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Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

無口

2015-05-17 23:12:26 | ひとから学ぶ

 「そろそろ身を固めたら」と口にすればプライバシーの侵害となり、下手に女性に声をかければセクシャルハラスメントのそしりを受ける恐れまであるという。

 なるほど、異性に声をかけるのも容易ではない世の中だと思い知らされる。『生活と自治』5月号(生活クラブ事業連合生活協同組合連合会)の特集“「○活社会」をどう生きる?”の中で紹介されていたものだ。生きづらい、暮らしづらい、どう表現しようにもいずれにせよ、昔とは大きく異なった人間関係が横たわる。近ごろすっかり耳にしなくなった言葉が、「早く結婚しないのか」という言葉だ。我が社にも未婚の若者、いやとっくに若者を卒業したような者もいるが、近ごろではそんな存在も目立たなくなった。ちょっとした言葉は俗に言う○○ハラスメントにすぐに適合する。言葉を選ぶことの多い時代を迎え、無口が最大の防御とも思えるほど、余計な言葉は吐かないことにつきる。主にお役所関係者に限定されるのが会計検査というものだ。国の補助金が適正に使われているかを調べる組織であるが、彼らの見方はもはやふつうではない。もちろん不正をしていたら指摘すればよいだろうが、多様な攻め方でやっていることをどれほど理解しているかという、かけひきの世界だ。余計なことを言わない、聞かれたことだけを答える、という常識からすれば、この世界はずいぶん昔から、今の世を見通していたような世界と言える。思ったことを即座に表現できない、思ったことを言えない、会計検査とハラスメントは紙一重といえそうだ。そんな世界だから完璧な人間とそうでない人間との落差が見えてしまう。隠すためには無口に徹する。何を言われようと口を開かない。まさに防御なのだ。こんな世の中だから少子化社会になるのは当たり前。人口減少だけが理由ではない。さらに不安定な身分の者も多いのだからどれほど生きづらいか…。

 5月12日の信濃毎日新聞のくらし欄に、ある投稿(「私の声」欄)に対する反響を扱った記事が掲載された。4月14日に掲載されたという投稿は次のようなものだったという。

 従姉妹が結婚することになった。私には弟がいて、父方と母方のいとこも計4人いるが、その全員が結婚することになる。独身は私1人。
 酒の席でその従姉妹から、「何で結婚しないの? 女の人が嫌い? 家が絶えてもいいの?
 子ども欲しくないの? アニメ見てないで婚活しなよ。老後がさびしいよ。両親に孫を見せてあげなよ」と恋活・婚活攻撃をされて困惑する。それは女性から男性への立派なセクハラだよおまえ、と言いたかったがやめた。
 ごく内輪の身内しか知らないことだが、私には精神障害があって、恋愛や婚活はかなり前からあきらめている。心の病気なので、見た目では分からない。ある程度親密になったら、秘密を言わなければいけなくなるので、親睦を深めるのが怖い。

というもので、40代の方のもの。「反響」といって掲載された意見は彼への勇気付けのようなものである。投稿の内容だけからは分からないことが多いから、安易に「反響」と捉えたくないところだが、新聞は何を意図しようとして「反響」を集めたのか。新聞の偏りを思わせる。無口な時代にあって、それでも口を開いたのか従姉妹は。それとも無意識に口を開いたのか従姉妹は。


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