ると〝日〟の字ですからね）ということなら、むしろDPPへの政権交代時にそういう構想が出てきて然るべきであった（実際あったのかもしれませんが）とも思います。まぁ、老朽化して手狭になるのは避けられないでしょうし、個人的には好きにすればと（關渡みたいに中途半端なとこへの移転ではなく、新幹線沿線の雲林縣あたりへの〝遷都〟を公言すれば論争どころか、面白いのにねぇ・・・・）思います。台北のAITも内湖に移転するようですから、日本も対抗して（総統府の返還をKMT政権に堂々と要求し）「交流協会台北事務所」を総統府に移転させたらどうでしょうか？

馬氏自身も、「日中韓、日米韓の狭間で日台関係が埋没する事態は避けたい思惑がある」（記事）のは間違いないところでしょうが、在日台独派や李登輝氏ら〝日本語族〟が喧伝する内容を鵜呑みにしたステレオタイプな台湾観が支配的な現状は正直やりにくいだろうなぁと思います。（馬氏に同情、というより双方問題点を内在しているのは間違いないですね）八田技師の件は昨年の同志社大での講演（国民党ニュースネットワーク）でも言及していましたが、 「水利事業は日本の植民地政策の一環としながらも、八田氏個人が示した平等の精神と功績は高く評価する」（産経）いう見解のようです。
外国勢力の手によるものであっても、近代化のプロセスのみに光を当て、それを是とするのであれば、「栄光の帝国主義」（故・椎名悦三郎氏）であったのかもしれません。しかしながら、その時代に生きた台湾の人々を主体に据えるなら、苦渋に満ちた外来政権下の歴史とも言えるわけで、オランダ、鄭氏王朝、清朝統治期から「犬が去った後の豚」である国府独裁時代も含め、歴史認識は多面的であり、難しい側面を内包しているなと改めて思います。

自称「全中国を代表する中華民國政府」が発足する前に放浪をと思った次第ですが、政権交代の間際で外交工作費のスキャンダル（USD3000万の〝振り込め詐欺〟とはまさに桁違いのスケールで・・・・）が発覚するなど、あちらはあちらで何かとバタバタのようで・・・・