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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

本棟造りの家屋を訪ねて・後編

2022-10-09 23:05:05 | 民俗学

本棟造りの家屋を訪ねて・前編より

 

 

 特別に公開された茶室から常念岳や槍ヶ岳を望むことができた。茶室に限らず本棟造りの主屋は北アルプスの方向に玄関を置く。ようは西向きの家なのである。正確には真西ではなく、若干北に触れている。まさに常念岳や槍ヶ岳が望めるように家の向きをすこし北向きにしたようにも見える。茶室での解説において、そうした山の風景を意識した配置のような言葉があり、果たしてそうなのかというような疑問が仲間から発せられた。

 そもそも東向き南向きの家が当たり前だと思っていたわたしには、西向きの家には違和感を覚える。しかし考えてみれば地形の傾斜が西を向いているのだから西向きの家があって当たり前とも捉えられる。もちろんその背景に山の景観があるかは別としてである。

 そこで馬場家住宅はもちろん塩尻市堀ノ内の堀内家住宅も含め、家の向きについて周辺の本棟造りと思われる家をわかる範囲で捉えてみた。それが下に貼り付けたグーグルマップである。とりあえず北は松本市中山あたりから、南は堀内家住宅辺りまで、グーグルのストリートビューで家の形を確認しながら本棟造りであることを確認したうえで、家の向きが判明するものを図に落としてみた。外周赤色の中白丸が西向き、外周黄色の中白抜きのものが東向き、外周青色で中白抜き☆マークが北向き、紫地に地図記号の「警察署」を記したものが南向きである。東西南北の4種類で示したが、実際は微妙な向きな例もあるが、主たる方向で示した。こうして図化してみると、確かに西向きが多い。本棟造りと言っても比較的新しい家も含めており、現代的な理由で家の向きが決められている例もある。それは道に沿って家を向けているという例。表の意識が道にあるということである。あえて道があっても裏側へ家を向ける例もあるだろうが、多くの家は道に面しているのは、造りには無関係だ。そういう例で造られた本棟造りもあるというわけである。とはいえ、過去に本棟造りであっても新築すると本棟ではない家を造る人も多い、とは実際に本棟造りは新しい家には見られないということ。本棟造りは減少しているということになるだろう。したがって比較的本棟造りの家は「古い」家が多い。

 いずれにせよ、西向きの家が多いことは判明した。そして馬場家住宅のように、若干北寄りに向いている本棟造りの家がいくつか見られた。それらが山を意識しているかはわからないが、事実としてそうした配置が見えることは何かしら意図があるととらえても良いのだろう。図からわかるように中山から塩尻にかけて、記号は右上から左下に並んでいる。グーグルマップ上で意識したわけではない。本棟造りの家を探しながらプロットしていったら自ずとこういう形状を描いた。そしてこのやや北に向いた傾斜が家の向きにも表れている。結果としては地形に沿っている、ということになるのかもしれない。別の地域の本棟造りの家もプロットして、さらに確認してみたいと思っている。


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